ソフトバンクモバイルは4月28日、東日本大震災で被害を受けた基地局の復旧作業について、同社の作業が完了したことを発表した。
同社の基地局は、震災直後の3月12日の午前中には3786局が影響を受けたが、衛星回線とIP携帯電話基地局の機器を組み合わせた臨時基地局などにより、4月14日に携帯電話サービスのエリアカバーが震災前とほぼ同等の状態に回復した。
4月14日復旧していなかった残りの203局については以下のとおりに対応し、4月28日には99局の復旧作業が完了した。99局のうち15局は、電力会社などによる復電などの工事待ちの状態となっている。
- 基地局の建て直し……基地局全体と通信機器の流出などで使用できなくなったが、地盤と土台の安全性が確保されている場所には、同じ場所に新しい基地局を建て直している。
- 衛星回線……伝送路に障害があり、基地局が機能していない場合は衛星通信用の設備を利用した。
- 発電機・蓄電池……電力が回復していない地域の基地局に対し、発電機や蓄電池による電力供給を実施。
- 臨時回線……マイクロエントランスや臨時専用線などを利用して、中継伝送路を復旧させた。
福島原発の制限エリア内の38局については、原発20km圏外はエリア復旧している。また、津波などの被害が大きく浸水エリアにある36局については、4月26日に廃局の手続きをとっている。今後は街の復興に合わせ、必要な基地局を適宜設置する予定。LTE対応の1.5GHz帯基地局の28局では、現時点では1.5GHz帯に特化した携帯端末がないこともあり、衛星回線への負荷を避けるため、1.5GHz帯の電波発射を行わない。
同社は各地での復旧活動の様子についても紹介。岩手県花巻市では、被災地に近い場所にホテルを確保し、岩手チームのベースキャンプとした。早朝に集まって当日のミッションを確認し、各ユニットが数名のチームとなって復旧作業にあたっていた。岩手県上閉伊郡大槌町では、小規模避難所で臨時基地局設置作業を実施した。宮城県石巻市の石巻専修大学では、衛星移動基地局車を設置した。
宮城県仙台市では、迅速に復旧活動ができるよう、被災地に近い場所にホテルを確保し、宮城・福島チームの拠点を設置した。復旧を行う「技術部門」、被災地に入ったメンバーからの問い合わせを受ける「CS部門」、メンバー向けの情報を整理する「情報システム部門」、メンバーの配置などの管理を行う「受付部門」を組織化して活動。さらに、情報システム本部から参加した社員が、「出発前、現地、帰還後にやること」を簡単に確認できる専用のSNSサイトを4時間で構築し、iPhoneやiPadを使用。IDとパスワードによるセキュリティ機能も備え、作業効率が一気に上がったという。
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