NASDAQ暴落!米ハイテク賃金が下がっても,日本の技術者に払われるサラリーの方が低い?!米Salary.comのホームページによれば,カリフォルニア州サンノゼ周辺地域におけるWebマスターの標準的な年収の平均は約6万6260ドルだという。1ドル=120円換算で800万円近い収入となる。しかし日本では年収500万以下で同じ仕事をしているケースも多い。
米国シリコンバレーなどに頻繁に足を運ぶようになると,IT業界の技術者に支払われる賃金の格差をしみじみ感じるものだ。 先日もシリコンバレーで仕事をしている友人の知り合いMr.Mに「あの会社のプログラマーは月30万円で,Webの管理を任されているって? 残りはストックオプションなの?」と聞かれて困った。 米国ハイテク株ひしめくNASDAQインデックスが暴落し続け,ハイテク系労働者の給与水準が著しく低くなっている。しかし,ストックオプション制度などをふまえて考えれば,日本の技術者の水準ほど悲惨ではない。「生活費が異常に高い日本でこの水準はないだろう……」。愚痴をこぼしたくなるのも無理はない。「おかしいよ」と,Mr.Mはとても驚いた。 ハイテク企業がひしめくシリコンバレーでは,たくさんのベンチャー企業が姿を消した。しかし,未だにそこには日本にはない何かが存在していると思える。 夢を追えるシリコンバレーの給与体系シリコンバレーなどで給与体系を話すときに欠かせないのが“ストックオプション(自社株購入権)制度”である。シリコンバレーでハイテク系ベンチャー企業に勤める多くの労働者が,給料を現金でもらう代わりに会社の株券をもらっているのである。 ストックオプションで株券を取得すれば,会社の業績に伴い,自分の給料が何倍,いや何百倍にもなる可能性があるというわけだ。 例えば,1セント(0.1ドル)だった証券が,IPO(新規市場公開)時に50倍の5ドルに化ければ,1万ドル分(1ドル=120円換算で120万円)のストップオプションが,うまくいけば50万ドル(1ドル=120円換算で6000万円)に膨れ上がることだって考えられる。 この期待値に多くのベンチャーキャピタルや投資家が資金を投入し,ベンチャー起業家たちはそこに夢を追っていたのである。 「夢を追える給与体系」 それがハイテクベンチャー企業につとめる旨みというわけだ。 ベンチャー起業の興奮と疑問ところで,実は筆者もシリコンバレーのベンチャー企業立ち上げに参加した経験がある。その会社は,サンフランシスコ湾側の緑豊かな住宅街にあるアパートの一室から始まった。 周りにはハイテクベンチャーで成功した企業家の豪邸が山ほど建っている。Appleのスティーブ・ジョブズやHPのガレージといった伝説の場所だ。 ポジティブで,夢や活気のあふれる場所であるが,ビジネスの厳しさは日本の比ではないと感じる。そしてその会社は,なんと1年もかからず日本円で数億円の融資を受けることに成功した。夢が実現するプロセスを一歩一歩進む興奮は何にも変えられないもので,なんとか成功しようと寝る間を惜しんで全力で働いたものだ。 しかし,全てを賭けることのリスクの大きさは,思っているよりも大きいということは,あとから知ることになる。 リスクを理解して成長する必要性「この青年は1年前,最高級のベンツに乗っていたが,今は巡回バスに乗って会社に通勤している」 最近のシリコンバレーのCMにこんなシーンがある。これはベンチャー起業に成功して億万長者になった青年が,株価の暴落によって無一文になったという話だ。ストックオプションは上がる期待だけではない。額面がゼロ,つまり全く価値がなくなることだってあるのである。 私が参加したベンチャー企業では,大きな成功を一度収めたあとのディール(契約に関する取引)で大きな賭に出たが,見事失敗に終わった。押せ押せムードでどんどん人を雇い,資材を購入し,出張しまくっていた社内に突然氷河期が訪れた感じだった。 ストックオプションだけしか得ていないスタッフは,株こそ持つものの会社との距離をおき,現金で多めに給与を受けていた筆者は,減収を宣告され会社を去ったのである。 冒頭で紹介したSalary.comの給与データは,あくまで現金で給与を受けた場合であって,ストックオプションにした場合は率が低くなる。完全に現金だけの場合はもう少し高くなるかもしれない。 ベンチャー企業は,株価好調の中,給与体系をストックオプション重視にすることで優秀な人材を集め,急激に成長した。対してオールドエコノミーと呼ばれる旧体制型の企業は,高い現金と保障体制を売りに労働者を集めている。ストックオプション制度がないというところもあるくらいだ。 株式市場全体が低迷する現在,どちらの給与体制がいいか判断を付けることは難しいが,労働者は時の流れに従って,自分の気に入った会社に流れていくだろう。 米国では年間50万人もの労働者をリストラ(レイオフ)しているのが現状だが,それを受け止めるだけの雇用を創出する力があった。 もちろん日本でも,優秀な技術者の給料は高いし,努力や意識改革しだいといえるといってもいいだろう。しかし先が見えずに路頭に迷う人々も多い。 [増田(Maskin)真樹,ITmedia] 関連記事 関連リンク 連載バックナンバー Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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