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なまじ知識がある人より、おもちゃ感覚でいじれる人のほうが強い難波弘之 対 野尻抱介(5/6 ページ)

» 2010年11月02日 15時27分 公開
[杜松百舌ITmedia]

松尾 個人的な質問なんですけど、その時のバイトで最初に買った楽器ってなんですか?

難波 えっと、最初がmini KORG 700Sですね。

松尾 やっぱりキーボード?

photo 73年発売のmini KORG 700(KORGのサイトより)。74年発売の700Sは16万5000円だった

難波 ええ、最初にシンセをまず買って。オシレーターが2つ入って、音が1度5度とか1度4度とか重ねられるのを待ってたんですよね。やっぱりELPっぽいのが好きで、そういうことをやりたくて。当時のコルグはまだ京王技研工業という名前でしたね。ヤマハの部品を作ってて、桜上水にプレハブの工場があって、そこまで買いに行きました。

杜松 工場まで行ったんですか。

難波 ええ、ケースに入れてもらって、えっちらおっちら経堂の駅まで歩いて、電車に乗って帰ったのを覚えてますね。重かったです。

杜松 ほんともう、青春の光景ですね。

野尻 そうですねえ。

松尾 当時はまだ、シンセサイザーが高かった時代ですね。国産とはいえ。

難波 そうですね、でも工場直だったので、お店で買うよりは2割くらい安くしてもらったんだったかな?

四本 産直……。

難波 実は僕、コルグとは親子2代の付き合いなんですよ。うちのオヤジは、アコーディオンとハモンドオルガン弾きだったんですね。母親は声楽家で。ま、音楽一家だったんです。戦後、銀座三越の進駐軍の接収が解けて再オープンの記念のライブで、ハモンドオルガンを日本で始めて弾いたのがうちのおやじらしいです。ちなみにその時のハモンドオルガンの輸入代理店があのメンソレータムの近江兄弟社なんですよ。今でもうちに1957年の近江兄弟社のカレンダーが残ってるんですけど、そこのメンソレータムのマークの上にハモンドオルガンB3の絵とハモンドオルガン日本総代理店、って書かれてますよ。多分全国のパイプオルガンの買えない教会にオルガンの代用品としていれてたんでしょうね。

杜松 なんだかもう価値よくわからないけど、絶対捨てられないですねそのカレンダー。

難波 ただ、おやじもアコーディオンじゃもう昭和30年代ってさすがに飯が食えなくなってきて。同じアコーディオン弾きの友達で長内端さんっていう人が、コルグの社員になって、その縁でコルグの加藤孟会長に拾われたようなかんじらしいです。加藤会長、87歳で今でも現役バリバリだそうですが。

杜松 じゃあもう、コルグがコルグとして始動する前からのお付き合いなんですね。

難波 そうですね、京王技研のころから。なんで京王技研かっていうと京王線沿線にあったからなんですよ。京王オルガン、でコルグなんですね

野尻 へえー初めて知った、K,Oね。

難波 そうそう、K,O、ORGでコルグ。

野尻 初めて知りました。

松尾 mini KORGはセンス・オブ・ワンダーのファーストソロアルバムでもうバリバリ使ってましたよね。

難波 そうですね。あとコルグの、デカ・オルガン。ローパス/ハイパスフィルタとアタック/ディケイのついたオルガン、を買いました。修理に修理を重ねて今でも稼働してますよ、そのデカ・オルガン。スターリンとか竹内まりやのレコーディングでも使いました。おそらく日本では僕の1台と、コルグ本社に展示してある試作品の2台しかないんじゃないかなあ。僕のは一応量産品です。量産品といっても10何台しか日本で売れなかったらしいですけどね。

四本 えええ、そうなんですか。

難波 使ってましたし、使いますよ。今度、The Hits!っていう、VOXのオルガンと、デカ・オルガンと、コルグの普通のオルガンのオルガントリオでアルバムを出します。何やるかっていうとレッチリのカバー集をやろうと。

杜松 わーなんですかそれ!そんなのやるんですか!めちゃめちゃ楽しみです!

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