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アプリ界の“ジャパネットたかた” 「AppBank」が語るブログビジネス、春にリアル店舗も(2/2 ページ)

» 2011年02月14日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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 無名のアプリがAppBankで紹介された途端にAppStoreでランキング1位になることもあり、AppBankはアプリ開発者にとっても大きな存在になっている。

 例えば、自分が話した内容を動物がオウム返しする「Smack Talk!」(115円)は、AppStoreの有料アプリランキングで100位以内に入ったことがなかったが、AppBankが「面白すぎて悶絶した!」と動画付きで紹介したところ、話題になり、ランキング1位になった。

 「AppBankで紹介したアプリはすべてダウンロード数が跳ね上がる」と村井さん。「AppStoreにあるアプリの99%は人の目に触れないし、良いものでもAppStoreのランキングに入るとは限らない。ランキングで25位に入るなんて悪魔がささやいたようなものだ。でも良いものはきっかけさえあれば売れる。その機会を提供するのがAppBankです」

 アプリのセール情報を毎日紹介するコーナー(iPadアプリのセール情報はこちら)も人気だ。「スーパーで買い物するとき割引シールが張ってあるとうれしいじゃないですか。AppStoreではそれが毎日起こってる。セールのわくわく感を毎日味わえるiPhoneユーザーは幸せですよね」

 昨年2月にAppleがお色気アプリを削除するまでは、グラビアアプリの紹介記事も人気で、1日のPVの7割を占めたこともあった。お色気アプリがAppStoreから消えたことで、AppBank全体のPVは一時3〜4割減ったが、現在は減る前を上回るアクセス量になっているという。

成功の理由は 「iPhoneアプリ界のジャパネットたかた」

画像 日本ブログメディア新人賞のトロフィーを掲げる村井さん

 AppBankが成長した理由は「書き続けていたから」と村井さんは話す。「アプリレビューってなかなかしんどくて。テンションも保ち続けないといけないし。記者が7人いるから続けていられる」。iPhone人気もAppBankの成長を後押しした。「(AppBankのヒットは)iPhoneが社会的なブームになったから。テレビCMでもアプリの宣伝を散々やっているし」

 AppBankがヒットしたのは「レビュー記事が好き」という日本人の性格も影響していると、村井さんは見る。一方、昨年夏に始めたAppBankの英語版サイトは「全然伸びていない。ライバルとなるようなレビューサイトはないのですが……。やっても意味がないから、海外では(アプリレビューサイトが)ないのかも」

 収益の8割はアフィリエイトから得ている。有料アプリがAppBank経由でダウンロードされると、売り上げの4%がAppBankに入る仕組み。09年夏ごろからAppBank単体で黒字になっているという。村井さんは「恐らく世界で一番iPhoneアプリを売っているメディアだと思う」と豪語する。

 広告枠も販売しているが、あまり力を入れていない。広告がない方が、メディアとして「独立できる」と宮下さんは断言。村井さんも「記事を書くのに平均2時間はかかるし、面白いゲームアプリはクリアしなきゃいけないし、ほかの面倒くさいことに構ってられない。広告主や代理店が記事に対して何か言ってきたら『邪魔するな!』『それどころじゃないよ!』ってなる」と話す。

 記事を通じてアプリが売れるともうかるAppBankは、通販カタログに似ているのかもしれない。村井さんは「たまたまブログの形をしているが、“アプリのECサイト”という思いでやっている。我々はiPhoneアプリ界のジャパネットたかたです!」と表現する。

 AppBankでは、記者が気に入ったアプリしか紹介せず、アプリのいいところを中心に紹介する。「提灯記事」と言われたり、「アプリの悪いところも書け。こんなのジャーナリズムじゃないと言われることもある」が、「記事を読んでアプリの悪いところを知ってもらうより、買う理由を持ってもらいたい」と宮下さんは考えている。

 大賞を受賞した「日本ブログメディア新人賞」は、ライブドアが「ブログ界の芥川賞・直木賞を作りたい」(ライブドアの佐々木大輔ブログビジネス部長)という強い思いを込め、昨年始めた。佐々木部長は「ブログメディアで成功している人が、サッカー選手や小説家と同じように、尊敬される存在になれば」と話す。

 AppBankは、ブログをビジネスとして成立させている点が評価され、大賞に輝いた。佐々木部長は「AppBankはシンデレラストーリーといっていい。メディアベンチャーを目指す人が夢見る存在になっている」と、持ち上げる。

今年のテーマ「次の次元へ」 原宿にショップもオープン

画像 iPhone/iPadアクセサリーのレビューも強化中

 AppBankの今年のテーマは「次の次元へ」だ。今春には東京・原宿に「AppBankショップ」をオープンする。iPhoneケースやイヤフォンなどを実際に試してから購入できるようにするほか、店内でiPhoneの使い方やフィルムの貼り方などを教えるセミナーも開催していく計画だ。

 ブログでは、アプリの紹介記事に加え、読者からの要望が多かったiPhoneアクセサリーのレビュー記事を強化していくという。

 “アプリ界のジャパネットたかた”“ブログの形をしたECサイト”――そんな枠組みをベースにどんどんビジネスを広げようとしているAppBank。「誰かが物を買う理由を知るのが好き。ゆくゆくはカニでも売ろうかな」と宮下さんが笑えば、村井さんは「カニいいよね。前からECサイトをやってみたかった。おせちは売らないけど(笑)」と冗談を飛ばす。

 「iPhoneにまだまだ魅了されていて、Androidなどライバル端末が出るだびに、iPhoneが好きになっている」という村井さん。「iPhoneを楽しめるかどうかは、良いアプリに出会えるかどうかにかかっているので、AppBankはアプリ商人として日本中の人にアプリを買わせていきたい」と意気込む。

 日本ブログメディア新人賞の賞金100万円を使って、iPhoneアプリを作る計画も立てている。アプリのアイデアと開発者はメールで募集している。

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