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SED生産はキヤノン単独事業に 量産計画見直しへ

» 2007年01月12日 16時52分 公開
[ITmedia]

 キヤノンは1月12日、東芝と設立したSED((表面電界ディスプレイ)パネル生産会社について、東芝保有の全株を買い取り、完全子会社化すると発表した。SEDパネルは両社で共同生産する予定だったが、特許訴訟が難航しており、計画を仕切り直してキヤノンが単独事業として行う。

 SEDテレビは「計画通り今年10〜12月期に国内で販売を開始する」(キヤノン)としているが、本格的な量産計画はキヤノンが見直すとしている。

photo 優れた画質に期待がかかるSEDだが……(昨年10月のCEATECで)

 キヤノンが完全子会社化するのは、両社が2004年10月に設立したパネル生産会社「SED」(神奈川県平塚市)。ほぼ折半出資だったが、キヤノンの持ち株数が1株多かった。パネル量産拠点は東芝の姫路工場(兵庫県太子町)とし、約2000億円を投じて今年7月にも量産を開始する計画だった。

キヤノンの株価チャートキヤノンの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)東芝の株価チャート東芝の株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 だが、関連技術のライセンス契約をキヤノンと結んだ米Nano-Proprietaryが、「SED社はキヤノンの子会社ではないため、SED社にはライセンスは移せない」と主張し、2005年4月に米国で提訴。キヤノンは米連邦地裁に対し、SED社はキヤノン子会社だと認めるよう求める動議を提出したが、昨年11月に却下された。

 このため「米国訴訟の長期化が予想される」(キヤノン)として東芝と協議。ライセンス問題を解決しやすくするため、SEDパネル生産をキヤノン単独に切り替えることに決めた。SED社の福間和則社長は東芝執行役常務だが、キヤノンが完全子会社化した翌日の1月30日付けでキヤノンに転籍する予定。

SED見通しに影響

 SEDテレビは再三にわたって発売時期が延期されてきた。東芝の西田厚聡社長は「50年に1度の技術。撤退はない」と強調してきたが、昨年末には「業務用に方向変換する」と発言したと報道され、東芝が「民生中心の既存方針の転換はない」と否定する一幕もあった(関連記事参照)

 薄型テレビをめぐっては、プラズマ、液晶陣営とも大型化とコスト効率の向上を図って巨額の生産設備投資を継続しており、最終製品の価格は下がる一方。SEDテレビが計画通り今年末に発売されたとしても、量産計画の見直しの影響から市場に出回る数は少量に限られると見られる。テレビ市場への進出を悲願としてきたキヤノンだが、事業の見通しへの影響は避けられない。

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