インタビュー

MVNOでシェア1位の秘密とは?――「OCN モバイル ONE」の戦略をNTTコムに聞くMVNOに聞く(2/2 ページ)

2013年4月からMVNOとして「OCN モバイル ONE」を提供しているNTTコミュニケーションズが、13年度末にはMVNOでシェア1位を獲得した。NTTドコモと同じNTTグループに属するNTTコムがMVNOに参入した理由とは? 同社の戦略をネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の新村道哉氏に聞いた。

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050 plusは思ったより選ばれている

―― 実際、OCN モバイル ONEはどのようなユーザーが使っているのでしょうか。

新村氏 アンケートの結果しかありませんが、市場の中心はやはり30代の男性で、ご自身のリテラシーには自信がある方々です。ただ、これはMVNOの認知率からすると意外でしたが、女性も20%を占めています。20%しかいないと思われるかもしれませんが、MVNOのような形で20%もいるのは想像より多かったですし、そういう人たちにどんどん広げていきたいと考えています。

 広がるとうれしいのは、女性とあとは20代ですね。20代の方々には、あまり買われていません。自分の経験から言っても、20代はあまりお金を持っていませんし、安いにこしたことはないはずなのですが……。20代で社会人になり、携帯電話代を自分で払い始める方はいるので、安いということでもっと選んでもらえると思っていました。最新のガジェットが欲しいと思う年代でもありますし。

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―― 端末を買うお金がなかったりということでしょうか。

新村氏 それはあるかもしれません。そうなると、格安スマホの選択肢が増えた方がいいですよね。そういう方々に、割賦で買っていただけるようにすればいいかなという流れで、先ほどの施策(G2 miniとのセット販売)が作られています。

 でも正直難しいところで、「やっぱりiPhoneが欲しい」となってしまうかもしれません。

―― キャリアで買うと、実質価格とはいえ0円ですからね。

新村氏 その印象になっていますよね。

―― NTTコミュニケーションズはMVNOとしては珍しく、テレビCMも積極的に投入している印象があります。効果は高いのでしょうか。

新村氏 認知度は上がっています。マツコさんを起用したのは、みんなが思っていることを代弁してくれる方だからです。見た人に自分事化してもらえるようにしたいと思い、お願いしました。おかげさまで、格安SIM、低価格SIMの市場が世の中にあるという認識はできたと思っています。

 ただ、じゃあ自分もそれにしようというレベルまでは、なかなかいかないですね。若い人からの評判はいいのですが。作ったときは作ったときなりに最善と思っていましたが、格安SIMという新しい市場は試行錯誤のフェーズなのは間違いないので、チャンレジしていくしかありません。


プロモーションにはマツコ・デラックスさんを起用している

―― IP電話サービスの「050 plus」とセットにしたパッケージも出されていますよね。そちらとの相乗効果もあるのでしょうか。

新村氏 050 plusは思ったより選ばれています。ただ、ご存じのように、セットになったパッケージがありますが、たくさん出ているかと言えばそうでもありません。Amazonさんのチャンネルだと、900円のパッケージの方が目立っていたりしますからね。一方で、そこに「050 plusに申し込む」というチェックボックスをただ置いただけで、約20%の方が申し込んでくれました。無理やり押させようということはしてないですよ(笑)。本当にただ、チェックボックスを置いているだけです。

―― データ通信専用のSIMカードには、やはり050番号が欲しいということでしょうか。

新村氏 評価を決めつけていいのかは悩ましいところがあります。逆にいえば、80%の人が申し込んでいないわけなので。特に今使っている人たちは、個人利用ならデータ通信があれば十分という感覚なんだと思います。

―― 一方で、音声通話対応のSIMカードは、まだ出されていないですよね。「NTTグループなのに電話はないの?」と言われたりはしませんか。

新村氏 音声通話対応のSIMカードはまだないですね。ですから、050 plusをオススメしています。ただ、他社さんが音声通話のSIMカードをどんどんやっている中で、販売数が落ちているかといえばそうではありません。本当に安いのかという視点で見ると、データ通信がきちんとできて、心配なら150円で(050 plusを)付けられる方がいいのかなとも思います。

 電話はないのかというのは、このサービスというより、OCNで同じようなことをよくいわれます。結局、全部同じ会社だと思われているんですよね……。マツコさんにも、よく「親方日の丸企業は違うわね」ってイジられますから(笑)。ただ、電話サービスを始めてくれという声は、それほど多くありません。言い方はよくないですが、そういう方は素直にドコモさんを使っているのかもしれないです。

―― そのNTTだからという安心感で選んでもらっている部分は、やはりありますか。

新村氏 それはあります。何かあったとき、文句も言いやすいですから(笑)。サポートに電話をかけてもつながらないことはないですし、OCNのサポートセンターで全部受けているので、OCNユーザーの不安を解消できるレベルにはなっています。これが一番大きいですね。

ユーザーにとって分かりやすくなる意味ではSIMロック解除は歓迎

―― ちなみに、現在はドコモ回線ですが、KDDIやソフトバンクの回線を使う可能性はあるのでしょうか。やはりNTTグループとして、それは厳しいのでしょうか。

新村氏 可能性はあります。NTTグループだからドコモさんの回線を使っているわけではありません。今、KDDIさんはドコモさんの2倍、ソフトバンクさんはドコモさんの3倍です。それに基づいて値付けして、KDDI回線版は1800円、ソフトバンク回線版は2700円と言っても、誰も買ってくれないと思います。安くなくても、例えばドコモさんのエリアに問題があったりするのであれば考えなければいけないですが、今は各社どこもでもきちんとつながります。ですから、今の接続料が変わらない限りはないというのが答えになります。

―― 逆に言えば、安くなれば可能性はあるということですね。

新村氏 検討はします。

 また、SIMロック解除の義務化が始まると、KDDIさんは(端末の)通信方式や周波数帯が違います。それを踏まえて考える必要もあると思います。

―― それは、KDDIの端末を使う人用に提供しなければならなくなるということですか。

新村氏 はい。SIMロックフリー端末がどれだけ出てくるかにもよりますが、KDDI向けの端末を使い回す人が増えてくるかもしれないですから。

―― この流れでうかがいますが、今のSIMロック解除義務化については、どうお考えでしょうか。また、SIMロックフリー端末が増えてきましたが、もっと大手のメーカーも幅広く出していく必要があるとお考えでしょうか。

新村氏 なんでもかんでも、全部SIMロックフリーになるのが一番うれしいんですけどね(笑)。SIMロックフリー端末については、今出ているものに不満があるわけではありません。どこが出してほしいという意見もありません。ただ、人によっては「これが使いたい」というものがある中で、使えない状態が残ったままだと、販売がしづらいのはあります。販売店でオススメする順序が、「使える端末をお持ちですか」からスタートしてしまいますからね。

―― 確かに、自分が家電量販店でMVNOのSIMカードを買ったときも、同じようなことを聞かれました。

新村氏 ショップに持っていって解除するのでもいいので、そうならない環境が一番だと思います。今はオススメする順序が逆で、まず「これでスマホが安くなる」というのがあって、じゃあ、あとは好きな端末を選んでくださいというのが本来あるべきだと思います。

―― ということは、義務化は歓迎とういことですね。

新村氏 賛成というわけではありませんが、市場が分かりやすくなってくれればいいと思っていますし、そのきっかけの1つになるのではないでしょうか。

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