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“俺ラジオ”作れる「Last.fm」が日本進出

» 2006年06月30日 08時23分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ユーザーの好みに合いそうな楽曲を自動で探し出し、ラジオのように次々に流してくれる――そんなサービスがこの夏、日本に上陸する。英国の「Last.fm」で、同名の運営企業がエキサイトと提携し、7月中旬に日本語版を公開する。

画像 Last.fm

 Last.fmは、楽曲再生リストを中心にしたSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の老舗で、2003年にスタートした。現在は英語版のみでユーザーは約200万人いるという。

 専用アプリケーションをダウンロードすれば、PCやiPodで再生した楽曲リストをネット上に送信・共有できる仕組み。1日あたりの楽曲再生数は約1000万回にのぼる。

 友人の音楽の趣味を知ることができるほか、音楽の趣味が似たユーザーを探してコミュニケーションできる。ランキング機能も充実しており、ここ1週間によく聴かれた楽曲や、アーティストごと・アルバムごとに再生回数の多い楽曲をランキング表示したりできる。

画像 アーティストごとのリコメンド機能も。画像は、宇多田ヒカルの曲を聴いている人が、他にどんなアーティストの曲を聴いているかというリスト

 ここまでなら、「音ログ」(2004年2月〜)や「mixiミュージック」(2006年6月〜)など国内の他サービスも似た機能を持っている。Last.fmがこれら2サービスと異なるのは、「楽曲をストリーミングで聴ける」「ユーザーが好みそうな楽曲をリコメンドしてくれる」点だ。

 楽曲は、1曲ごとにストリーミング再生できるほか、ネットラジオのように連続再生も可能だ。Last.fmが権利を取得していればフルコーラスを再生。それ以外は30秒間だけ試聴できる。

 リコメンド機能は、Amazonと同じような仕組み。ユーザー同士の楽曲再生リストをマッチングし、好みが似ている他のユーザーが聴いている楽曲をリコメンドする。リコメンド楽曲と、自分が好みの楽曲とを混ぜ、ラジオのように再生することも可能だ。

 再生中に、好きな曲なら「LOVE」を、嫌いな曲なら「skip」(飛ばす)、「BAN」(2度と聞かない)をクリックすれば、評価を学習して次のリコメンドに生かしてくれる。他ユーザーの楽曲リストを聴くこともでき、同様に評価できる。

楽曲の“ロングテール”を

 「楽曲に出会える場が欲しかった」――音楽好きを自認する同社COO(最高執行責任者)のマーティン・スティクセル氏は語る。

 「インターネット上にはいろんな曲があふれていて、楽曲を入手するのは難しくない。しかしどの音楽が自分に合っているか選び出すのは難しく、Googleで何度も検索したりして探さねばならなかった。Last.fmなら、Google不要で好みの音楽にたどりつける」

 プロモーションに悩むレコードレーベルにもメリットがあるという。Last.fmのリコメンドの仕組みを活用すれば、その曲を気に入ってくれるユーザーに聴いてもらいやすいためだ。楽曲が良くても、マイナーなために広告費をかけられなかったり、メディアに注目されなかったりするアーティストのプロモーションに力を発揮するという。

 とはいえ、自社楽曲の無料配信を渋るレーベルも多い。「レーベルの社内では常に対立がある」――自身も以前小さなレーベルを運営していたというスティクセルCOOは言う。「プロモーション担当者は『無料でも多くの人に聴いてほしい』と思い、販売担当者は『無料では渡したくない』と思っている」

 しかしいずれは、ネットラジオでの無料配信が、プロモーションの当たり前の手法として根付くとスティクセルCOOは信じている。

 「1920年代にラジオが登場した際、米国のラジオ局はRIA(米レコード協会)に、『ラジオで無料で流せば誰もレコードを買わなくなる』と告訴されたが、今はラジオで流すことがプロモーションの基礎になっている。ネットラジオもそうなるだろう」

 現在、リコメンド機能でフルコーラス再生できるのは、著作権フリーの曲と、Last.fmが契約したメジャーレーベル4社を含む世界1万レーベルの50〜100万曲。ライセンス契約していない楽曲に関しては、30秒間の試聴のみ可能だが、フルで再生できる曲を増やしたい考えだ。

ビジネスモデルは

 収益は、サイト内のバナー広告やアドセンス広告と、音楽配信やCDなどのアフィリエイト広告、有料(月額約300円)の付加機能から得ている。収支は「最近まで利益が出ていたが、業容を拡大したため今はマイナス。すぐプラスに持って行けるだろう」としている。

 2人で設立した同社だが、スタッフは現在約20人。4月には、欧州のベンチャーキャピタルのIndex Venturesや伊藤穰一氏などから投資も受けた。「設立当時は投資家からは見向きもされず、『クレイジー』と言われた。今はやっと投資してもらえるようになった」

 日本進出は、同社の海外展開第1弾。エキサイトと提携して7月中旬から始める。「日本には音楽ファンが多く、音楽プロダクションがたくさんある。埋もれているすばらしい楽曲も多い」とし、日本市場に期待をかける。

画像 「moreオンガク!」とスティクセルCOO

 日本語版も、楽曲データベースは英語版と共通。4700万曲以上の英語版データに、日本語楽曲を加えていく。エキサイトのIDで利用できるようにするほか、国内のISPなどにシステムやAPIを提供する。

 リコメンド機能でストリーミング配信する楽曲については、エキサイトがレコードレーベルと交渉するが、サービス開始時から配信できるかは「未定」としている。

 国内には、mixiミュージックなど競合とみられるサービスがあるが、スティクセルCOOは「競争は悪いことではない」と余裕の構え。「mixiは、音楽以外にもいろいろなことをやっているが、Last.fmは音楽に集中したサービス。音楽を聴く人に特化して訴求していきたい」としている。

 Last.fmの語源は「最後に行き着くFMステーション」という意味。「音楽が好きな人全員が、最後にここにたどり着いてくれれば嬉しい」

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