米YouTubeは先ごろ、著作権侵害訴訟の頻発を阻止するための取り組みにおいて、大きな前進を果たした。ビデオ指紋と呼ばれるビデオ認識技術を2007年秋までに実装する計画を明らかにしたのだ。
このビデオ認識技術は、同社が現在、著作権を侵害しているオーディオコンテンツの識別に使用しているAudible Magicの技術をビデオコンポーネントで補完することになる。この技術は、アップロードされた動画をスクリーニングし、デジタル指紋技術を使って、著作権で保護されたコンテンツにフラグを付け、無許可でアップロードされている場合には削除するというもので、動画のアップロード自体は阻止しない。
Sterling Market Intelligenceのアナリスト、グレッグ・スターリング氏によると、この技術は必要なステップではあるが、YouTubeの親会社であるGoogleがなぜ、動画がYouTubeに完全にアップロードされる前にスクリーニングを行わずに、アップロードが完了してからスクリーニングを行う方法を選んでいるのかは定かではない。
「彼らがこの問題に非常に積極的に取り組むつもりであるのなら、アップロードをスクリーニングするはずだ。だが、彼らはおそらく、微妙なバランスを保とうとしているのだろう。YouTubeの売りは、使い勝手の良さと動画の迅速なアップロードだからだ。そうした利点がそがれるようなら、政策的には問題となるだろう」と同氏。
またスターリング氏は、Audible Magicがビデオコンポーネントを提供しているにもかかわらず、Googleがそれ以外の技術を選んでいる点にも注目している。
「わたしに思い付くのは、Googleが自社で開発した技術の方が優れていると考えているか、あるいは、そうした機能を自社で所有したがっているかということぐらいだ。なにしろ、指紋技術にしても、ほぼリアルタイムでの著作権侵害の識別にしても、Audible Magicの技術には、同じような考え方が採用されている」と同氏。
だがYouTubeがこうした技術を実装することのビジネス上の意義は大きく、単に訴訟の波を食い止める以上の効果がある、とArts and Technology Law Groupの創始者パートナーの1人である弁護士のグレゴリー・ルチック氏は指摘している。
「Googleのビジネスモデルは広告収益であり、GoogleにとってYouTubeは広告を販売するための新たな不動産にすぎない」と同氏は語り、この取り組みはGoogleとYouTubeにとって商談でのアピールポイントとなり、コンテンツオーナーには、少なくとも海賊行為の問題には対処済みであるとの安心感を与えられると指摘している。
「この取り組みにより、訴訟が減るというよりも、取引の成立が増え、コンテンツオーナーやパートナーが唱えるであろうあらゆる異議に対して迅速に対処できることになる」とルチック氏。
スターリング氏とルチック氏はいずれも、YouTubeの取り組みを「生き残りと繁栄につながる行動」ととらえている。なぜなら、動画はオンラインの広告メディアとして急成長を遂げており、動画サイトの中でYouTubeの人気は群を抜いているからだ。
「人々が自分の話を公開したいと思う限り、YouTubeはそのための場を提供するだろう。そして、Googleは引き続き広告の販売で利益を上げるだろう。彼らは、そのために成すべきことを実行している」とルチック氏は語っている。
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