ツートップ、iPhone導入、新料金プラン、「+d」構想――ドコモ加藤社長が4年間で成し遂げたこと:石野純也のMobile Eye(4月25日~5月13日)(2/2 ページ)
ドコモの社長が加藤薫氏から吉澤和弘氏に交代することになった。加藤氏が社長に就任してからの4年でドコモは大きく変わった。加藤氏の発言や打ち出した施策を振り返っていきたい。
ドコモ光の導入で固定とのサービスを提供、2年縛りも改善
2015年1月には、NTT東西から回線を借りる「ドコモ光」を発表。シェアパックと組み合わせた際の割引率を上げ、“家族”を軸にユーザーの取り込みを図った。加藤氏は当時、「キーワードはシェアパック。新料金プラン導入の際にもお話ししたが、家族でパケットを分け合えてかなり自由に設計できる。そこに光ファイバーが入り、1つの体系ができた」と語っていた。
ドコモ光は、NTT東西が卸す回線を利用する、「光コラボレーションモデル」を活用している。プロバイダーを、ある程度自由に組み合わせることが可能なのも特徴。プロバイダーは2つのグループに分かれ、料金が異なっている。さらに、ドコモ自身も、「ドコモnet」というプロバイダーサービスを開始した。
ただ、プロバイダーごとに料金が異なっていたり、組み合わせるパケットパックで割引額が変わっていたりと、その仕組みは少々複雑だ。卸売り価格が公平に決まっている光コラボレーションモデルを利用しているため、割引額にも限界がある。KDDIの「auスマートバリュー」などと比べると、割引額のインパクトが小さいことは否めない。
こうした事情もあり、普及のペースはやや緩やかだ。2016年4月28日に開催された決算説明では、累計申込数が184万件を突破したと発表したが、KDDIのauスマートバリューの572万世帯と比べると、まだ水をあけられている状況となる。今後、これをどこまで伸ばしていけるのかは、新社長である吉澤氏の手腕が問われそうだ。
料金には、2016年4月から適用が始まった、「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」も影響を与えた。これによって、事実上、端末の「実質0円」が禁止されることになる。一方で、総務省は、減った端末の割引を原資にした、料金の値下げを求めていた。これを受け、ドコモは6月から「ずっとドコモ割」の割引額を改定し、長期ユーザーの優遇を強化する。加えて、2年契約後に縛りのない、「フリーコース」も導入。他社とは異なり、縛りのないコースでも料金が上がらないプランを打ち出した。
サービス面では、2015年4月28日に、中期目標としての「+d」構想を発表。合わせて、ポイントプログラムのリニューアルを行い、12月からdポイントがスタートした。加藤氏によると、+dとは、「ドコモのお客さまにパートナーとの取り組みを通じた、新たな価値を提供する」概念。ドコモの資産を活用しつつ、従来なかったサービスを「競創」によって作り出していくものだ。農業、教育、交通、観光など、その範囲は多岐にわたる。dポイントやdカードを軸にした、ローソンなどとの協力も+dの一環だ。今後は、これをIoTなどにも広げていく方針を掲げている。
そして、2016年5月13日に、ドコモの社長のバトンは、加藤氏から吉澤氏に渡されることになった。加藤氏は、「スマートフォンが伸長していく中で、市場環境の変化を伴いながら、通信事業者の使命、新たなビジネスへの夢、これに挑戦した4年間だった」と、社長時代を振り返った。
バトンを受け継ぐ吉澤氏は、「サービスの創造と進化」「+dの促進」「基盤の強化」の3つを柱に掲げている。ある意味、加藤氏の路線をさらに強化する格好だが、具体的な戦略は就任後、あらためて発表される予定だ。4年間で大きく変わったドコモを、どのようにかじ取りしていくのか。吉澤氏の手腕にも、注目しておきたい。
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