米Googleと米Verizonは8月9日(現地時間)、ネット中立性に関する両社の方針の具体化に向けたプランを発表した。Googleのエリック・シュミットCEOとVerizonのアイバン・サイデンバーグCEOが明らかにしたプランは、2009年10月に共同発表した原則声明に極めて近い内容となっている。今回両社が示した基本原則は、ユーザーのWebエクスペリエンスに関する最終決定権はユーザーに与えるべきだというものだ。
シュミット氏は、両社の今回の共同声明は「大きな前進」であり、「対立を招く論争」に終止符を打つものだと述べるとともに、オープンなインターネットを維持することがGoogleにとって非常に重要だとする以前の声明を繰り返した。さらに同氏は記者団に対し、先週のNew York Timesの報道は無視し、公共ポリシーに関する共同提案を読むよう要請した。同氏によると、New York Timesの記事は「完全に誤報」だという。
GoogleとVerizonはポリシーを明確にする一方で、今回の発表にはビジネス上の取引が一切絡んでいないことを繰り返し強調した。両社のCEOはさらに、料金を支払うことで優遇措置を受けるというようなこともないと繰り返した。また、通信事業者各社が顧客にコンテンツを配信するのは自由だが、こういったコンテンツは帯域を独占すべきではなく、それを許せばオープンなインターネットのトラフィックの速度低下を招くと語った。
両社は米連邦通信委員会(FCC)に対して、オープンなインターネットを保証し、“常習犯”には厳しい罰則を科すという強制力のある規則を策定するよう求めた。
「オープン性という原則は強制であるべきだとわれわれは確信している」とシュミット氏は述べた。
シュミット氏によると、両社のプランには、インターネットプロバイダーによるオープン性に反する行動を強制的に禁止するという措置も盛り込まれている。これによりトラフィックを遮断したり速度低下を招いたりするといった行為はなくなり、優遇措置を金で買うことは法律違反になるという。
VerizonとGoogleは、インターネットは今後もあらゆる合法的利用に対してオープンでなければならず、法規制を柔軟に適用することによって民間によるインターネットへの投資を促進すべきだとの考えを示した。このため両社は、インターネットの進化の可能性を損なうといった望ましくない結果につながるような過度の法規制には反対している。さらに両社は、ブロードバンドネットワークプロバイダーは、スパムやマルウェア、トラフィック渋滞、DoS(サービス妨害)攻撃などの問題に対処するために、それぞれのネットワークを管理できる必要があると繰り返し強調している。
今回の発表では、FCCおよび当事者による手続きの透明化も求めている。これまでFCCとインターネット関連組織・企業との交渉は非公開で行われ、透明性が欠落していたという。両社の共同声明、そしてシュミット氏とサイデンバーグ氏のそれぞれの発表文は、提案されたネット中立性原則にワイヤレスコミュニケーションも含めるべきだとの考えを示している。しかしサイデンバーグ氏は、ワイヤレス分野は有線の世界とやや異なり、技術、競争環境、インタラクティブ性などで違いがあると考えており、規制が多過ぎると競争が阻害される恐れがあるという懸念を抱いている。
両社は2010年1月にFCCに提出した意見書で「米国のための賢明で持続可能なインターネットポリシーの策定」というビジョンを打ち出した。両社はその中で、オープン性の維持、投資の促進、決定権と情報をユーザーに与えること、コンテンツとサービスを規制しないことが必要だと強調している。さらに同文書は、ベストプラクティスの開発、紛争の解決、標準策定機関との調整などでテクニカルアドバイザリグループ(TAG)が重要な役割を果たすと指摘している。
記者会見の席上で発表された共同ポリシー提案の中で両社は、有線ブロードバンドのオープン性に関するFCCの現在のポリシーを以前から支持しており、コンシューマーがすべての合法的なコンテンツにアクセスできるようにすることが重要だと考えていると述べている。
さらに共同声明は、コンシューマーに不利益を与えたり競争を阻害したりするような差別的行為に対する新たな強制的禁止措置も求めている。同声明によると、ブロードバンドプロバイダーが特定のインターネットトラフィックを優遇できないようにすべきだとしている。
両社はまた、インターネットエクスペリエンスに関する情報をすべてコンシューマーに提供するよう求めるとともに、提供するサービスおよびプロバイダーの能力に関して理解できる情報をプロバイダーはコンシューマーに提供すべきだとしている。
両社の提案は、Comcastをめぐる判決を受け、新たな実施規定を策定することもFCCに求めている。この規定はケースバイケースで適用され、最大200万ドルの罰金という条項も含めるべきだとしている。どういった法的枠組みによって、こういった権限をFCCに与えるかについては言及していない。
同提案のそのほかの要望項目としては、イノベーションの支援、米会計検査院がワイヤレス技術に関する最新情報を議会に毎年提出すること、農村部へのブロードバンド普及促進に向けた連邦ユニバーサルサービス基金の改革などがある。
シュミット氏によると、今回のポリシー提案の目標はインターネットのオープン性を維持し、イノベーションを可能にすることだという。同氏は、Googleが追加料金を支払ったユーザーにプレミアムサービスを提供する計画だという指摘を否定し、「Googleはオープンなインターネットに依存している」と語った。さらに同氏は、オープンなインターネットがなければGoogleはここまで成長しなかったと付け加え、「これは、GoogleとYouTubeが今後も、これまでのような素晴らしい成功のチャンスを得るために不可欠だと考えている」と述べた。
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