難波 VOCALOIDは、昔、スタジオミュージシャンにいた、仮歌の子に似てるのかもしれないって思うんですよ。人格のなさというか……。アレ面白かったのは、仮歌の子って当時売れてる子は3人くらいしかいなかったんですよね。80年代、アイドル全盛のとき。だからデビューすると、誰がその曲の仮歌歌ったかわかるんですよ。あ、これはナントカちゃんだ、みたいに。お手本のとおりに歌うから、アイドルの子たちは。だから必ず仮歌の誰かに似てくる。
野尻 もともと仮歌のためのものでもあったんですものね。
難波 だからそのへんの発想が、仮歌お姉さんにちょっとやっぱり似てるなあと思います。
杜松 仮歌からさらに透明な、バックボーンの全くない感じ。
難波 そうですね、だって仮歌お姉さんは下手するとだいぶとうが立ってますからね。お姉さんじゃなくなってきたり。そのへん声優さんと同じでね。子供の声やってても本人はおばさんだったとかがあるわけじゃないですか。
松尾 そのへんの仮歌お姉さん的な歌のうまさをどういうふうにプロフェッショナルの方が引き出してくるのか、っていうのがみんな期待してるんじゃないですか。
難波 僕も最初、やっぱり音域気にしちゃったんですけど、これちょっと歌わせちゃおうかなっていう感じになってる。ゲームミュージックはやっぱりインストなんでそれに歌詞をつけて載せるんですけども、その歌詞も今、ある程度歌詞とか小説とか、世界観になるもののもとを作詞家さんに読んでもらって。この世界観でちょっと歌ってみない?っていうやり方をしてます。
杜松 あーいいですねえ。
難波 どうなるかなあ。
杜松 歌わせるのに使うのはやっぱりミクですか。
難波 おそらく。あとねえ、男とデュエットの曲があって、でもそれってGACKTくんのボカロになっちゃうのかなあ、どうしようかなあって考えているところ。あんまり癖がない方がいい曲なんですよそれは。
杜松 今ある男性日本語VOCALOIDで一番クセがないのってKAITOだと思いますが、それはVOCALOID1なんですよね。VOCALOID2の男性声はどいつもこいつも癖のあるやつばっかりで。スタンダードな男性ボーカルはまだなのかまだなのかってずっと言われ続けています。
難波 ただねえ、何をもってスタンダードな男性ボーカルとするかもまた難しいですからねえ。
松尾 僕はそこ、難波さんに歌ってもらうのがいいんじゃないかと。
野尻 ああそうだ、難波ロイドを是非つくっていただくのが。日本語だと収録は1日か2日で済むそうですよ。英語は大変らしいですけど。
松尾 シンセで音作りするときって、最初、なんでもできるっていう触れ込みじゃないですか、じゃあフォルマント作ってボーカルをやってみようとかそういうことは?
難波 最初に僕がそれ見たのは冨田勲さんの家に行った時かなあ。SF音コンっていうのをやってたんですよ。IBMの門倉純一さんっていう人とSFアドベンチャーとかに連載してた秋沢豊さんがやってた会で、僕も参加してて。それでよく(東京・高田馬場の)BIGBOXとかでイベントやったりとかしてたんですね。SF大会でも色々やったり。で、ある日、冨田勲さんがシンセだけでアルバムを作ってるってんでじゃあ見学に行こうってお宅にお邪魔したんです。やっぱり高校生、いや大学生の時だったかな、冨田さんの最初のアルバムが出る前ですね。
松尾 あーじゃあ「月の光」の製作中にうかがったと。
難波 そうです製作中に。
松尾 すごい……。
難波 部屋中にモジュールとメロトロンがあったり、ダイアトーンのスピーカーがどーんとありました。驚いたのは、家の中なのに電圧安定器があるんですよ。そしたら冨田さんが、「いやーこれはねえ、エレベーターが上下すると電圧が下がるもんでねー音程を合わせるためにあるんですよー」
杜松 うわーかっこいい!
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