小寺信良のIT大作戦
本来行政がやるべきDXをたった1人で完成 AIが変えた“実行可能な規模” 待機児童問題に一石を投じた「園えらびの手がかり」の例(2/3 ページ)
個人で国レベルのサービスを構築
「園えらびの手がかり」を構築、運営しているのは、宮﨑一旗さんだ。中央大学在学中に起業し、約4年間代表として事業を経営したのち、株式譲渡により会社を売却した。今年大学を卒業したばかりの24歳である。
宮﨑さん自身には子供がいるわけでもなく、保育業界の経験はない。だが経営する中で、賃金や労働時間だけでは見えにくい働く人の負担や労働問題に関心を持つようになり、身近に保育士として働く友人がいたこともあって、まず保育業界の求人情報を調べ始めたのがきっかけとなった。
園の情報は、自治体の公開情報や求人情報、第三者による評価などが別々の場所に分散しており、一つの施設について知るだけでも相当な手間がかかる。情報は公開されて存在しているものの、トータルでサービスとしての体を成しておらず、必要な人がその情報にたどり着けない。
こども家庭庁でも、認定こども園、保育所、幼稚園などの情報を検索できる「ここdeサーチ」を公開している。だが「第三者評価を実施(結果の公表有り)」としている9314施設を全数確認したところ、実際の評価結果まで到達できたのは39.4%しかなかったという。結果欄が空欄の施設やリンク切れなどで、評価結果へ到達できなくなっている。
さらに到達できない施設について、都道府県や自治体等の公表元を調べたところ、少なくとも到達できなかった約5600施設のうち、1912施設では評価結果が存在していた。要するに、「ここdeサーチ」のデータベースがメンテナンスされていないのである。
そこでClaude Codeを使いながら、これらの公開情報を施設単位で収集・整理するサイトと調査基盤を構築した。実際に「園えらびの手がかり」では、行政情報、求人情報、都道府県の第三者評価、園の公式サイトといった情報を、施設単位で突き合わせを行った。
着手したのが7月末、公開が8月上旬という、猛スピードである。園の情報約5.5万件と、求人媒体10媒体を毎日自動でチェックし、アップデートされる。検証の仕組みも構築されている。ポイントは、自治体ごとに異なる資料形式をAIが吸収し、個人でも全国規模の情報を横断的に扱えるようになったことだ。
繰り返すが、これは本来行政がやるべき仕事であり、行政がやる規模だ。それを個人でやれているという事実は、行政にとっては先行事例として大きな意義がある。
一方で、これを個人で続けていく限界もある。現時点では公平を期すため、掲載料や紹介手数料、広告費などは受け取っていない。つまり収益はゼロである。ただ、事業の継続性を考えると、今後は何らかの収益モデルを導入すべきか、悩みどころだという。
さらにいえば、これだけ公的なインフラともなりうる事業を、このまま個人の労力に依存していていいのか、という問題もある。どこかの段階で行政が吸収するか、行政がこの方法論を学んで独自サービスを展開するなどの整理が必要であろう。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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