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「それが誠意か」──ライブドア臨時株主総会、怒号の中議案可決

» 2006年06月14日 21時37分 公開
[ITmedia]

 ライブドアは6月14日、証券取引法違反事件後としては初となる臨時株主総会を幕張メッセ(千葉市)で開き、平松庚三社長とUSENの宇野康秀社長ら6人を取締役に選任する案など、4議案をすべて可決して終了した。

 3月末時点のライブドア株主数は15万4814人。このため1万人以上の出席者にも対応できるよう幕張メッセの展示場を使って開かれたが、出席したのは午後4時時点で1794人にとどまり、広大な会場はがら空きだった。

 総会は約3時間20分で終了したが、株主質問を途中で打ち切ったことに不満の株主から「それがお前らの誠意か」「勝手に進めるな」などと怒号が飛び交う中で議案の採決が行われた。総会終了後も納得がいかない数百人が残り、「質問はすべて聞け」「USENに乗っ取られるぞ」「金返せ」などと平松社長らに迫った。一部が柵を乗り越えてガードマンに制止されるなど、一時騒然とした。

photo 幕張メッセの9〜11ホールを使って開かれた臨時株主総会。謎のマスクマンが現れ、各社が取り囲む

 総会は午後2時4分に開始。まず証券取引法違反事件についての社内調査の結果を報告し、偽計取引と風説の流布、架空売り上げの計上による有価証券報告書の虚偽記載について、東京地検による起訴事実をほぼ認めた。

 平松社長は「二度と同じ過ちを繰り返さない体制を構築する」と話し、堀江貴文前社長ら一部の取締役に情報と権限が集中していたコーポレートガバナンスの改革に取り組んでいることを強調。弁護士ら有識者による外部調査委員会が旧経営陣の責任について調査し、答申に基づき、新取締役会は旧経営陣に対し損害賠償の請求も検討するとした。

 今後はポータルサイト「livedoor」などのメディア事業、ファイナンス事業、弥生やターボリナックスなどのビジネスソリューション事業の3領域に注力する方針だ。

 平松社長は「ポータルlivedoorの魅力をいかに高めるかが浮沈にカギを握る」としてさらに経営資源を投入していく考えを示した。これまでは「Yahoo!に追い付け追い越せ」と規模の拡大を目指してきたが、今後は質の向上にも注力。国内最大手のブログサービスなどを抱える強みをいかし、「Web2.0」と「ロングテール」の流れに対応していくという。

 証取法違反事件後、livedoorのユニークユーザー数はむしろ増加傾向にあるという。ただ広告売り上げは半分以下に減っており、「広告主や代理店からは『みそぎが必要』と言われた」という。

 ファイナンス事業は、証取法違反で有罪判決が確定した場合、規定により証券会社株式の20%以上の保有が認められなくなる。このためライブドア証券を中心としたファイナンス事業一括での売却を検討する。売却先として複数が名乗りを上げているが、現時点では明かせないとした。提携解消を求めているライブドアオートは「コア事業とは関係が薄い」として株式を売却する方針。

 株主からは、USENの宇野社長の利益相反を指摘する質問があったが、平松社長は「宇野氏の就任はUSENとの提携を成功させるために必要。利益相反に当たる場合、取締役会決議には参加できないことになっている」とした。

 筆頭株主の堀江前社長は出席せず、新経営陣が提案した案について支持する委任状を提出したという。平松社長は堀江前社長について「ここまで混乱に陥れた責任がある。有罪か無罪かに関わりなく復帰はない」と断言した。株主からは「不祥事を起こしたからといって子どもを見捨てるわけにはいかない」と何らかの形で事業に関わらせることで責任を果たさせたらどうか、という意見も出た。

 このほか、株主からは「株主総会が平日の昼間では出席できない」との批判や、株式の併合を求める意見が出た。また「事件後、東証のシステムはダウンしたがlivedoorは止まらなかった。社員は誇りを持ってほしい」「新経営陣は萎縮することなく頑張れ」と励ます声もあった。

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