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どの情報を信じますか?

» 2006年09月04日 19時49分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 先週のアクセストップは、Wikipediaの「楽天証券」の項目で、同社の社員が自社に不利益な情報を削除した、という件に関する記事だった。

 Wikipediaは誰でも編集できる百科事典だが、直接の利害関係者が、自分に有利なように内容をねじ曲げることは、ルールで禁止している。中立的な事実を、自分の利益のために不自然に削除しようとすると、今回のように「炎上」するし、明らかに偏った内容の記述は、別の編集者に削除されることもある。

 その点、個人のブログなら、自分に有利なことを書いても、第三者に削除されることはまずない。マスコミに取り上げられるような有名人なら、自分に不利な報道があった場合、ブログで反論して「火消し」することもできる。

 しかしその報道が事実で、実は「火消し」のほうが誤っているということもありえる。誰が言っていることが本当か探り当てるのは、ユーザーの判断にかかっている。

 正確に報じたはずの記事について、当事者から「火消し」されたという経験が、記者にも2回ほどある。1回めは、今日初公判があった、ライブドア前社長・堀江貴文被告に関連する記事。2回目は、オーマイニュース日本版編集長の鳥越俊太郎氏に関する記事だ。

 昨年1月、記者はライブドアのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「フレンドパーク」(現在は「フレパ」)の担当者のインタビュー記事を掲載した。その中で「ユーザー増の切り札は、完全招待制の廃止。1カ月後程度には、既存ユーザーからの招待がなくても、ライブドアIDを持っていれば簡単に参加できるようにする計画だ」と書いたのだが、これに対して堀江前社長が自身のブログに「自由参加型にはしない。報道はガセだ」といった内容のエントリーを記した。

 記者がインタビューした担当者は確かに「招待制は廃止する」と言っていた。記事にこう書いても、当社や記者個人には何のメリットもないので、聞いていないなら書くはずがない。取材に同席し、掲載後に内容をチェックしたはずの同社の広報担当者からも、修正依頼はもらっていない。

 結局同サービスは、昨年11月(インタビューの10カ月後)に自由参加型に移行した。

 似たようなことが、9月2日に行われた、市民参加型ネット新聞「オーマイニュース」とブロガーのシンポジウムでも起きた。記者はシンポに出席していなかったのだが、鳥越俊太郎編集長が、記者が書いたオーマイニュースに関するインタビュー記事の内容について「そういう風には言っていない」と語ったようだ。

 当該の記事は、7月10日に掲載した「ブログでも2chでもない「市民新聞」とは――オーマイニュース鳥越編集長に聞く」。この中で記者は、鳥越編集長の発言として「2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る」と書き、これがきっかけともなり、オーマイニュースの準備ブログが炎上した。

 鳥越編集長はこの記述に関して「インタビューのとき、たしか『一部の』と言ったつもりなんだけどね、(記事では)2ちゃんねる全体が全部ごみ溜めみたいになって」と語ったようだ(オーマイニュースの該当記事)。

 だがインタビューの際、鳥越編集長は「一部の」とは言っていない。該当部分のテープ起こしをそのまま掲載する。

 2chはネガティブ情報の方がどちらかというと多い。2ch見ていると罵詈雑言が多い。それはそれで、人間の負の部分のはけ口だから、ごみためとしてそういう部分があっても仕方ない。ぼくらはごみためでは困るので、日本の社会を良くしたい、変えたい。変えるための1つの場にしたいという気持ちがあると思う。

――「一部の」に該当すると思われる表現は、「『どちらかというと』多い」だと思うが、これは記事にも反映している。「罵詈雑言が多い」という表現はやや極端で、無用な炎上につながりかねないと感じたため、記事では削った。それ以外の発言はそのまま掲載している。

 この記事も、同席した広報担当者に掲載後にURLを送信し、掲載確認をもらっているが、内容に関する修正依頼などはなかった。

 誰でも情報発信できるネット時代。発信手段は今後も増え、報道の当事者による発信も増えていくだろう。2ちゃんねる管理人のひろゆき氏は「情報の真偽は読む人が判断すればいい」と語っている

 あふれる情報の中でどれを信じるべきか――受け手の情報リテラシーが、ますます重要になりそうだ。

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