ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

2007年もノートPCが躍進――売上高でデスクトップ超えの見通し(2/2 ページ)

» 2006年12月21日 17時36分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK
前のページへ 1|2       

ノートPCの成長を支える先進国市場の購買力

 フィアリング氏は、こうした売上高の変化には、ノートPCの利幅の大きさと価格の高さが大いに寄与しているが、ノートPCの市場の拡大は、北米や欧州、オーストラリアといった成熟市場地域における中間層の購買力に大きく支えられていると指摘する。

 フィアリング氏は、2007年末までにこれらの市場で、ノートPCの出荷台数がデスクトップPCを抜くと予測している。世界のほかの地域では引き続きデスクトップPCの方が多数購入され、ノートPCが出荷台数でデスクトップPCを上回るのは早くても2010年だという。

 「ノートPCは普及に弾みがついている」とフィアリング氏。「人々はノートPCが購入しやすくなったと感じており、これからもずっと買い続けるだろう」

 ノートPCの売上高がデスクトップPCを上回る勢いであることは、PCメーカー数社の最近の四半期決算報告でも見て取れる。HPは同社の第4四半期(8〜10月期)決算を発表した際、デスクトップPCの売上高は横ばいにとどまったが、ノートPCは24%の増収となったことを明らかにした。

 Dellの売り上げ動向も同様だ。

 同社の第3四半期(8〜10月期)決算で、ノートPCの売上高は前年同期比17%増の39億ドルとなった。デスクトップPCの売上高はこれより多い47億ドルだったものの、前年同期比では5%の減収だった。

 アナリストは、ノートPCが人気を博し、デスクトップPCの比重が低下している理由はさまざまだと述べている。

 ノートPCの急成長は消費者市場がけん引役となっている面があり、その背景には、PCにモビリティを求めるユーザーがますます増えていることがあると、シム氏は語る。HPはこの市場に重点を置いて成功しているが、以前は消費者向けPCの販売でトップに立っていたDellは、企業向け販売に傾斜し過ぎてノートPC市場で勢いを失ってしまった、と同氏は説明する。

 Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏も同様の傾向を指摘する。

 「わたしも、モバイルコンピューティングへの本格的なシフトが起こっており、そのシフトは2002年に実質的に始まったと考えている」とキング氏。「無線インターネットホットスポットが拡大しており、モバイルコンピューティングを活用するビジネスプロフェッショナルも増えてきた。1990年代が携帯電話の10年だったとすれば、今はノートPCの10年だと思う。空港からアイスホッケー場までさまざまな公共スペースで、キーを叩いている人を見かける」

 さらに、IntelAMDの新しいノートPC向けプロセッサの搭載などにより、ノートPCの処理能力や性能は、デスクトップPCとの差が縮まってきている。

 しかし、シム氏やキング氏などのアナリストは、こうした根本的な変化が進んでいるものの、デスクトップPCが活躍する余地はまだ豊富にあり、企業では特にそうだと考えている。キング氏は、労働力の一部はモバイル環境で働いているが、従来型の企業が労働力の大きな部分を雇用しており、彼らは週40時間デスクワークを行うが、仕事を家に持ち帰ったり、出張したりする必要がない人々だと話している。

 またキング氏は、IT管理者は新しいPCを購入する場合、デスクトップPCをノートPCに置き換えるのではなく、予算に応じて両者を組み合わせて購入すると考えている。

 企業の購入傾向は、流通チャネルにも部分的に左右される。フィアリング氏は、VAR(付加価値再販業者)は顧客にノートPCの購入を促していると指摘する。ノートPCは平均販売価格が高く、利益率が高いためだ。さらに、ノートPCは平均使用期間が約3年であり、デスクトップPCの4年より短いことから、VARはユーザーに、使用期間を延ばすためという目的を掲げて保守サービスを提案しやすい。

 一方、MicrosoftのVistaが市場にどのような影響を与えるかという問題もある。この新OSが、企業向け市場全体でハードウェアの買い替えを促進するかどうかをめぐっては、アナリストの見方はさまざまに分かれている。アナリストによると、ほとんどの企業は、11月30日にリリースされたVistaの企業向けエディションを、すぐには導入しない見通しだ。

 Vistaの消費者向けエディションは2007年1月30日にリリースされることになっている。

 シム氏は、ノートPC事業は消費者向けが柱となっており、市場の気まぐれに左右されやすいと見ている。新しいデザインのトレンドや平均販売価格の変動に伴い、再び市場構造が変化する可能性もある。

 「ノートPCのシェアが50%に達したらどうなるだろう」とシム氏は問い掛ける。「100%になるまでシェアが伸び続けるかといえば、そんなことはないと思う。今後も市場には、デスクトップPCのテリトリーが常にある。デスクトップPCは、企業市場では主流を占め続けるだろう」

前のページへ 1|2       

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.