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新CEO 伊藤穣一氏に聞く、クリエイティブ・コモンズとは(3/3 ページ)

» 2008年04月15日 15時37分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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著作権管理団体や企業との交渉も

――CCの事務局は、具体的にどういった活動をしているのか。

 活動はいろいろあるが、1つは、各国の著作権管理団体と話し合うことだ。各国には日本音楽著作権協会(JASRAC)のような著作権管理団体があり、彼らにはとってはCCがちょっとやっかいな場合がある。

 著作権管理団体は、既に決まった契約があって、アーティストから著作権を100%移管してもらってることが多いから、CCライセンスが微妙に合わない。そういうところと交渉して、オランダやデンマークの団体とはCCのトライアルをやっていたりする。

 世界中の著作権管理団体が参加する「CISAC」の本部がパリにあるのだが、そこにわれわれが行ってプレゼンテーションしたり、逆に来てもらってプレゼンを聞いたりもする。著作権管理団体とは、現場ではいろいろと戦っている部分もあるが、大もとのところでは仲良く――とまではいかなくても、調整したりしている。

 企業とのコミュニケーションも大きな仕事の1つ。Yahoo!のバックエンドで全部CCに対応してもらったり、Yahoo!やGoogleの「高度な検索」機能に、CCの検索を入れてもらったり、MicrosoftにCC用のプラグインを作ってもらったり。そういった事業開発の部分も、CCのスタッフがやっている。

 CCのライセンスについての議論も行う。「非商用」とはどこまでか、アフィリエイトブログでの利用は商用利用に入るのか、などといった議論で、それを考えるためにチームを作ったり予算をつけたりする。

 一般のCCに加えて、別の大きなプロジェクトとしては「CC Learn」という教育向けのプロジェクトや、「サイエンス・コモンズ」という、科学技術関連のプロジェクトもあり、それぞれ国際的な本部をボストンやサンフランシスコなどに置いて活動している。

2003年から理事としてCCに参加

――伊藤さんとCCとの関わりは。

 僕は2003年にCCに理事として参加し、06年にチェアマンになったのだが、参加する以前からローレンス・レッシグ教授と面識があった。彼が1年近く日本にいた時期があり、その時いろいろ話した。僕が投資していたSix Apartのブログツール「Movable Type」でCCを選べるようにするなど、プロダクト面でのサポートもしていた。

 理事として参加した03年ごろのCCは、国際化しようとしていた。法的な枠組みはできたので、企業やインフラへの適用を進めたいという時期でもあった。当時のCCの理事は米国中心・法学部中心だったので、手伝ってくれと言われて。

 06年12月に、グローバルなプロジェクトのサポートや、企業とのやりとりを手伝おうということで、チェアマンになった。

 その後、レッシグが「Change Congress」(政府の裏金問題を追及する草の根組織)に集中したいということでCEOを退き、僕がCEOを引き受けた。レッシグは理事として残るが、現場のオペレーションを僕がやる。

 CCはタイミング的にも、多くの事業会社と組むなどある種スタートアップカンパニーのような組織になってきたので、時期的にもちょうどいいかなと。

CEOの役割は

――CCのチェアマンやCEOの役割は。

 チェアマンは、理事会メンバーとビジョンを議論したり、資金集めをする。僕がチェアマンとして一番やってきたのは資金集め。CCは年間2億円ぐらいの予算で動いているが、100%近く寄付だから、財団や個人からの寄付集めが必要。僕はMozilla Foundationのボードもやってるが、MozillaはGoogleからお金が入るから楽だ。

 CEOは資金集めも行うが、現場のスタッフから報告を受け、組織としてCCを運営する。

 費用は、基本的にはスタッフの給料や、CCプロモーション用のイベント、著作権団体との交渉に必要な旅費などで必要。訴訟の際の弁護士費用を支出することも、たまにある。弁護士費用はほとんどは寄付してもらっているが。

CCスタッフはほぼボランティア

――CCのスタッフはどういう人なのか

 CCに何らかの形で関係している人は約80カ国にいて、40カ国ぐらいには弁護士や裁判官がいるが、ボランティアに近い。

 ほとんどのスタッフは別の仕事を持っている。CCジャパンの理事は、中山信弘元東京大学教授や、弁護士の野口祐子さん、学生のドミニク・チェンさんなど。日本は日本で独立してお金集めもしている。

 各国のスタッフをコーディネートするために、インターナショナルの専業スタッフもいる。そのスタッフが各国からのライセンスをチェックしたり、どこかの国でライセンスができた際に、ワールドワイドのスタッフで訪問してローカルな人と話を進めたりもする。

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