プラチナバンドとウィルコム連携に注目のソフトバンク/LTE強化を目指すイー・アクセス:石野純也のMobile Eye(5月28日〜6月8日)(2/2 ページ)
前回のドコモとauの夏モデルに引き続き、今回はソフトバンク、ウィルコム、イー・モバイルの夏モデルについてお伝えする。ソフトバンクモバイルは900MHz帯を使う「プラチナバンド」、ウィルコムはPHS+3G対応の「DIGNO DUAL」、イー・モバイルは新型LTEルーターが話題を集めた。
イー・アクセスがLTE対応ルーターとタブレットを発表、Huawei製薄型スマホも
イー・アクセスは、6月6日に「EMOBILE LTE」対応のファーウェイ製Wi-Fiルーター「Pocket WiFi LTE(GL04P)」と、同社製タブレット端末「GT01」を発表した。また、この会見では5月31日に発表した「GS03」の実機も展示されていた。
イー・アクセスは今年3月にLTEサービスを開始しており、「スピード、エリア、料金、そして最後に端末の電池が持つ」(イー・アクセス執行役員副社長、阿部基成氏)という4つ理由で、ユーザーの支持を集めている。現在、「量販店では12週連続で1位を維持している」(阿部氏)状況だ。サービスイン以降エリアも着実に拡大しており、「今年度中には全国の政令指定都市、県庁所在地で99%をカバーしていく」(阿部氏)。
こうした状況の中、同社が夏モデルとして投入するのがLTE対応Wi-FiルーターのGL04Pだ。この端末は「おそらく世界初といっていい」(阿部氏)という、LTEの「UE Category4(カテゴリー4)」に対応している。現状では下り最大75Mbpsで他のモデルと同等の速度だが、ネットワーク側が同規格に対応したうえで、20MHz幅の帯域を使った場合、最大150Mbpsまで出せる仕様だ。前機種からバッテリー容量も増え、3000mAhを実現。最大32GバイトのmicroSDHCに対応し、簡易的なNASとしても利用できる。長時間通信を行うユーザーからニーズの高かった、USBテザリング機能を備えたのも進化した点といえる。
下り最大150Mbpsと聞くと他のモデルより高速に思えるが、ここには注意が必要だ。通信速度は現状、下り最大75Mbps。「EMOBILE G4」のエリアでは、DC-HSDPAで下り最大42Mbpsとなる。ネットワーク側がまだカテゴリー4に対応していないうえ、最大速度を出すための周波数帯を持っていないのがその理由だ。同社の1.7GHz帯は15MHzあり、LTEが75MbpsのエリアではLTEに10MHz、HSPA+に5MHzを使用している。一方、LTEが37.5MbpsのエリアではLTEが5MHz、DC-HSDPAが10MHzという割り振りとなる。残る5MHzについては、総務省からの追加割り当てを待つ必要がある。イー・アクセスとしては「なんとしても早期の割り当てを目指していきたい」(阿部氏)ところだが、いつごろ対応するのかは未定だ。さらに、20MHzを使うには、HSPA+を終了させなければならない。このように考えると、下り最大150Mbpsのスペックを生かせるのは、当分先のことになりそうだ。
では、なぜ同社がカテゴリー4に対応した端末を出すのか。1つには、将来への布石という意味合いがある。代表取締役社長のエリック・ガン氏によると「端末は2年契約の方が多い。追加の5MHzをいただければ、端末はこのままで速い速度(150Mbps)を利用できる」という。2年以内にHSPA+やDC-HSDPAのネットワークが完全になくなるわけではないと思うが、一部エリアでは高速化を図っていくと理解していいだろう。また、カテゴリー4に対応したチップセットの方が、性能がいいという事情もあったようだ。阿部氏によると「お客さまには伝わりにくいので、150Mbpsは訴求しない」というが、このような状況であれば、あえてカテゴリー4に対応していることを前面に押し出さなくてもよかった気がする。
阿部氏が「Pocket WiFi LTEとベストマッチ」というように、同時に発表したタブレット端末のGT01は、こうしたWi-Fiルーターとセットで利用することを想定している。HiSilicon Technologies製のクアッドコアCPU「K3V2」を搭載し、ディスプレイはワイドUXGA(1920×1200ピクセル)と非常に高精細。ドルビーモバイルにも対応している。一方で、3GやLTEなどの通信モジュールは内蔵しない。「今は、Wi-Fi版の方が圧倒的にニーズが多い」(阿部氏)ためだ。阿部氏が「メインはうちの中で使うため、月額料金を払ってまで2台持つのか」と述べているように、毎月の維持費が通信モジュール内蔵タブレットに対するハードルを高くしている。「タイムトゥーマーケットに、いいものを早く市場に届けるという意味で、Wi-Fi版の方がいい」(阿部氏)という理由もある。キャリアがモバイル通信機能のないタブレットを取り扱うのは、販売チャネルを広げるためだという。大手家電量販店ではiPadなどとイー・アクセスのWi-Fiルーターをセット販売する動きもあるが、こうした商品を調達できない小規模な店舗でもタブレットを売ることが可能になるのがメリットになる。一方で、阿部氏は「そのままで通信できた方が便利なことは分かっている」と話し、モバイル通信対応タブレットと同時に、プリペイド方式のLTEも検討していくという。
スマートフォンは、Huaweiが1月のCESで発表した「Ascend P1」がベースのGS03を投入する。スリムでレスポンスもよく、裏面照射型CMOSセンサーのカメラを搭載しているが、おサイフケータイやワンセグなどの日本仕様には非対応。ディスプレイもQHDで、ミドルレンジに近い位置づけの端末となっている。他社に比べると少々寂しいラインアップだが、イー・アクセスの主力商品はあくまでWi-Fiルーター。「数も少ないので、今のペースだとメーカーさんも作っていけない」(阿部氏)という事情もあり、今はターゲットをあえて絞っている。今年度中に発売するLTE対応スマートフォンは「しっかりいいものを出したい」(阿部氏)とのことで、日本仕様に対応する可能性はある。1.7GHz帯のLTEが欧州やアジアで採用されていることも、同社にとっての追い風になりそうだ。
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