「Samsung Star」「DROID」「Nokia N97」が巻き起こした“フルタッチ旋風”:ITmediaスタッフが選ぶ、2009年の“注目ケータイ&トピック”(ライター山根編)
海外では、Samsung電子やMotorola、Nokiaなどの主要メーカーが続々とタッチパネル搭載モデルを発売している。「Samsung Star」は1000万台を売り、「DROID」は北米市場に大きなインパクトをもたらした。そしてNokiaも、QWERTYキーボード付きのフルタッチ端末「Nokia N97」を投入した。
iPhone以降、海外市場では携帯電話のフルタッチ化が進んだ。2009年も海外で販売された新製品の多くがフルタッチ携帯だった。もはや「iPhone対抗商品」といった表現も聞かれなくなるほど“フルタッチ”は当たり前の仕様になっている。今年の海外市場の最大のトピックは、フルタッチ端末が特殊な製品ではなく、どのメーカーからも発売されているごくごく一般的な製品になったことだろう。日本で主流の折りたたみ形状の端末は、海外ではほとんど見かけなくなったほどだ。
1000万台の大ヒット――「Samsung Star」
海外メーカーの中でもSamsung電子のフルタッチ戦略は目を見張るものがあった。同社が2009年に投入した製品は100機種近くに達しているが、ざっと見ても半数近くがタッチパネルディスプレイを搭載しており、特にハイエンド端末の大半はフルタッチ化が進んでいる。日本市場でも同社は「OMNIA POP 931SC」と「OMNIA VISION 940SC」の2つのフルタッチケータイを投入。Samsung電子の製品ポートフォリオは、海外のみならず日本でも「フルタッチ中心」に切り替わったといえる。
このSamsung電子のフルタッチ路線をけん引するのが、2009年春の発売からわずか半年で1000万台を売り上げた大ヒットモデル「Samsung Star」だ。Samsung StarのスペックはGSM 4バンド対応、3インチのフルタッチ対応、ワイドQVGA(240×400ピクセル)ディスプレイ、3メガピクセルカメラと大きく目立ったものはない。ラインアップはミッドレンジよりも若干下に位置しているので、価格は契約なしで1万円台後半と安く、学生層などが無理せず購入できる金額を実現している。また本体サイズは小型軽量で、フルスペックのスマートフォンよりも使いやすい。つまり「誰もが手軽に使えるフルタッチ携帯電話」なのだ。
スマートフォンではないため拡張性に限界があるようにも感じられるが、Samsung Starには「Facebook」や「Flickr」など若者に人気のオンラインツールがウィジェットとして多数用意されており、友達同士で手軽に楽しくコミュニケーションを取る用途にも最適だ。つまりiPhoneのように“アプリケーションの数”や“豊富な機能”で勝負しているのではなく、「簡単に買えて、毎月の維持費も安く、友人同士がつながるためのツールが十分そろっている」ところを売りにしているのだ。これが1000万台のヒットにつながった最大の理由である。
日本で発売中のOMNIAシリーズと同様、Samsung Starの待受画面にはウィジェットを自由に配置できる。壁紙の変更だけでなく自分専用に機能をカスタマイズできることも使いやすさに結びついており、学生だけではなく年配者層にも売れているようだ。さらに、TVチューナー内蔵やWi-Fi対応などの派生モデルも登場した。Samsung Starはフルタッチとコミュニケーションの楽しさを幅広い層に広げたという点で、今年最も印象に残った製品だった。
iPhoneの1人勝ちに待ったをかけた「DROID」
2009年に話題をさらった製品はAppleの「iPhone 3GS」だろうが、北米ではこの冬最大の注目製品「DROID」が快進撃を続けている。MotorolaのスマートフォンであるDROIDは、11月に北米で発売された。AT&Tの最大のライバルVerizonが大々的なプロモーションをかけて販売しており、iPhoneの1人勝ちだった北米市場に風穴を開ける存在になりつつある。
DROIDはスライド式のQWERTYキーボードを備え、Motorolaらしい質実剛健かつクールな本体デザイン、そして世界初となるAndroid OS 2.0を採用するなど、外観もソフトウェアも優れた製品だ。3.7インチ、480×854ピクセルのフルタッチ対応ディスプレイをフォトフレームや動画プレーヤーとして活用できる、メディアステーション(クレードル)が搭載された点も見逃せない。
北米ではメールやSMSを多用するユーザーに、QWERTYキーボード搭載機が人気で、DROIDもその点を大きくアピールしている。Googleの各種サービスとの親和性も高く実用的で、Motorolaの意気込みが伝わってくる製品だ。またDROIDの通信方式はVerizon向けのEV-DO Rev.Aに対応しているが、GSMとW-CDMAを採用した「Milestone」(外部リンク参照)が今後ヨーロッパやアジアでも発売される予定だ。Motorolaの“DROIDブーム”は今後全世界に広がっていくだろう。
Nokiaの本格派フルタッチ端末――「Nokia N97」
携帯電話ではSamsung電子やLGエレクトロニクスの韓国勢に、スマートフォンではAppleやRIMの新興勢力に追い上げを受けているNokia。そんな中、同社が満を持して投入したフルタッチスマートフォンが「Nokia N97」だ。形状はストレート型だが、本体をスライドさせるとディスプレイ部が持ち上がるようにQWERTYキーボードが現れ、そのまま机上に置いて操作できる。
N97は待受画面に配置したオンラインウィジェットに、Facebookの新着状況や新着メール、天気予報などをリアルタイムに表示できるなど、単なるタッチパネルから一歩踏み込んだ機能も備えている。また、待受画面を左右どちらかにフリックするとウィジェットを一瞬で非表示にできる。端末をわざわざ裏返しにしなくとも、人に見られたくないプライベートな情報を隠せるのは便利だ。
N97は同社のアプリケーションストア「Ovi Store」にも対応しており、タッチ操作で簡単にアプリを導入できる。Ovi Storeの利用数はN97の登場で飛躍的に伸びており、フルタッチ操作に対応したアプリケーションや、フルタッチ専門アプリメーカーも登場している。アプリケーションの数ではiPhoneにはまだ及ばないが、今後が楽しみだ。
クリスマス商戦には、N97を一回り小型化した姉妹機「N97mini」も登場。フルタッチ端末では他メーカーに出遅れた感があったNokiaだが、この2機種がそろったことで、同社のスマートフォン全体のイメージ向上と収益増加が期待できそうだ。
なお、Nokia N97はノキア・ジャパンが開発に大きく関与しているとのこと。作りの細かさなどは、確かに日本人ならではのこだわりが感じられる部分もある。しかし残念なことに、同社は日本の研究開発部門を縮小することを11月に発表している。同社はすでに日本市場からは撤退しており、N97が日本で発売されることはないだろうが、Nokiaと日本の接点がさらに薄くなるのは残念でならない。
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