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 [第11回]

ピンポイントP2Pは世界を救うか?

自分の携帯電話が,そばにいる人の携帯電話とコミュニケーションするようになれば,新たな可能性が広がるはずだ。Bluetoohがそれをより現実性の高いものへと近づけ,P2P技術はネットワークコンピューティングに無限の可能性を与えてくれる。

【国内記事】 2001年6月21日更新

移動体無線LAN

 わけのわからない見出しを付けてしまったが,要するに自分の持っている携帯電話の周辺に“無線LAN”のようなコミュニケーション世界が登場すれば,さまざまな可能性が生まれるのではないか? と思うのだ。

 おぼろげな記憶で恐縮だが,玩具メーカーが発売していたキーホルダーで“ある条件のもとに共鳴しあって,ユーザー同士の出会いが生まれる”なんていう気の効いたアイテムがあった。

 携帯電話のウェブコンテンツでメル友を作ったとしても,それはあくまで仮想の枠の中での出会いであり,現実の生活の中での出会いの質とは大きくかけ離れた部分がある。筆者としてはこのキーホルダーの発想をとても気に入っていた。

 実際にこのキーホルダーがどれくらい流通し,どれだけのユーザーに出会いが生まれたかは分からないが,これに似た発想を携帯電話に搭載すれば,ある種の技術的革命が起こるのではないだろうか。

Bluetoothってやっぱりすごい

 Bluetoothには,“狭い範囲だけれども高速で無線通信が可能”という特徴があり,よく携帯とPCの接続,PDAとPCの接続,プリンタとPCの……といった“パソコンにつきまとうケーブルをなくす”ものとして説明されることが多い。しかしBluetoothは,そのような“従来のパソコン的”使い方のために生まれたのではない。

 Bluetoothは電波を使うので,当初の接続可能範囲の約10メートル以内であれば,鞄の中に入っていようと,机にしまっていようと通信をすることが可能だ。

 つまり半径10メートル以内に存在するBluetooth機器は,何らかの情報を互いにやりとりすることができる。対戦ゲームはもちろん,名刺交換もできる。先程紹介したキーホルダーのような機能だって実現可能だ。

 なお,ちなみに金庫にしまってあっても情報を盗まれてしまう可能性もあるため,それはまずいと,Bluetooth通信ユニットにはセキュリティ機能も搭載されている(2001年6月4日の記事参照)。

 Bluetooth搭載の機器が登場することで,自分のいる場所半径10メートルの価値が格段に高まるのである。

シンプルなプログラム,そしてリソースの共用による可能性

 携帯電話は,今ではEZwebやiモードといった,メールやWebブラウザの機能が当り前のように搭載され,その機能も充実してきた。ブラウザを拡張するための機能は日々新しくなり,メールやスケジュール,待ち受け画面などのプログラムはより洗練されてきた。文字の入力も「ATOK Pocket」などの搭載でかなり使いやすくなってきている。

 確かに筆者も携帯の機能がブラッシュアップされればありがたいが,これ以上大きくて重いプログラムはいらないと思っている。なぜならCPUの速度が上がることで電池の消費が早くなり,メモリ容量が増えることで価格が高くなりバグも増えるのではないかと思えるからだ。

“機能はスマートに,そしてさらにシンプルに”というのが筆者の携帯電話における理想像である。

 ところで,「The Unix Philosophy」(邦題:UNIXという考え方,著:MikeGancarz,オーム社。1600円)というUNIXの概念を解説する本の中に“スモールイズビューティフル”という言葉が登場する。

 これはプログラムは,ある1つの事をシンプルにかつスマートに実行できるものであるべきだ,という考えで,この著書の中でMike氏は“シンプルなプログラムを組み合わせて使ったほうが効率がいい”と語っている。

 例えば携帯で(ちょっと極端な話だが)映像のレンダリング処理をしたいと思っても無理だが,Bluetoothで接続された近隣にいる携帯電話のCPUパワーを借りれば,すこしは現実的な話になるかもしれない。1台の非力なCPUを持つ携帯電話ではできないことも,ユーザー同士が余らせているリソース(例えば待ち受け時のCPUパワーなど)を集めればできることは格段に増える。

 多くのパソコンに膨大な数値計算を荷担してもらう“SETIプロジェクト”も発想は同じである。

 携帯電話における実現可能性は,いわゆるP2P技術によって高まりつつある。P2Pというと,NapsterやGnutellaが代名詞的存在で,音楽やファイルの交換のためにあると思われがちだが,これらの基礎技術は,Bluetoothを使ったピンポイントP2Pにも応用が可能なのだ。

 次回はP2Pそのものの先進事例や,それがどのように応用されるのか,より具体的な話をするつもりだ。

[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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