ITmedia NEWS >

オンライン年末商戦は好調、だがフィッシャーが天敵に

» 2004年12月24日 16時07分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ベンダーや調査会社は、2004年のオンライン年末商戦で新たなトレンドを発見している。例えば、検索エンジンや比較ショッピングサービスで詳しい情報を手に入れてから決めようとする買い物客が増えている。とは言え、心強いトレンドばかりではない。スパマーからものを買う人の割合は、面食らうほどに高い。

 2003年の年末商戦と比べてオンラインショッピングが大きく成長しているという点に議論の余地ははなさそうだ。これはさまざまな市場調査会社によって裏付けられている。例えばcomScore Networksは、2004年の11〜12月の旅行を除く小売支出は、前年比23〜26%増の151億〜155億ドルになると予想している。

 特に先週(12月13〜17日)は、前年同期と比べてオンライン小売り売上が49%増加したとcomScoreの上級副社長ダン・ヘス氏は語る。同氏はこの週の売上が好調だった要因を2つ挙げている。配送期間が前年より短いことと、オンラインで購入し、実店舗で商品を受け取るというオプションが改善されていることだ。

 配送期間の短縮により、商品が休暇に間に合うように届くという安心感を購入者が持ったために、先週は購入が増えたとヘス氏は説明する。「配送スケジュールを数日短縮し、それを効果的に消費者に伝えるために、小売業者と配送業者は舞台裏で幅広い取り組みを行ってきた。オンライン小売業者にとって、約束したお届け日から数日遅れるというのは、大きな遅れになる」

 また、多くの主要オンライン小売業者は、オンラインで購入して、地元の店舗で商品を受け取るというオプションを改善しているとヘス氏。このオプションは配送料と配送までの待ち時間をなくせる。「これは目新しいものではないが、数年前から実験的に行っていた業者も含めて、以前よりも多くの業者がこのオプションを完成させている。消費者も実際にこれを気に入っている」

 America Online(AOL)が8〜9月に行った調査では、2004年は年末商戦のオンラインでの買い物予算(53%)が、初めてオフラインのそれを上回った(11月24日の記事参照)。オンライン小売業者にはうれしいニュースに違いない。またこの調査によると、オンラインでの買い物予算は前年よりも平均で6.5%増えているが、オンライン・オフラインを合わせた年末商戦の買い物予算全体は3.6%減っている。

 明らかに支出が増える一方、買い物客が積極的に検索エンジンや比較ショッピングサイトを利用する傾向も高まっている。幾つかの組織がこのトレンドを確認している。

 例えば、オンライン測定会社Hitwiseは、12月5〜11日の1週間に、検索エンジンがショッピングサイトと求人サイトへのトラフィック誘導に大きく貢献したことを発見した。Googleからのトラフィックはそのうち4.26%、続いてYahoo!が2.24%、MicrosoftのMSNが0.54%だった。

 さらにAOLの調査では、オンライン買い物客の27%がオンラインで比較や下調べを行ったと回答し、48%が検索ツールを利用したと答えた。前年はそれぞれ23%と42%だった。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン経営学校が1年かけて行った調査では、買い物客がオンラインで下調べをする時間が増えているほか、価格へのこだわりは薄れ、企業の評判やブランドといったほかの要素に価値が置かれる傾向がある。

 「検索に時間をかける人ほど価格に敏感だという共通の前提があった」とスローン経営学校のeビジネスセンター長エリック・ブリニョルフソン氏は発表文で述べている。「だが、価格よりも製品の方に重点が置かれている。消費者は単に低価格だけを求めるのではなく、ほかの特徴も求めて検索していることが明らかになった」

 多くのオンライン買い物客は知識をつけてきているが、いまだに世間知らずでオンラインの危険に気付かず、危険で問題のある買い物を行ってしまう人もいる。例えば、11月にBusiness Software Alliance(BSA)とCouncil of Better Business Bureaus(CBBB)が行った調査では、驚くことに21%の回答者が、スパマーからソフトを購入したことがあると認めた(12月11日の記事参照)。また、スパマーからアパレル製品や宝石類を購入した回答者は22%だった。

 「多くの消費者は、スパム経由で買い物をするか、買い物しようとすれば、年末商戦のショッピング体験が台無しになると分かるだろう」とソフト業界団体BSAの執行副社長ボブ・クルーガー氏。「消費者からお金を取って、年末の買い物を台無しにするのを喜ぶような輩がたくさんいる」

 例えば、商品が届かない、個人情報を盗まれる、PCにスパイウェアやウイルスを感染させられるといった被害に遭う可能性があると同氏は指摘する。特にソフトの場合、スパム経由で提供されるソフトのほとんどが違法コピーであることをBSAは発見したという。

 これだけ多くの人がスパマーから進んで商品を買っているという事実に、BSAはショックを受けたとクルーガー氏は語る。「スパムに応えてものを買うことの危険性を、もっと消費者に教育する必要があるということが示されている」

 「自分は知識がある」と思っている人でも、特に年末商戦期はインターネットでよく見られる詐欺やお粗末なサービスに注意しなくてはならないと米消費者同盟のConsumer Reports Webwatchプロジェクトは述べている。

 同団体はWebサイトで、予定通りに荷物を届けない業者への対処法や、合法なオンラインチャリティーを判別する方法など、詐欺や粗悪なサービスの被害に遭うのを避けるためのヒントを提供している。

 残念なことに、オンライン詐欺の手口として人気の高いフィッシングが、多くの見込み客をオンラインストアから遠ざけているようだ。電子メールセキュリティ会社MailFrontierが10月に行った調査によると、回答者の29%が、フィッシング詐欺を懸念して年末商戦はオンラインで買い物しないことにしたとしていた。フィッシングとは、ユーザーを本物らしく見せたWebサイトに誘導し、個人情報や金融情報を引き出すという手口。

 このほか、2004年の年末商戦には次のようなトレンドが見られる。

  • Hitwiseによると、Webサーファーが人道主義やチャリティーに焦点を当てたサイトを訪問する傾向が低くなっている。

  • AOLによると、男性は女性よりも買い物予算が15%多い。

  • Hitwiseの調査では、地方の買い物客は都会の買い物客よりもオンラインショッピングサイトにアクセスする傾向がある。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.