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2秒でPCがオン──“家電”を目指すVistaの新機能

» 2006年09月05日 18時06分 公開
[ITmedia]

 来年1月に発売予定のWindows Vistaでは、電源管理機能が大幅に強化される。新たに搭載される「スリープ」モードは、従来の「スタンバイ」と「休止状態」を併用することで省電力モードの利便性を高める。Vistaではスリープの使用を基本的なスタイルにしてもらい、PCをスイッチオンで即座に利用できる家電的な利用の普及を進めていく考えだ。

 スタンバイ、休止状態ともPCを省電力化する切り替え機能。作業中の状態・データを保存した上で省電力モードに移行し、次にオンにした時に以前の状態に復帰させる。作業中の状態をメインメモリに保存するのがスタンバイで、HDDに格納するのが休止状態(ハイバネーション)だ。

 メモリ(DRAM)にデータを保存するスタンバイは省電力モードからの復帰は早いが、メモリなどが常に電源を必要とする分、停止中の消費電力は若干多くなる。一方、ハイバネーションはHDDにデータをしまっておくため、省電力モード中の消費電力を最小化でき、データの安全性も高い。だが復帰時にはHDDからデータを読み出すため、やや時間がかかる。

photo ノートをスタンバイにしておいたつもりでも、アプリケーションがこれを拒否し、バッテリー切れになっていた──ということはVistaではなくなる。デフォルトではアプリやサービスの要求より省電力モード入りを優先する設定(変更も可能)
photo デスクトップのスリープ

 Vistaが採用するスリープモードは、スタンバイと休止状態のメリットを兼ね備える。スリープモードは、PCの起動中に電源ボタンを押すことで切り替えが可能だ。

 デスクトップとノートでは働きが異なる。デスクトップでは、スタンバイと休止状態を常に併用する。つまりスリープモードに入る直前のデスクトップイメージは、常にメモリとHDDの両方に格納しておく。通常の復帰時は、メモリからデータを復元して素早く行う。停電やコードを引き抜いてしまった場合など、電源に障害があった場合でもHDDから確実に復旧する仕組みだ。

 Windows Vistaロゴ認定PCの条件として、スリープからの復帰時間は2秒に定めた。同社Windows本部パートナーマーケティング部の中里倫明シニアテクニカルエバンジェリストは「家電と同様に電源オンオフができるようになっている。デスクトップではスリープを多用してもらいたい」と話し、家電的な利用をユーザーにすすめている。

大幅に強化されるモバイル向け電源管理

photo ノートのスリープ

 ノートでスリープに入った場合は、まずスタンバイして作業中データをメモリに格納。その後一定時間(デフォルトでは18時間)経過した場合、データをHDDにも保存する休止状態に移行し、バッテリー切れに備えてデータを安全に保持する仕組みだ。「ノートはバッテリーを積んでいるので電源コードが引き抜かれても大丈夫」(中里氏)だが、バッテリーが足りなくなった場合にも備える──という二段構えの仕組みになっている。

 Vistaでは、ノートPCを想定した電源管理機能が大幅に強化される。省電力設定は「バランス」「省電力」「高パフォーマンス」から選べるようにし、状況に応じた電源設定を容易にした。さらにディスプレイやHDD、ワイヤレス通信など個別のデバイス・機能についても細かく設定できるようになっている。

photo 省電力の設定画面

 HDDにフラッシュメモリを搭載した「Windows ReadyDrive」もノートの省電力機能の1つ(関連記事参照)。よく使うデータはフラッシュメモリに格納しておくことでHDDへのアクセス減=省電力化が可能な上、よく使うアプリケーションをメモリに入れておくことで起動時間を短縮する「Windows SuperFetch」機能でも威力を発揮する。

photophoto ReadyDriveは、HDDのスピンアップ時でもフラッシュからデータを読み込めるため、システム起動時間を早められる

 ノートのメモリを容易に拡張できる「Windows ReadyBoost」では、USBメモリや各種メモリカードなどのリムーバブルメモリをSuperFetchのキャッシュとして使用可能だ。アプリケーションをリムーバブルメモリに保存して高速に起動したり、よく使うデータを事前に読み込んでおいて応答性を向上させられる。安価になってきたフラッシュメモリを本体メモリの代替に使えるようにする仕組みで、メモリの増設が難しいノートで特に有効だ。

photophoto HotStartは、PCのOSを起動していなくてもテレビやプレーヤーを使えるようにする機能。日本の家電PCでは既に実現している機能だが、OSを複数搭載するなどの必要がなくなる

 これらはVistaの全バージョン(SKU)に搭載される基本機能だ。こうした機能強化は、米国でモバイルPCの普及が急速に進んでいることが背景にある。「米国ではモバイルPCの成長率が年率20%。デスクトップの3倍の伸び率だ」(Windows本部ビジネスWindows製品部の飯島圭一シニアプロダクトマネージャ)。モバイルPC分野の成長を受け、MicrosoftはWindows PCの利用分野として「ビジネス」と「ホーム」に加え、Vistaから「モバイル」も独立して追加。「大きな成長分野としてリソースを投入していく」(飯島氏)考えだ。

 日本では既にノートの出荷台数がデスクトップを上回っている「ノート成熟市場」だが、飯島氏は「ほとんどの人がノートを使っていて、多用な使い方がされている。Vistaのモバイル関連機能は外に持ち出す場合だけではなく、家庭内で持ち運ぶ『家庭内モバイル』でも利用できる」としている。

 Windows Vistaは9月1日にRC1(リリース候補第1版)を公開した。発売は来年1月の予定(関連記事参照)

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