MVNOのデータSIMで発生する「セルスタンバイ問題」は改善されたのか?:IIJ Technical WEEK 2014
MVNOが提供するデータ通信専用SIMでは、通信できるのに「圏外」と表示されたり、バッテリーの消費量が増したりすることがある。その原因とは? そして今のスマートフォンでは改善されたのだろうか?
MVNOが提供しているSIMカードを装着したスマートフォンを利用すると、データ通信が利用できているのにアンテナピクトが出ず「圏外」と表示されたり、待受状態で端末のバッテリー消費が早くなったりすることがある。この問題は、Androidの「セルスタンバイ」というプログラムの電力消費が多くなっていることと関連するので、「セルスタンバイ問題」と呼ばれることがある。
これらの問題はすべての端末で起こるわけでないが、原因はどこにあるのだろうか。IIJが11月27日に開催した「IIJ Technical WEEK 2014」にて、ネットワークサービス部 モバイルサービス課 担当課長の佐々木太志氏が、一般ユーザー向けに実施してきたイベント「IIJmio meeting」で扱ってきたテーマをあらためて紹介するとともに、上記問題についての現状を話した。
日本の携帯電話は現在、音声通話は回線交換(CS:Circuit Switched)、データ通信はパケット交換(PS:Packed Switched)という2つの方式を採用しているが、データ通信専用SIMではパケット交換のみを用いる。音声通話やデータ通信を行うには、携帯電話の位置情報を基地局に登録する必要があるが、その際には待機時よりも消費電力は上がる。以上を踏まえ、データ専用SIMでバッテリーの消費が増す原因は、回線交換(CS)の位置情報登録に失敗して、何度も登録し直そうとしていることでは? とIIJは推測した。
この推測が正しいかを検証すべく、IIJmioのSMS非対応SIMを挿した「Nexus 4」(国内版)で待受時のログを取得したところ、回線交換への位置情報の登録を繰り返していることが分かったという。SIMカードが音声通話に対応していないのに、音声通話用のネットワークに登録しようとするために、データ通信はできるのに「圏外」と表示されたり、バッテリー消費が早くなったりする……というわけだ。
一方、SMS対応のSIMで同様にログを確認したところ、回線交換への登録は成功していたという。セルスタンバイ問題はやはり、SMS非対応のSIMで起こりうることが確認された。「ソースコードを見ないと分からないので100%の検証はできなかったものの、ファクトベースで分かる、一定の確からしいお話をさせていただいた」と佐々木氏は振り返る。
上記の内容を説明したのは、2013年10月に実施した第1回のIIJmio meetingでのこと。あれから1年以上たった現在、アンテナピクト問題やセルスタンバイ問題は解消したのだろうか。佐々木氏は「この問題(セルスタンバイ問題)は、徐々に収束に向かっている」と話す。「2014年にはZenFone 5やLG G2 miniなどのSIMフリーの端末が出回るようになったが、こういった端末ではセルスタンバイ問題はほとんど見られない状況になってきた。安心してお客さんが導入できる端末が増えてきた」と話す。また、最近はSMS対応SIMや音声SIMなど、上記問題の発生しないSIMカードが提供されていることも大きい。
改善されつつある理由をIIJに聞いたところ、「推測にはなりますが、日本で展開することを想定したSIMフリーのAndroid端末では、メーカー側がMVNOで使われることを想定して検証するようになってきたことが、もろもろの問題が改善されつつある背景にあるのではと考えています」とのこと。ただし、「iPhoneではデータ専用SIMでアンテナピクト問題が起きている」(IIJ)そうで、諸問題のすべてが改善されているわけでない。
音声通話は不要でも安定したパフォーマンスで通信をしたければ、140円(税別)の付帯料はかかるが、現在もSMS対応SIMを選ぶのが得策といえそうだ。
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