「どんな携帯電話も、強く握ると電波の強さを表示するバーの数は減る。しかし我々は、すべてのユーザーに満足してもらいたい」――。
米Appleが7月16日(現地時間)、米国本社で記者説明会を開催し、「iPhone 4」の“アンテナ問題”の原因と調査結果、そして対策を発表した。同時に17カ国で7月30日からiPhone 4を発売すること、ホワイトモデルは7月末には出荷することを明かした。
発売から3週間で300万台以上を販売したiPhone 4は、米国を中心に「持ち方によって電波の受信状態が悪くなる」という問題が多くのメディアで取り上げられ、対応が求められていた。こうした状況に対し、説明会に登壇したAppleのCEO、スティーブ・ジョブズ氏は、冒頭のように話し、この問題で影響を受けているのがごく一部のユーザーであること、とはいえ対策として無償でケースを配布すること、iPhone 4に満足できない人には、購入後30日以内なら全額返金することなどを説明した。
問題となったアンテナ感度の問題についてジョブズ氏は、特に欠陥はないことを改めて強調。電波の弱い場所で、iPhone 4や他社のスマートフォンを実際に強く握ってみた映像などを見せながら、強く握ればアンテナのバーは大きく減ること、さまざまなOSを採用した幅広い端末で同様の現象が起こることを説明した。
ただ、受信している電波強度の目安となるアンテナバーの数の計算式は「間違っていた」とし、正しい計算式を採用したソフトウェアアップデート(iOS バージョン4.0.1)の配布を始めた。
「携帯電話は完璧ではない。すべての端末に弱い場所がある」(ジョブズ氏)
Appleはこの問題を確認するため、電波暗室でさまざまな検証作業を実施した。また、同時にサポートセンターのAppleCareへの問い合わせなども分析。その結果、iPhone 4の電波感度について、多くの人は「かつてないほどいい」と評価していることも合わせて紹介した。
全iPhone 4ユーザーのうち、AppleCareにアンテナ感度に関する問い合わせを寄せたのはたったの0.55%しかおらず、AT&Tへの返品率も、iPhone 3GSの販売開始時が約6.0%だったのに対し、iPhone 4は約1.7%と3分の1以下の水準で推移しているという。
さらに、AT&Tが収集している通信の切断の発生回数ログを解析した結果、iPhone 4での通信中や通話中に電波が途切れた回数はiPhone 3GSとほぼ同じで、その差は100回に1回以下の水準だったという。
このようにiPhone 4のアンテナの感度がiPhone 3GSと比べて遜色ないものであることをさまざまな数値で立証したジョブズ氏は、この問題で影響を受けているのは「ごく少数のユーザー」であるという結論を導き出した。
では、iPhone 4で電波感度がここまで問題視されたのはなぜか。ジョブズ氏は1つの仮説に行き当たったという。その仮説とは、“ケースの有無による違い”だ。同氏は「確証があるわけではない」としながらも、次のように話した。
「iPhone 3GSは、iPhone 3Gからボディのデザインを変えなかったため、発売時から多くのケースが販売されていて、8割以上の購入者がケースも一緒に買っていった。しかしiPhone 4の発売時にはうまくフィットするケースがほとんどなく、Apple純正のBumperもあまりたくさん用意できなかったので、ケースが買えた人は約2割ほどだった」(ジョブズ氏)
つまり、iPhone 3GSのユーザーは、最初からケースを付けて利用することができたため、ケースなしで使わざるを得なかったiPhone 4よりも、電波感度の低下という影響を受けにくかったのではないか、というわけだ。
実際、iPhone 4のアンテナ問題を理由に「iPhone 4の購入は推奨できない」と判定した米国の消費者情報誌「Consumer Report」は、「iPhone 4の感度問題はBumperを付けることで回避できる」というテスト結果を公表している。
そこでAppleは、9月30日までにiPhone 4を購入したすべてのユーザーを対象に、ケースを1つ無償配布することにしたという。すでにBumperを購入した人には1つ分を返金する。ただBumperは現状製造が追いついておらず、品薄なこともあり、全iPhone 4ユーザーにBumperを配布することはできないため、サードパーティー製のケースも含めた複数の選択肢の中から1つ好きなケースを選べるようにする。米国以外の地域でも同様の対応を行う予定だ。
具体的な返金手続きの方法や無償ケースの入手方法は詳細には説明されなかったが、来週後半にAppleのWebサイト(オンラインのApple Store?)を通して行うことになるようだ。
なお無償配布の期限が9月30日となっているが、9月30日に無償配布の受け付けを終了するかどうかはその時点で判断するとしている。延長される可能性もある。
それでも満足できない人は、すでにスタートしている「購入後30日以内に無傷のiPhone 4を返品すれば全額返金」施策が利用できる。
アンテナ感度の問題は、ケースの無償配布という形で解決する構えだが、ジョブズ氏は説明会の最後に“もう1つの問題”にも対応中であることを明かした。それは近接センサーが適切に動作しない点だ。通話中に端末に顔を近づけてもセンサーが正常に働かず、通話が切れたりミュートになったりする事例が報告されており、この問題は解消へ向けて作業を行っているところだという。
また、出荷開始が遅れているiPhone 4のホワイトモデルは、予告通り7月末に出荷するとジョブズ氏が明言した。7月30日にはオーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、香港、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイスの17カ国でiPhone 4の販売が始まる予定(韓国での発売は延期)。先行している米国、英国、ドイツ、フランス、日本でも、このタイミングでホワイトモデルの販売が始まると思われる。
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