OpenAI、「GPT-6 Astra」を一部組織向けに公開 サイバー能力が初の「Critical」に

 米OpenAIは9月3日(現地時間)、新モデル「GPT-6 Astra」を公開した。同社は「世界で最も知的で、最もアラインメントの取れたモデル」と位置付けている。同日から一部の組織への提供を開始し、数日中にChatGPTのPlus、Pro、Business、Enterpriseの各プラン、OpenAI API、AWSでも利用できるようにする。安全指針「Preparedness Framework」でサイバーセキュリティ能力が最上位の「Critical」(重大)に達していると同社が認定した初のモデルとなる。

(画像:OpenAI)

数日中に有料プランへ、料金は入力10ドル・出力50ドル

 提供は段階的に進める。まず一部の組織向けに開始し、数日中にChatGPTの有料プランとAPI、AWSに広げる。Astraの利用は既存のサブスクリプション枠に含まれ、追加利用分はクレジットを購入できる。Pro、Business、Enterpriseのユーザーは「GPT-6 Astra Pro」も利用できる。Enterpriseでは初期状態でAstraが無効になっており、管理者が有効化する必要がある。

 APIでのモデル名は「gpt-6-astra」で、Amazon Bedrockでも利用できる。標準料金は入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドル。標準の2倍の料金で最大2.5倍高速になる「Fast mode」も用意する。

提供版はPoC作成を拒否 「Daybreak」で段階的に緩和

 今回提供するAstraには、サイバーセキュリティ関連の機能に制限がかけられている。安全なコードレビューやパッチ適用などの防御作業には使えるが、脆弱性の実証コード(PoC)の作成など、より高度なタスクは拒否する。防御側向けプログラム「Daybreak」を通じて今後数週間かけて対象を広げ、制限を緩和した版を提供する計画だ。緩和後は脆弱性やPoCの検証、マルウェア解析、検知ルールの開発といった用途に対応するとしている。

 安全策も強化した。Astraクラスのモデルでは、本番環境でもミスアラインメントの監視を導入する。モデルの推論や行動を分類器で確認し、認可されていない可能性のある動作を検知すると自動的に停止する仕組みだ。ChatGPTやCodexではタスクが一時停止し、ユーザーが操作内容を確認して再開を判断できる場合がある。APIでは対象となったタスクを停止する。同社は、こうした追加チェックによって防御目的を含む正当な作業が遅延・中断する場合があるとし、不要な中断を減らすため改良を続けるとしている。

評価中に未知のゼロデイ2件を発見

 「Critical」認定の根拠となったサイバー能力の評価では、一部で本番環境の安全策を外した条件を用いた。ExploitBenchは「GPT-5.6 Sol」の78.5%に対して100%、ExploitGymは30.3%に対して42.4%で、いずれも出力トークン数は大幅に少なかったとしている。過去の脆弱性が学習データに含まれる影響を避けるため、直近3カ月に公開された脆弱性を使った社内ベンチマーク「ExploitBench(2026年6~8月版)」も新たに構築し、Astraは39.0%、Solは11.5%を記録した。

サイバーセキュリティ関連ベンチマークの比較。いずれも本番環境の安全策を外した状態での結果(画像:OpenAI)

 この評価の過程で、Astraは未知のゼロデイ脆弱性2件を発見して悪用し、OpenAIは開発元への開示を進めているという。バイナリのリバースエンジニアリング能力を測るSRE-Benchでは、1回の試行で88.0%、4回以内で99.2%を解決したとしている。専門家による評価では、堅牢化されたWebブラウザで未知の脆弱性を使って任意コードを実行する攻撃チェーンや、堅牢化されたOSに対する権限昇格エクスプロイトを作成できたという。

認められた範囲を超えた行動は「0%」

 アラインメント面では、Hugging Faceへの侵害事案を踏まえた新しい評価を導入した。困難または達成不可能なタスクに直面したモデルが、認可された範囲を超えて行動するかを測るもので、本番環境の安全策を外したSolが48.2%の割合で範囲外の標的に手を出したのに対し、Astraは0%だったという。

コンピュータ操作の安全性を測る社内評価。意図しない結果を招いた割合(数値が低いほど高評価)(画像:OpenAI)

 コンピュータ操作の安全性を測る社内評価でも、意図しない結果を招いた割合はAstraが2.4%で、「Claude Fable 5.1」の9.5%、「Claude Opus 5」の11.5%を下回ったとしている。自らの能力について誤った説明をする頻度もSolの3分の1になったとする。

思考過程の監視しやすさは低下

 一方、システムカードでは、Astraの思考過程(CoT)の監視しやすさが従来モデルより低下したと報告している。通常条件でもAstraはSolより短く情報量の少ないCoTを生成する傾向があり、監視回避を促す敵対的な評価では、監視をかわす能力も高まった。

 OpenAIは、より単純なタスクではAstraが自らの思考過程を制御する能力が高まり、少ない記述で問題を解けるようになったことなどが要因だと説明する。一方、複雑なタスクの解決に必要な推論を隠すことは依然として難しいとしている。同社は「この低下を深刻に受け止めている」とし、監視可能性の改善を研究の優先課題に位置付けた。

数学やコーディングで最高スコア

 OpenAIによると、Astraはコンピュータ操作、ブラウジング、ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、科学、専門業務で最高水準に達したという。数学のFrontierMath Tier 4では本文で98%として「飽和させた」と説明しているほか、比較表の同ベンチマークv2では97.6%を記録した。抽象推論のARC-AGI-3では99.9%、エクスプロイト生成能力を測るExploitBenchでは100%としている。

 ターミナル操作を伴うTerminal-Bench 4.0では57.9%で、Solの37.3%、米AnthropicのClaude Fable 5.1の55.8%を上回った。専門業務を扱うAgents' Last Examでは59.3%で、Claude Opus 5の55.5%、Solの53.6%を上回ったという。

コンピュータ操作は所要時間を約47%削減

 コンピュータ操作については、オンラインフォームへの入力やCRMの顧客情報更新、カレンダー整理などに加え、科学データの分析やWebサイト構築、フロントエンドの動作確認までこなせると説明している。

 OSWorld 2.0を用いたレイテンシのシミュレーションでは、Solが1タスク約75分で65.7%だったのに対し、Astraは約40分で72.6%を記録し、所要時間を約47%削減したとしている。Codexのハーネスも同時に更新し、Mind2Webベンチマークでのタスク完了は、Solの現行環境と比べて1.9倍高速になったという。

 Codexでは、長時間の作業でコンテキストウィンドウが埋まった際、内容を繰り返し要約して圧縮する従来方式に代わり、Astraがメモを保持して次のコンテキストウィンドウに引き継ぐ新方式も試験導入する。過去のコンテキストも検索できるとしている。

素数の間隔で2件の新たな結果

 科学分野では、素数の間隔に関する2件の新たな結果を公表した。無限に存在する素数のペアの間隔について、従来の最良の上界240を186に改善したとしている。もう1件は、素数間の異常に大きな間隔に関する上界で、80年以上変わっていなかった項を改善したという。証明と関連資料も公開している。

防御側支援「Daybreak」に10億ドル規模

 OpenAIは同日、防御側支援の新施策「Daybreak for Frontline Defenders」も発表した。Daybreakへの補助付きアクセスやトレーニング、技術支援、パートナーシップに10億ドル規模を充て、今後6カ月間での展開を想定している。

 米国を起点に、上下水道や電力網の運用事業者、州・地方政府、地域金融機関、非営利団体、オープンソースのメンテナーなど、セキュリティ予算が限られる組織を優先する。Daybreakは既に2000の承認済み組織・ワークスペースで数千人の防御担当者に利用されているという。

「Critical」認定までの経緯

 Astraを巡っては、8月1日にOpenAIが「次期主力モデル」としてその名を初めて公表し、社内版が数学と理論計算機科学の未解決問題10件で新たな結果を出したと発表していた。その後、8月7日にはサイバー能力が「Critical」に達している可能性を否定できないとして、強化したセキュリティ要件を満たさないAstra関連の社内活動を一時停止していた。

 サム・アルトマンCEOはXで、「この能力水準で求められる安全性とアラインメントの基準を満たすために余分な時間がかかった」とし、全ユーザーへの提供を急いでいると投稿している。

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