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「Mac版まだ?」「自分の声で歌えない?」――VOCALOID、よくある質問

» 2008年03月17日 22時07分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「Mac版まだ?」「自分の声でVOCALOID、作れない?」「読み上げソフトに応用できない?」「亡くなった歌手の歌を再現したいんだけど」――

 「初音ミク」に使われている音声合成ソフト「VOCALOID 2」を開発したヤマハの剣持秀紀さんが3月17日、デジタルコンテンツ協会のセミナーで講演し、VOCALOID関連でよく聞かれるという質問に答えた。

 VOCALOIDは、人の声から取り出した音の「素片」をつなぎ合わせ、歌声を合成するためのヤマハのソフトだ。合成エンジン部分を外部企業(クリプトン・フューチャー・メディアなど)にライセンス。ライセンシーが声のライブラリを作って組み合わせ、「初音ミク」のようなソフトとして販売している。


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Mac版は「まだ」

 VOCALOIDシリーズはWindows専用ソフトで、Mac版が切望されてきた。「Mac版のニーズは認識しているが、開発の優先順位上では後回しになってしまっている。いつか、どこかで出したいのだが……」と剣持さんは言う。

自分の声で音声合成「できません」

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 VOCALOIDは、人の声から取り出した音声の素片を、周波数領域で接続・加工することで歌声を生成する仕組みだ。例えば「sin」という音なら、「s」「s-i」「i」「i-n」「n」という5つの素片を接続して合成する。

 日本語音声ライブラリを作るには、500種類の音素の組み合わせを録音する必要あり、専用に作られた呪文のような歌を歌わねばならない。「ライブラリを作るには1カ月〜3カ月もかかかる。自分の声でライブラリを作りたいというご質問には『できません』と答えている」

 亡くなった歌手の歌声をVOCALOIDで再生できないか――そんな要望も多いというが、そのためには(1)ボーカルのトラックが残っていて、(2)そのトラックが500種類もの音素をすべてカバーしている必要があり、不可能に近いという。「残されたボーカルトラックだけでライブラリを作る方法は、研究していきたい」

読み上げソフトにはならないが……

 読み上げソフトへの応用は「できない」という。VOCALOIDは歌うために最適化したソフト。発声のタイミングなども歌に合わせて細かくチューニングしてあるためだ。

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 例えば、あるメロディーに合わせて「sing」という歌詞を歌う時。人は、音の入りに合わせて母音の「i」発音しようとするため、子音の「s」は音が入る直前に発音させる必要がある。読み上げと歌で、発声のタイミングが異なるため、読み上げには応用できないという。

 ただVOCALOIDなら「歌」と「言葉」の中間にあるようなものを表現できるという。個人的にもミクの大ファンという剣持さんは、ミクで作った「メールだよー」という声を、携帯電話のメール着信音に設定している。テキストを単に読み上げたのではなく、メロディに近い“響き”がある声だ。「うちの子どもは『いってきまーす』と言うが、これは歌に近い」

ゲーム機や携帯電話には「乗せられない」

 VOCALOIDをゲーム機や携帯電話で利用できないか――そんな質問もよく受けるが、音声合成は処理が重く、ゲーム機や携帯にはまだ載せられないという。

 「歌声が不自然だ」「ユーザーインタフェースが(UI)が使いにくい」という声もよく聞くという。「すみません、努力します」

「歌う機械」の歴史は1961年から

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 剣持さんによると、世界初の「合成音声による歌」は1961年に米国のベル研究所で開発され、「Daisy Bell」という歌が作られた。

 ヤマハは97年、まずFM音源をベースにした歌声合成技術の開発を開始。音源モジュールに組み込むプラグインボード「PLG 100SG」や、ソフトウェアシンセサイザーのプラグイン「S-PLG 100SG」を発売した。

 VOCALOIDは00年に開発を開始。「歌詞が聞き取れる」「歌声が自然に流れる」「使いやすい」を目標に、新開発の「素片連結型歌唱合成技術」を活用した。「VOCAL」に、「EIDOS」(ギリシャ語で「〜のようなもの」という意味)から取った「OID」を付け、「VOCALOID」という名前にしたという。

 03年にプロトタイプを発表し、04年から順次、「LEON」「LOLA」「MIRIAM」(それぞれ英語版)と、「MEIKO」「KAITO」(それぞれ日本語版、クリプトン・フューチャー・メディアが音声ライブラリを開発)がリリースされた。

 VOCALOID 2は07年1月に発表。日本語版は「初音ミク」「鏡音リン・レン」が、英語版は「Sweet ANN」「Prima」が発売されている。

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