“LCC”で攻めるウィルコム/「Xperia Z Ultra」の新しい価値/Windows Phone 8の日本発売は?:石野純也のMobile Eye(6月24日〜7月5日)(2/3 ページ)
6月末に開催されたMobile Asia Expoで大きな話題を集めていたいのが、ソニーモバイルの新機種「Xperia Z Ultra」だ。7月4日にはウィルコムの新機種と新料金プランも発表された。これら2つに加え、日本マイクロソフトの経営方針説明会も取り上げる。
“6インチスマホ”の新ジャンルを切り開く「Xperia Z Ultra」
→ソニーモバイル、6.4インチディスプレイ搭載の「Xperia Z Ultra」を発表
6月25日、ソニーモバイルは、中国・上海で開催された「Mobile Asia Expo」に合わせ、6.4インチのスマートフォン「Xperia Z Ultra」を発表した。5インチ、フルHDで王道をゆく「Xperia Z」と、デザインテイストや機能を受け継いだタブレット「Xperia Tablet Z」の“間”を埋める製品。「Z」の名を冠していることからも分かるように、ソニーモバイルのフラッグシップモデルに位置づけられている。厚さはわずか6.5ミリ。Xperia Z Ultraより1週間ほど早く発表されたHuaweiの「Ascend P6」がうたう6.18ミリには及ばないが、フルHDや防水に対応していることを考えれば十分スリムだ。
タブレットに近いサイズを持ちながら電話もできるスマートフォンとして分類される製品は、海外で「ファブレット」と呼ばれ始めている。この分野を開拓したのはSamsung電子の「GALAXY Note」シリーズで、特にアジア圏では「急速に広がっている」(ソニーモバイル関係者)。最近では、中国、台湾、韓国のメーカーも、ファブレットを相次いで投入している。Xperia Z Ultraも、ここに対抗する製品として開発された1台だ。
中国をはじめとするアジア市場では、大画面スマートフォンが高い人気を誇る。写真は、Mobile Asia Expoに出展されていたBBKの「Vivo Xplay」。このように、新興メーカーも6インチ前後の端末開発にしのぎを削っている
大画面を生かし、“視聴”にこだわった機能の数々がXperia Z Ultraの特徴といえる。まず、ディスプレイには従来の液晶より色域が広い「トリルミナスディスプレイ for mobile」を採用。ここに、BRAVIAやVAIOといったソニー製品で用いられている映像補正技術の「X-Reality for mobile」を組み合わせた。X-Reality for mobileはデータベース型の映像補正技術。ソニーモバイルで製品戦略などを担当する黒住吉郎氏によると、「720pの映像をX-Reality for mobileにかけると1080p相当になる」そうで、実際に目にすると非常に効果が高いことが分かる。仕組みとしては、低い解像度と高い解像度の膨大な数の映像を用意し、それらの違いをデータベースとして蓄積。これに基づいたアルゴリズムで、映像を高解像度化している。
一見、非常に高いパフォーマンスを要求されそうな技術だが、これが実現できたのはXperia Z Ultraに採用された「Snapdragon 800」のおかげだ。同CPUはGPUの性能も上がっており、これを利用することで消費電力もわずかに抑えることが可能になったという。
手書き入力に対応しているのも、Xperia Z Ultraならでは。ただし、GALAXY Noteシリーズのように専用のペンが必要な形にはしかなった。代わりにタッチセンサーの感度を上げ、鉛筆や爪楊枝といった細いペン状のものであれば、手書きができるようにした。手書きに対応したアプリもプリインストールされる。
6.4インチのディスプレイを採用したXperia Z Ultraだが、企画は液晶のサイズありきで決まったわけではない。目指したのはパスポートと同じ横幅だ。会見に登壇したソニーモバイルのデザイナー 勝沼潤氏によると、Xperia Z Ultraは持ち運びやすさを最重要視し、「パスポートやボーディングパス(搭乗券)と一緒に持ち運べるようにした」。ディスプレイのサイズが変則的なのもそのためだ。まさに数値より利用シーンを優先した商品企画といえるだろう。実際手に取ってみると、文字入力などの片手操作はさすがに無理があるが、ネットや映像の閲覧なら片手で端末を持ったまま行える。
ソニーらしいチャレンジングな端末に仕上がったXperia Z Ultraだが、残念ながら日本での展開は未定だ。関係者の話に筆者の推測を交えて現在の状況をまとめると、日本では必ずしもGALAXY Noteシリーズが好成績を収めているとはいえず、キャリアも導入に二の足を踏んでいる事情が見えてくる。ただ、端末が出ていなければ市場は開拓できない。鶏が先か卵が先かといった議論も分かるが、スマートフォンも進化の踊り場に差し掛かったと言われる機会が多くなってきた。そうした現状に一石を投じる端末として、ぜひ日本に導入されることを期待したい。
関連キーワード
Xperia | Xperia Z | Xperia Z Ultra | ディスプレイ | ソニーモバイルコミュニケーションズ | 中国 | X-Reality | Galaxy Note | フルHD | BRAVIA | CPU | 消費電力 | GPU | Samsung | Snapdragon | VAIO | Xperia Tablet Z
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
- 2013年夏モデル:ウィルコム、PHS+4G対応スマホや他社Androidでも“だれ定”が使えるBT端末などを発表
ウィルコムが2013年夏モデルを発表。PHSと4Gに対応した「DIGNO DUAL 2」、シャープ製のPHSスマホ「AQUOS PHONE es」に加え、他キャリアのAndroidでも“だれ定”が利用できるBluetoothアダプターなどをラインアップした。 - 「だれスマ」は月々1980円から:「LCCとして、大きなニッチを狙う」――ウィルコムのスマホ・PHS戦略
ウィルコムが7月4日、新商品/サービス発表会を行った。7月1日に更正手続を完了し、ソフトバンク子会社となったウィルコム代表取締役社長の宮内謙氏は、「LCC(ローコストキャリア)として、これからも大きなニッチを狙っていく」と宣言した。 - 2013年夏モデル:だれのスマートフォンでも定額なのだ──ウィルコム、カードサイズ「だれとでも定額パス」
ウィルコムは、ドコモ、au、ソフトバンクのスマートフォンでだれとでも定額が利用できるカード型アダプター「だれとでも定額パス」を発表した。 - SIMロックフリー端末の音声通話はこれ1枚:写真で見る「だれとでも定額パス」
「だれとでも定額パス」は、スマートフォンでキャリアを問わずに「だれとでも定額」通話が利用できる。その“薄い”本体を専用通話アプリとともに紹介する。 - 4.7インチHD液晶搭載:ウィルコム、PHS通話+4Gの高速通信に対応した「DIGNO DUAL 2 WX10K」を発表
ウィルコムは、京セラ製のAndroidスマートフォン「DIGNO DUAL 2 WX10K」を7月18日に発売する。PHS通話のほか、SoftBank 4Gに対応して下り最大76Mbpsの高速通信が利用できる。おサイフなどの便利機能も搭載した。 - 写真で解説する「DIGNO DUAL 2 WX10K」(外観編)
PHS+4Gに対応した京セラ製の「DIGNO DUAL 2」は、4.7インチHDディスプレイとスマートソニックレシーバーの搭載、おサイフのサポートなど、スペックや機能も充実させた。 - PHS+3G通信に対応したコンパクトなスマートフォン「AQUOS PHONE es WX04SH」
ウィルコムが、シャープ製のコンパクトなスマートフォン「AQUOS PHONE es WX04SH」を9月中旬に発売する。PHSと3Gで通話とデータ通信ができるほか、テザリングも利用できる。幅60ミリの丸くて細いボディも特徴だ。 - フルHDスマホでは世界最薄:ソニーモバイル、6.4インチディスプレイ搭載の「Xperia Z Ultra」を発表
Xperia Zがさらに大きく、薄く、美しく――。ソニーモバイルが新型のスマートフォン「Xperia Z Ultra」を発表した。6.5ミリのボディに6.4インチのフルHD液晶を搭載。ソニーのディスプレイ技術「トリルミナスディスプレイ for mobile」と超解像技術「X-Reality for mobile」も採用した。 - Snapdragon 800 Workshop in 北京:Snapdragon 800シリーズ搭載MDPsでベンチマークテストをやってみちゃう
2013年後半に登場予定の「Snapdragon 800」シリーズは、従来モデルから大幅に性能が向上するという。その言葉は、“真実”なのか、“はったり”なのか。 - 直近のSurface売上額、iPadを超えていた:日本MS、Windows 8.1+機器ビジネスを強化──「チャレンジャーとして挑む」
日本マイクロソフトが2014年度戦略方針を説明。好調のコマーシャルビジネスに加え、コンシューマービジネスも「チャレンジャーとして、デバイスビジネスを強化する」方針を打ち出した。ただ、WP8、Xboxへの言及は少なかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.