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2006年のIT業界を振り返る――ヒットもあれば空振りも(2/2 ページ)

» 2006年12月25日 09時00分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK
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ゲイツ氏とマクニーリー氏が引退

 IT産業の礎の建設に携わり、そしてこの20年余りの期間の大半を通じてライバルとして敵対してきた2人の大物であるMicrosoftのゲイツ氏とSunのマクニーリー氏が2006年、それぞれの会社の経営リーダーの立場から退いた。

 Microsoftの共同創業者であり、会長兼チーフソフトウェアアーキテクトという肩書きを持つゲイツ氏が6月に語ったところによると、同氏は2008年に同社の経営を退き、レイ・オジー氏とクレイグ・マンディ氏の2人のCTO(最高技術責任者)がソフトウェア部門の責任者としての職務を引き継ぐことになる。Bill and Melinda Gates Foundationを通じた慈善事業に専念したいというのが引退の理由だ。

 一方、マクニーリー氏は、自身がSunのCEO職から退き、ジョナサン・シュワルツ社長を後継者にすると発表した後、権限の大部分をシュワルツ氏に引き渡した。過去2年間にわたるSunの大胆な戦略(AMDのOpteronチップの採用、Sunの技術の大半をオープンソース化するという決定など)を指揮してきたのがシュワルツ氏であるため、この人事も驚くことではなかった。

退役軍人省のデータ盗難

 数百万人分の退役軍人と現役職員ならびに一部の配偶者の名前、社会保障番号および誕生日が保存されたノートPCとHDDが5月に盗まれた。この事件を機に、セキュリティ上の機密データが従業員のノートPCに保存されているという問題が大きくクローズアップされることになった(関連記事)

 このノートPCと外付けHDDは、メリーランド州にある退役軍人省職員(名前は公表されていない)の自宅から盗まれたもので、この職員は個人的なプロジェクトのためにデータを自宅に持ち帰ったという。盗まれたPCとHDDは1カ月後に発見され、3人の十代の若者が窃盗容疑で逮捕されたが、退役軍人および軍関連団体はデータが盗まれたことに対して怒りをあらわにした。この問題を調査した退役軍人省の調査官は、組織内でのずさんな記録管理ならびに盗難届け提出後の職員の対応の不手際を批判した。

Oracleの買収熱は冷めず

 2005年のOracleの激しい買収熱も2006年には冷めるだろうという考え方は、見事に打ち砕かれた。同社は1月早々Siebel Systemsを買収し、今年も買収で忙しい1年になることを印象づけた。

 Oracleは今年、13社の企業を買収した。これは昨年の買収件数と同じである。1月の360Commerceを皮切りに、4月にはPortal Software、11月にはStellentを買収するなど、Oracleは大小さまざまな企業を飲み込んでいった。自社のエンタープライズアプリケーション製品を充実させるのが同社の基本的な狙いだ。

 一連の買収では、Oracleのミドルウェア技術を強化するために狙われた企業もあれば(HotSipやSunopsisなど)、データベース分野をターゲットとした買収もあった(SleepyCat Softwareなど)。

PC事業でHPがDellを抜く

 市場調査会社のGartnerおよびIDCによると、2006年7〜9月期、HPがDellを追い抜いて世界第1位のPCベンダーになり、2003年10〜12月期以来Dellが維持してきた地位を奪い返した。公表された数字は、単に業界での順位を示すだけでなく、両ライバルの立場の逆転を浮き彫りにするものであった。

 フィオリーナ元CEOの在任中に経営不振にあえいだHPは、ハード氏が2005年に経営の舵取りを引き継いで以来、事業の集中と合理化を推進した。その成果は2006年に現れ、第4会計四半期には7%の売り上げ増を記録するなど、年間を通じて大幅な増収を達成した。

 対照的に、Dellにとっては2006年は苦難の1年だった。売り上げ拡大のペースが鈍化する一方で、会計処理をめぐる証券取引委員会の調査や、同社の一部のノートPCに搭載された410万個のソニー製バッテリーのリコール(ほかにも数社のOEMがバッテリーを回収した)、以前から続いている顧客サポートの問題などで悩まされた。

Vistaがデビュー

 MicrosoftがついにVistaを企業向けに出荷したのは、今年11月の最終日のことだった。Vistaは、5年前に登場したWindows XP以来、同社のOSの初の新バージョンとなるもの。しかし、11月30日のリリースに向けた数カ月間に大きな盛り上がりが見られたのは確かだ。

 Vistaのリリース(MicrosoftはOffice 2007とExchange Server 2007も同日にリリースした)に際しての一般的な反応はさまざまだった。確かに、新OSはクールな新機能を備えていた。しかし、企業でのVistaの普及は急速に進むのか(一般的なタイムフレームは12〜18カ月とみられる)、また既存のハードウェアはVistaにどの程度対応できるのかといった疑問もあった。業界アナリストの中には、Vistaのコンシューマ向けバージョンのリリースが来年1月末になったことで、Microsoftはこのクリスマス商戦で損をするだろうと指摘する人もいた。

ほかにも注目すべきニュースが……

 2006年もデータセンターの環境対策が続けられ、チップメーカーおよびOEM各社は、エネルギー効率に優れた製品を次々と投入した。IT管理者と施設管理者との間の溝を埋める取り組みが進められる一方で、米国議会をはじめとする政府機関もこの問題に強い関心を示した。

 インターネットの中立性をめぐる問題は議会でも審議され、通信業界大手各社は高度なサービスに対して追加料金を請求できるのか、それてもすべてのインターネットトラフィックを平等に扱うべきなのかという判断が政治家に求められた。

 一方、GoogleはYouTubeを16億5000万ドルで買収し、既存のマスメディアのビジネスモデルに真っ向から挑む姿勢を示した。

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