小寺信良のIT大作戦
本来行政がやるべきDXをたった1人で完成 AIが変えた“実行可能な規模” 待機児童問題に一石を投じた「園えらびの手がかり」の例(3/3 ページ)
「実行可能な規模」の革命
この方法論で注目すべき点は、データ収集の規模を上げても人的負担はほぼないということである。実際、各地域で保育園の情報を把握し、データを持っているのは、自治体にマンパワーがあるからだ。そこは変わらないところだ。
一方市民サービスは、様々な利用者が様々な切り口でアクセスしても矛盾なく情報が得られることが重要である。収集データごとに1つのサービスを作っていては、利用者が混乱するだけである。その点、「園えらびの手がかり」では、園を探している人にも役に立つし、園に勤めたい保育士が見ても役に立つ。
加えて、行政サービスのどこが機能していないか、あるいはどの自治体が機能していないかということを把握する、行政監査的な機能も持っている。
これは一種の、シビックテック(Civic Tech)といえるだろう。シビックテックとは、市民(Civic)とテクノロジー(Tech)を組み合わせた造語で、市民が主体となってITやオープンデータなどの技術を活用し、地域の課題解決や行政サービスの向上を目指す取り組みを指す。
これがAI時代になり、規模は拡大、人員は縮小が可能になったことを示している。次に起こるべきは、金銭的支援ではなく、この手法をどうやって行政の標準的業務へ移し替えていくか、である。
現在地方行政は、DXの真っ最中である。第1フェーズとして、25年度末までに自治体基幹システムの標準化・ガバメントクラウド移行が完了する予定だったが、完了したのは対象システムの約7割にとどまり、期限内に移行しきれないシステムを抱える自治体は半数を超えた。今後は残る約3割のシステム移行を進めながら、第2フェーズへと進んでいく。ここでは、整備した基盤の上でデータを連携・活用し、住民サービスの価値を高めることがテーマとなっていくところだ。
ただ「園えらびの手がかり」で実践できているように、間にAIを噛ませればデータ形式はなんでも良くなってきている。もちろん標準化や共通フォーマットに乗せれば美しいが、現在の行政DXのペースでは市民サービスの構築までたどり着けるのは、いつになるのか分からない。だがまずサービスを先に出すという点において、AIの活用方法やサービス構築の方法論といったところは、行政DXを推進する上で大いに参考になるのではないだろうか。
こうした方法論は、もっと広く知られていいはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Microsoft、3つの国際的な犯罪ネットサービスを解体へ 日本狙った詐欺がきっかけ
-
2
デンマークの880万人分流出、原因はパスワード「123456」 ハッカー「侵入は難しくなかった」 現地報道
-
3
バーガーキング、約1118万件漏えい 公式アプリ会員システムに不正アクセス
-
4
SBI証券のFXで“誤ロスカット” 再委託先IIJが作業ミス、システムでも検知できず 779口座が対象
-
5
研究者グループ、中国Tencentのクラウド上の“逸脱”AIエージェント群と交信 報告書の隠しテキストで呼び込む
-
6
「Google Play」、AI Studioで作った自作アプリを自分の端末で実行可能に AIでゲームを探す機能も
-
7
デジハリ大、「Claude」を全学導入へ──国内初、“回数気にせず”使い放題に
-
8
化粧品販売「アエナ」約81万人分の個人情報流出か 氏名やクレカ下4ケタ・有効期限など
-
9
「Rakuten Mini」など4機種に脆弱性 楽天モバイル、他製品への切り替え推奨
-
10
メドレーの産婦人科向けシステムに不正アクセス、患者の個人情報漏えいか 最大787の医療機関が対象
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR