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ミームとしての
モバイル
コンピューティング

 [第14回]

今,モバイル機器にある危機?!(2)

携帯電話を始めとして,モバイル機器の使用は急速に拡大している。そこに見え隠れしている問題は意外と大きな危険性を秘めているものもある。今モバイル機器利用者に必要なのは,問題を認識することだ。

【国内記事】 2001年7月14日更新

電磁波とメラトニンの関係

 筆者には,“ディスプレイの前に座ったり,携帯電話で話していると物事を忘れる”という癖がある。CRTディスプレイや携帯電話が放出する電磁波と関係があるのでは? と(かなりこじつけて)疑っているのだが,はっきりしていない。

 しかし,ディスプレイや携帯と長時間つきあう日々が続くと寝付きが悪くなるという習慣は,研究で証明されているらしいのだ。

 筆者はこれを,ディスプレイ&携帯を使った労働から受けるストレスが原因で,寝付きの悪さが生じるのかと思っていたが,実は体内で生成されるメラトニンという眠りを誘発する物質と関係があるらしい。

 1992年,イギリスで発表されたWilson博士の研究では,「哺乳動物が微弱な電磁波にさらされると,メラトニンの分泌障害が発生する」ということが書かれている。

 このメラトニンという物質は脳の松果体という部位で生成される神経ホルモンで,睡眠を誘発する働きがあるという。つまり脳内にメラトニンが増えれば眠くなるというわけだ。実際,メラトニンを使った睡眠薬が米国では市販されている。また,メラトニンは呼吸をコントロールし,ガンを抑制するなどの重要な働きを司るだけでなく,若さを保ち老化を防止する“若返りの物質”としても話題を呼んでいる。

 電磁波を浴びるとメラトニンの分泌量が減り,“眠る”という行為に異常が生じるという。これが筆者の例にも適用されるかどうか明確ではないが,話の筋としてはマッチしてくる。

数十年前から電磁波の研究は行われているが……

 実は,もう数十年前から電磁波に関する研究は行われていて,メラトニンとの関係のような事例は挙げはじめればきりがない。世界中の研究レポートを検索すれば,何百いや何千という電磁波関連のレポートを見つけることができるだろう。

 電磁波は,光からラジオ電波,送電線から発するものまでかなり広義なものを含み,まだ世論は正体を確実に認知しきれていない。

 しかし,ただ1ついえることは,私たちは見えない危機に対して何らかのアクションを起こさなければならないということだ。

 平成11年に労働省がまとめた「技術革新と労働に関する実態調査」では,CRTディスプレイを使った作業で4割がストレスを感じている事が分かっている。これらに対して,市民団体による「電磁波過敏症ネットワーク」が組織され,この問題の認知と被害者のケアに向け運動を始めたという例もある。

アンテナ伸ばせば7割減

 携帯電話が発する電磁波が,私たちの身体にどんな影響を及ぼすのかは,今のところまだ不明確だ。だからこそ防御策だけでもうっておくほうが適切だろう。

 さて,そうなったとき私たちは電磁波に対して,まず何を始めればいいのだろう。体にたまった電磁気を放出するグッズなども販売されているが,もっと手短な方法もあるので紹介しよう。

 携帯電話を使う際,いつもは短いままのアンテナをのばすだけでいい。

 総務省が今年5月に行った調査によると,携帯電話端末から出て体内に吸収される電磁波量を調査したところ,アンテナを伸ばした場合,縮めた状態に比べ最大で7割電磁波量が減ることが分かった。また総務省はこれに伴い,携帯電話が人体(側頭部)に与える電磁波の許容量を「体重1キロ当たり2ワット」に制限している。

 まずはアンテナを伸ばすところから始めてみてはどうだろうか。

まずは体の異常を認識することから

 携帯電話やパソコンには,もっと明確な危機も存在している。

 米労働省によれば,パソコンのキーボードや電話ボタンの過剰な反復操作を原因とする障害のため仕事を休んだ人は,1999年には全米で1万1105人にのぼったと見られるという。

 筆者の場合,1日にA4ページ10枚分以上の原稿を書いており,右手の中指に時々痛みを感じている。また,シリコンバレー在住の友人は優秀なプログラマーだが,すでに指でキーをタイプすることができなくなっている。ボールペンをつかみ,1字1字文字をタイプしている。

 この障害が,ショートメールを入力する“親指”にも問題が生じ始めているのである。実際に「反復運動過多損傷」(RSI)や「テキストメッセージ損傷」(TMI)といった言葉さえ生まれている。

 あなたの親指は大丈夫だろうか? まずは自分のからだに対する意識を育てるところから初めてみてはどうだろう。

 今回の記事で,多数の情報提供や貴重なご意見を頂戴した。デジタルメディアに対する悲観的な意見と取られる声も見受けられた。しかし,このような問題を直視することで,将来につながる発展が望めるのではないかと思っている。

[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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