「タイプA」「通話定額」「フルMVNO」――IIJの注目トピックをじっくりと聞く:MVNOに聞く(2/4 ページ)
ここ数カ月、モバイル通信サービスで矢継ぎ早に新しい発表をしているIIJ。早くから事業を展開してきた同社が、“次の一手”を模索しているようにも見える。こうした直近のトピックについて、佐々木氏と堂前氏にじっくり語ってもらった。
同じ電話番号でDとAを変更可能にすることも視野に
佐々木氏 音声のSIMカードを同じ電話番号のまま、タイプAからD、DからAへと変更できるようになると、エリアではないときに気軽に変えるようなことができ、われわれもそういうご提案ができます。DとAの間の変更に関しては、早めにご提供できるようにしていきます。
堂前氏 そこはある意味、MVNOの醍醐味(だいごみ)です。1枚のSIMで両方ではありませんが、電話番号を残したまま移行ができるのは、キャリアさん(MNO)にはできない技です。
―― ユーザーから見ると、冗長性があるとも言えますね。
堂前氏 冗長性とも言えますし、ご自宅で特定のキャリアが入らないということもあります。もちろん、お1人で2枚持つ方もいると思います。
―― データシェアを組んで、デュアルSIMの端末で切り替えながらというのもできそうですね。
堂前氏 大いにありですね。今は動作検証中ですが、(モバイルWi-Fiルーターの)Atermだと両方を切り替えながら使えます。
―― ZenFone 3などもですね。
堂前氏 ただ、ZenFone 3はSIMスロット1に入れないとVoLTEが使えず、その辺のクセを踏まえた上でやらなければなりません。スロット1にタイプAを挿せばいいのですが、その場合、LTEの同時接続はできないのでスロット2のタイプDが3Gになってしまいます。ちょっとパズルみたいですが……。
佐々木氏 それを面白いと言う方もいますし、そこまでは面倒という方には、手数料はかかりますが、切り替えていただければと思います。そういう機能は、早めにご提供するようにします。
タイプAでは依然テザリングが利用できない
―― ちなみに、iOSだとタイプAでテザリングが使えません。
堂前氏 これはmineoさんなどとも一緒、iOS側の設定(キャリアプロファイル)次第です。今日も新しい設定が降ってきましたが、iOS 10.1でもダメでした。何かのフラグが落ちているためです。
佐々木氏 ドコモ系でも、iOS 7になったとき、同じようにテザリングが死んだことがありました。より正確に言うと、そのタイミングでドコモさんがiPhoneを取り扱うようになったからです。それによってLTEが使えるようになったりはしましたが、逆にテザリングがアウトということになりました。
この場合、ドコモさんが新規に参入したのでいいのですが、iPadはあとからキャリア設定が降ってきて、急にテザリングが使えなくなってしまったことがあります。その際には、消費者保護の観点から「これはまずい」とドコモさんとお話させていただいた経緯があります。SIMフリー版を買ってIIJのSIMカードを使っている人には、まったく無関係な話ですからね。結果として僕らが言ったのが効いたのかどうかは分かりませんが、iOS 8.0で使えるようになりました。
―― iPadの場合、ドコモの取り扱い開始が端末の発売より遅れていましたからね。
堂前氏 iOSは正規プロバイダーに左右されてしまうところがあります。同じMVNOでもUQ mobileさんには、キャリア設定が別途降っているようですが……。
佐々木氏 ただ、これは僕らがKDDIにクレームをつけるべき話ではないと思っていて、タイプAでテザリングが使えなければ、ユーザーさんはタイプDで契約するだけです。KDDIさんには、そういうことに対する危機感を持っていただきたい。僕らはタイプAとタイプDが同じであるべきだとは思っていませんが、その結果は正しくインフォームしていくだけです。
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