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ミームとしての
モバイル
コンピューティング

 [第13回]

今,モバイル機器にある危機?!

携帯電話を始めとする,モバイル機器の使用は急速に拡大している。あらゆる場所で使えるという利点がある半面,それに伴う危険性も認識されつつある。

【国内記事】 2001年7月5日更新

 携帯電話を始めとするモバイル機器が,私達の生活に大きな利便性をもたらしつつあるのは確かだ。しかし,今後どんな問題を浮上させるのかは未知数だ。

 例えば現在,米国や日本で運転中の携帯電話利用に懸念が広がっているのは周知の通りだ。日米共に運転中の携帯電話規制は始まっており,日本ではハンズフリーシステムなどの補助装置を使わないで利用した場合減点となる。

 また米国でも規制を実施する市や州が増えており,交通量の多いニューヨークでは既に運転中の携帯電話の使用が禁止されている。政治家や交通安全活動家が中心となって作られているこの規制に関して,米国では反発の声が聞かれるようになっている。

携帯電話での通話を規制する前に現状認知を一般に

 運転中通話規制に反発する,米国在住の筆者の友人の言い分はこうだ。

 「通話中でも,ちゃんと前を向いて走っている。車で携帯が使えなくなったら仕事にならにいし,そもそも携帯電話を使うことの危険性なんてあるの? 隣に座っている人との会話だって危ないじゃないか。テープの入れ換えだってそうだ。なんで規制されないんだ?」

 確かに携帯電話の通話以外にも運転を妨げる要素はたくさんある。日本でもよく“カセットテープの入れ換え中の事故”などがニュース紙面を飾っている。これは実際に“よそ見”という運転以外の動作を行っているので分かりやすい。

 その点,“車中で音楽を聴く”や“隣の人と話す”ということの危険性を証明しようとすると難しそうだ。確かに筆者は,「運転中に通話することの危険性」を明確に証明したレポートの存在を聞いたことがない(情報を求む)。

 筆者はこの問題を,「友達と電話で週末の予定を話しあいながら,重要な仕事のレポートを執筆する」ようなものだと考えている。つまり,まったく性質の異なる事柄を同時に頭の中で進めるのは非常に困難だと思うのだ。

ハンズフリーは適切か?

 運転中の通話も,とりあえずハンズフリー装置を付ければ,少しは会話と運転を両立しやすくなる。しかし,その利便性の裏に,隠れた問題があるのを忘れてはならない。

 つまり「電磁波」である。

 記事によると (2000年11月の記事参照),ハンズフリーキット使用時の電磁波量は,通常の3倍になるという。

 電磁波といえば,電子レンジからパソコンまでありとあらゆる電機器具から発生するもの。(厳密にいえば太陽の光も電磁波だが)最近では,携帯電話の利用が脳腫瘍を引き起こすかもしれない,という不安が話題になっている。

 これに対し,電磁波量の目安として携帯電話への表示が考えられているのが,電磁波の人体への吸収率を表す「SAR」値だ。米国では連邦通信委員会(FCC)が,携帯電話を電磁波安全基準に合わせるよう要求している。

ディスプレイを破壊するパワーを持つ携帯電話

 最後に筆者が電磁波のパワーを目の当たりにした事件を紹介しよう。

 あれは4年程前の某出力センターで,パソコンを使っている時のできごとだった。少々大きめな携帯電話をパソコンのディスプレイのそばに置いておいた時,不意に携帯の着信ベルが鳴りだした。

 すると突然,目の前のディスプレイが消磁を行ったときの様に激しく点滅し,閃光を放ちながら故障してしまったのだ。あたりには科学製品が焦げたときの匂いがたちこめる。

 結局これは携帯電話の受信時の電磁波がディスプレイに大きな影響を与えたことによる事故だったようだ。ちなみにメーカー名は伏せておくが,このディスプレイには防磁処理がまったく行われておらず,これが原因とみられる。通常ディスプレイには,電磁波防止の為の(内部からの漏洩と外部電磁波予防などのために使われる)処理が行われている(念を押しておくがが,実際に試してはいけない。もしいかなる損害が生じても一切責任は負わないのであしからず)。

 こういったトラブルは偶然が重なったもので通常考えられるものではないが(と,考えたい),つまり電磁波のパワーはこれほどまでに大きいということが分かっていただけたであろう。

 人体はある程度の電磁波を許容できるといわれている。現在の,そしてこれから登場する携帯電話やモバイル機器がどれだけの電磁波を発するのか分からないが,少なくともこれらを持ち歩く限り,電磁波ともつき合わなくてはならないようだ。  

次回は,携帯電話がもたらす脅威に付いて,さらに深く追求する。

[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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