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iPhone 3Gの壁を破るモバイルOS「Glide 3.0」

» 2008年06月10日 15時16分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 米TransMediaはAppleの次世代iPhoneの発売に先立ち、クロスプラットフォームのモバイルOS「Glide 3.0」を完成させた。

 企業ユーザー向けの中立的なモバイルOSの提供を目指し、TransMediaはGlide 3.0をAppleの待望の次世代スマートフォン「iPhone 3G」に対応させている。

 Appleのスティーブ・ジョブズCEOは第3世代携帯電話(3G)となるiPhone 3Gを6月9日にサンフランシスコで発表したところ。TransMediaの会長兼CEOのドナルド・レーカ氏はeWEEKの取材に応じたものの、Glide 3.0プラットフォームをiPhone 3Gに対応させるためにどのようにしてiPhone 3Gを入手したかについては語らなかった。

 「この件については、iPhone 3Gが実に高速に動作するということ以外、あまり詳しくは語れない」とレーカ氏。

 また「iPhone 3Gの試作機を持っているのか?」との質問に対し、同氏は「それについては話せない」と答えている。

 ただしレーカ氏は、Glideを使えばいかにしてiPhoneをモバイルコンピュータのように活用できるかについては詳しく説明してくれた。同氏によると、それが可能なのは、同期化とコラボレーションのためのユーティリティがほかでは見られないほど豊富にそろっているおかげという。Glideは1年前にリリースされた初代iPhoneにも対応するが、同氏はiPhone 3Gの実に高速な動作に感心しているという。iPhone 3Gでは企業ユーザーにも十分な速度が提供されるとみられている。

 Glide 3.0が最初に発表されたのは5月に開催されたDカンファレンスにおいてだ。Glide 3.0には、メール、ワープロ、プレゼンテーション、表計算、Web会議、カレンダー、写真編集、連絡先マネージャなど、プロダクティビティとコラボレーションに関する各種のアプリケーションが含まれている。ユーザーはこうしたアプリケーションを新しいiPhone 3Gで利用できるようになっている(Glide 3.0はそのほか75種類の携帯電話に対応している)。

 具体的には、Glide 3.0では双方向の同期化機能を介して、数百あるいは数千人のユーザーが動画、音楽、文書、写真などのファイルを同時に扱うことができ、バージョン管理機能や7段階のアクセス権限の設定機能も提供される。

 管理できるのは、閲覧できるファイルの数、ファイルのダウンロード件数、アップロードできるデータのバイト数(MバイトかGバイト単位)のほか、どのファイルをどこに転送できるか、どのファイルを修正できるか、あるいはグループ単位での権限の付与などだ。

 Glide 3.0はファイルにアクセスしている端末とOSの種類を識別し、サポートされているフォーマットに変換する。例えば、QuickTimeの動画を持っているiPhoneユーザーが、Windows Mobileを搭載するスマートフォンのユーザーとその動画を共有したい場合、GlideはこのQuickTimeファイルをその場でWindows Mobileファイルに変換する。一方、Windows MobileユーザーがQuickTimeを搭載するiPhoneのユーザーとWindows Media動画を共有したい場合には、GlideはそのWindows MediaファイルをQuickTimeに変換する。

 ビジネスシーンであれば、例えば、プロジェクトマネジャーはプロジェクトの参加者にさまざまな権限レベルを割り当てる。Glide 3.0は各種のプロジェクトに関して、細かくアップデート(バージョン)を追跡できる。アップデートはときには膨大な数にふくれ上がることもあるが、「バージョン」と呼ばれるボタンをクリックするだけで、グループの参加者が作成したどのバージョンのファイルでも閲覧できるという。

ベンダー中立

 TransMediaはできるだけ多くのプラットフォームを介してできるだけ多くのユーザーにGlide 3.0を活用してもらえるよう、iPhoneとMacの間だけでなく、Windows、Solaris、LinuxマシンとiPhoneとの間でもファイルの同期化をサポートしている。

 その狙いはメーカーやコードベースにかかわらず、あらゆる種類の携帯端末とコンピュータの間でシームレスに通信とコラボレーションを行えるようにすることだ。

 そのため、Glide 3.0ではさらにカナダのResearch in Motion(RIM)のBlackBerry、PalmのTreo、MicrosoftのWindows Mobile、NokiaのSymbianベースの携帯端末のほか、現在開発中のGoogleのAndroid端末など、各種のスマートフォンとiPhone 3Gとの同期化もサポートされる。

 「プロプライエタリな障壁や制限を各種設けるというAppleの方針とは対照的に、われわれはそうした障壁を完全に取り除こうとしている。われわれが目指しているのはクロスプラットフォーム性だ」とレーカ氏。

 そうしたクロスプラットフォームな相互運用性は、複数のモバイル端末間でファイルを一気に共有できない現状に不満を抱いているモバイルワーカーにとって恩恵となるだろう。

 レーカ氏は、モバイルOSのプロバイダー各社がこれまで熱心に築いてきた障壁を打ち破ることでTransMediaとGlideが少々厄介な立場に置かれることについては覚悟の上という。だが同氏とそのチームはGlide 3.0の中立性をアピールしている。

 またGlide 3.0は「Spider」と呼ばれる機能を特徴としている。これはファイルのロケーションを追跡するシステムであり、「スパイダー」という名前が示す通り、ファイルのすべてのコピーのロケーションとそうしたファイルにアクセスしたユーザーをピンポイントで特定できるという。またこのツールはアクセス権限を即座に変更したり、無効にしたりもできる。

 Glide 3.0はすべてのモバイルキャリアに対応しており、今登録すれば、ほぼどの端末でも利用できる5Gバイト分のオンラインストレージが無償で提供される。

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