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「ソフト大国」目指すロシアに必要なもの

» 2006年06月02日 15時32分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

 ロシア連邦――世界ソフトウェア市場では、この国も他国に引けをとらない。しかし、ほとんどのケースで年率30%で成長しているにもかかわらず、ロシアのソフトメーカーはあまり世に知られておらず、インドに仕事を大量に奪われる危機にさらされている。

 6月1日に開催されたRussoftカンファレンスには、ロシア、ベラルーシ、ウクライナに本拠を置くソフトウェアメーカー各社が、いかに規模を拡大し、ITという太陽の当たる場所で自分たちの存在を主張できるかについてのノウハウを求めて集まった。

 Russoftはロシア、ウクライナ、ベラルーシに拠点を置くソフトウェアメーカー企業の業界団体。

 ロシア企業が直面している最大の問題の1つは、規模を拡大して大口顧客からの認知度を上げ、重要なITプロジェクトを安心して任せてもらえるよう信頼を獲得することだ。

 もっともこの問題も「卵が先か鶏が先か」で、規模を拡大するためにはより多くの顧客を獲得しなけらばならない。買収を通じて答えを出そうとしている企業もある。

 モスクワに本拠に置くロシア第2位のソフトウェアメーカーLuxoftは、従業員数1600人、年商4500万ドルを上げている。同社はつい最近、ニューヨークに本社を構えロシアでソフトウェア開発業務を行っているソフトウェアメーカーITCI(IT Consulting International)の買収を完了したばかりだ。

 ITCIは金融サービス業務に重点を置いているのに対し、LuxoftはIBM、Boeing、Dell、Deutsche Bankを顧客に持つ。

 ロシア最大のソフトウェアメーカーはEpamで、年商5700万ドル、従業員数1700人の規模を誇る。同社のグローバルオペレーション担当執行副社長カール・ロブ氏によれば、世界本社は米ニュージャージー州プリンストンにあるが、開発作業はロシアをはじめとする旧東欧圏で行われているという。

 同氏は取材の中で、Epamが企業買収を通じて規模を拡大する可能性を示唆した。

 Forrester Researchのアナリスト、パスカル・マツケ氏は、2005年のロシアソフトウェアメーカーによる総売上高を10億ドルと推定している。これに対し、インドのソフトウェア産業の規模を240億ドル、中国のそれを20億ドルと見込んでいる。

 業界団体であるRussoftは、ロシアや関係国における多くの共通するメリットおよびデメリットを抱える会員企業すべてを支援することを使命としている。

 ロシアは、堅牢で安全な高速道路、鉄道、供給電力のインフラ産業を得意とするほか、高度な抽象的思考力を持つ教育水準の高い労働力を強みとしている。

 賃金は安定しており、サンクトペテルスブルグと、特にモスクワの郊外ではコストは低く、インドに十分対抗できるレベルにある、とマツケ氏はRussoftカンファレンスのプレゼンテーションで強調した。

 ロシア企業の発達を阻んでいる要素としてマツケ氏は、同国内における出張の規制、ビジネス教育の不足、政府高官間の衝突、知的財産に関する認識欠如、ソフトウェアメーカーのマーケティング力の弱さを挙げた。

 Deloitte Consultingのパートナー、ジリ・ポーラック氏はRussoftの講演で、ロシアのソフトウェア企業が世界レベルで信頼を得るためには、年商2億ドルを上げる必要があると主張した。

 マツケ氏は、幾つかの市場ファクターがロシアに有利に働きつつあると指摘した。大手のアウトソーシング顧客の多くが講じている「マルチソーシング」戦略を通じて、従来よりも規模の小さい契約が多くなり、このためロシアなどを拠点とする小規模企業にもチャンスがめぐってきているという。

 各社の規模が大きくなるにつれて上位企業は「国を代表する企業」の座を競い合い、小規模企業がそれぞれ続くようになる、とマツケ氏は述べた。既にインド市場はこのパターンに沿って動いているという。

 カナダのモントリオールに本拠を置くDatamonitorのアナリスト、ピーター・ライアン氏によると、ソフトウェアサービス市場規模の成長ペースも速まっており、2004年の480億ドルから2008年には600億ドルに拡大する見込みだとしている。

 さらに同氏は、この間ロシアおよび東欧圏企業が占める市場シェアは5%から8%に増えるだろうとRussoftの来場者に語った。

 「ロシアならびに東欧諸国は成長に向けて勢いづいている」とするライアン氏は、一般が抱いている「不安定」と「崩壊」というイメージを克服しなければならないと言い添えた。そのためには、自らについて語る術を磨く必要がある。

 「マーケティングの強化とイメージ刷新を図るためにはそれなりの投資も必要になる」(同氏)

 マツケ氏、ポーラック氏、ライアン氏とも、ロシア企業は、マーケティングを強化しつつ、自分たちの最も得意なスキルを伸ばしていくべきだという意見で一致している。

 「マーケティングとビジネスフォーカスの差別化ができれば、チャンスは無限にある」とポーラック氏。

 一方マツケ氏は、ロシア企業は既に正しい方向に向かっていると言う。「この2〜3年の進展ぶりを非常に心強く思っている。ロケットは発射準備を整えた」と同氏は語った。

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