新作小説や漫画などをWebサイトで無料公開し、書籍化や映像化などで収益化を目指す講談社の100%子会社「星海社」が7月7日、具体的な事業計画を明らかにした。読者参加型イベントを行うカフェも設立するなどWebと出版、リアルイベントを組み合わせ、新たなテキストエンタテインメントの創出を目指す。
設立は4月28日で、資本金は1000万円。人気ライトノベル「化」シリーズ(西尾維新 著)などで知られる書籍レーベル「講談社BOX」を創刊した太田克史さんが副社長を、講談社BOX創刊時に販売を担当した杉原幹之助さんが社長を務める。
まずは9月にWebサイト「最前線」をプレオープン。順次拡充し、来年1月には完成型に仕上げていく。サイトでは、小説や漫画などをすべて無料、原則DRMなしで公開するほか、新人賞を募集。Webを“発信基地”として、才能の発掘やファン獲得につなげる狙いだ。
Webデザインは、ベンチャー企業のSINAP(東京都渋谷区)が担当。人気iPhoneアプリ「ToyCamera」を個人で開発したことなどで知られる深津貴之さんをプロデューサーに迎え、使い勝手のいいサイトに仕上げていく。携帯電話やスマートフォン向けサイトも構築する計画だ。
独自レーベルの書籍を11月から順次、創刊し、Webで公開したコンテンツを書籍化。「星海社FICTIONS」「星海社文庫」「星海社コミックス」「星海社新書」を創刊する計画で、書籍の販売は講談社に委託する。「星海社FICTIONS」の売り上げを公開し、そのうち数%を新人賞の原資にするといった取り組みも検討している。
来年中にはカフェ「星海社BOOK CAFE」をオープンする計画だ。話題作の先行読書会や作家のトークセッションなど読者参加型イベントを行い、「文化の発信や活動の拠点にしていく」(太田副社長)という。
2011年度には30〜40点の書籍を刊行し、全収益の9割以上を紙の出版物からあげると見込んでいる。それ以降は、電子書籍やイベント、映像化などからの収入増を見込み、3〜5年後には紙の収入5割、そのほかからの収入を5割程度にしていきたい考えだ。
3年後に30億円、5年後に50億円の売り上げを目指す。東アジアを中心とした海外展開も視野に入れている。
新会社は、これまで雑誌が担ってきた、新作の発表や新人の発掘といった役割をWebに担わせ、「デジタルファースト、ペーパーレイター(デジタルは先に、紙は後に)」を標榜。「これまで雑誌が果たしてきた役割は今後、Webに代替されていくのでは」と杉原社長は話す。
デジタル時代の新たなテキストエンタテインメント創出も目指す。「編集者がハブとなり、作家やイラストレーター、Webディレクター、映像制作会社などさまざまな才能を掛け合わせ、Web技術を使った新しいテキストエンタテインメントを、3年以内に創出したい」(杉原社長)
講談社が100%出資で新会社を設立するのは初。野間省伸副社長はその背景を、「DRMなしでWebにコンテンツを公開するなど、講談社ではなかなかできないことを行ったり、社員の能力アップを図るため、新会社で事業を展開することにした」と説明している。
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