あの感動、再び――Appleは新たな時代に踏み出した:神尾寿のMobile+Views(2/4 ページ)
6月10日(現地時間)に開催された「WWDC2013」では、OS XとiOSの新バージョンが発表されたほか、「MacBook Air」と「Mac Pro」のモデルチェンジが行われた。WWDC 2013で示された未来とは――。キーノートから読み解いていきたい。
アプリケーションも見てみよう。
OS X Mavericksでは、複数のWebサイトのパスワードをiCloudで管理する「iCloud Keychain」や、Appleの地図サービス「Maps」、電子書籍サービス「iBooks」などの新機能が搭載。これらはすべてiPhone/iPadとiCloudを通じてシームレスに連携するようになっている。実際のデモンストレーションでは、カレンダー上の住所からMapsの地図を呼び出し、地図で現地を確認した後にiPhoneのターン・バイ・ターン・ナビに目的地情報を送るといったことを行って見せたが、その一連の作業はとてもスムーズだった。OS XとiOSの連携はさらに進み、マルチデバイス時代を先行するものになっていることが分かる。
“ポストPC時代”に入り、PC向けのOSの進化は難しい状況にある。旧来のデザインや使い勝手を残しすぎれば革新は生まれず、かといってモダンさを求めて変化を急ぎすぎれば多くの一般ユーザーがついてこられないものになってしまう。刷新による進化と連続性のさじ加減が難しいのだが、この点においてOS X Mavericksは、とてもよい塩梅になっていると筆者は感じた。MicrosoftのWindows 8のようにユーザーに断絶感を与えずに、時代に合わせた革新と進化を遂げているのだ。OS X Mavericksの投入は今秋の予定だが、そこでもすんなりとユーザーに受け入れられそうだ。
MacBook Airの堅実な進化と、意欲的なMacPro
このOS Xを搭載するハードウェアとしては、まず新型Macbook Airが発表された。この部分のプレゼンテーションを担当したのは、Apple ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのフィリップ・シラー氏だ。「毎日、持ち歩いて使えるノートブックを目指した」(シラー氏)として、“All-Day battery life”を掲げて新型Macbook Airを披露した。
新型MacBook Airの特徴は、CPUに「第4世代Coreプロセッサー」(開発コード名:Haswell)を採用することで、基本性能の向上とバッテリー駆動時間の大幅な延長を両立したこと。バッテリー容量は従来と変わらないが、11インチモデルで最大9時間(従来比で+4時間)、13インチモデルで最大12時間(従来比で+5時間)のバッテリー持続時間を実現。他方で、処理速度も向上しており、とりわけグラフィックス性能は従来比で最大40%、フラッシュストレージは従来比で最大45%高速化したという。無線LAN機能はIEEE802.11acに対応し、従来比で最大3倍に高速化した。
一方、デザインは従来機からまったく変わらず。サイズや重さも大きく変わっていない。また、既存ユーザーの一部から期待されていたRetinaディスプレイの搭載もなかった。あくまで今回は、Haswell搭載による長時間駆動化と、最新デバイス搭載による処理速度向上によるモデルチェンジに留まった。MacBook Airはとても完成度の高い製品であるため、現状ではそのバランスをあまり崩さないアップデートになったようだ。
新型MacBook Airは堅実な進化すぎて若干物足りなかったのも事実だが、続けて発表された新型Mac Proには会場もどよめいた。
新型Mac Proは主にプロユース向けのMacであり、12コアの次世代Xeonプロセッサ、1866MHz動作のDDR3 ECCメモリ(クアッドチャネル、メモリ帯域幅60Gバイト/秒)など高性能デバイスをぜいたくに採用。また最大20Gbpsと2倍に高速化した外部インタフェース「Thunderbolt 2」を搭載し、業務向けグラフィックスカードをデュアル搭載することで、グラフィックス性能を2.5倍高速化した。この“最強仕様”では、3台までの4K解像度のディスプレイ接続もサポートするというから驚きだ。
しかし、それ以上に驚かされたのが、デザインである。
これまでプロユース向けのPCというと、大型筐体で角張ったデザインのものが常識だった。しかし新型Mac Proは光沢感のある黒を基調に、円柱型のデザインを採用。さらに従来のMac Proの8分の1となる小型化を行ったのだ。プロユースといわず、ハイエンドコンシューマー向けでも通用しそうな秀逸なデザインである。
現時点ではMacProの価格や詳細な発売日は未定だが、登場したらプロクリエーターの心を掴むのは間違いないだろう。
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