原子力発電所や放射線に関連したインターネット上の「不正確・不適切」な情報を経済産業省・資源エネルギー庁が監視する事業に対し、東京弁護士会はこのほど、「自由であるべき情報流通に対する過度の干渉にならないか、極めて強い懸念がある」とする声明を発表した。
東京新聞の報道によると、同事業は広告代理店のアサツーディ・ケイが約7000万円で落札・契約した。
6月24日に入札が公告された同事業は「Twitter、ブログなどネット上に掲載される原子力などに関する不正確な情報または不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、または正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故などに対する風評被害を防止する」のが目的としており、応札する事業者に対し必須のモニタリングの対象としてTwitterを挙げている。
東京弁護士会の声明は竹之内明会長名で公表。「何をもって『正確』『適切』かは一義的に明らかといえない」「政府自身が情報の『正確』『適切』性を判断して情報コントロールをすることを意図するものであると解さざるをえない」と批判し、強い懸念を表明した。
東京電力・福島第1原子力発電所のメルトダウンは事故から数日後に起きていたが、東電と政府がメルトダウンを認めたのは2カ月以上後だったことを挙げ、「原子力安全・保安院の会見に基づいて事故直後からメルトダウンの可能性を示唆していたのはインターネットメディアであり、放射線量の測定について公的機関の対応が遅れているのに対し、独自の測定結果の情報を提供してきたのもインターネットメディアである」として、「ネット上に流通する情報を政府が監視することは、むしろ弊害の方が大きいと思わざるをえない」と指摘する。
同事業に対しては「運用につき極めて慎重な態度で臨むよう政府に求めるとともに、事業に対する政府の動きを厳格に注視していく」としている。
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