シャープは3月27日、EMS(電子機器受託製造)の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループと業務・資本提携することで合意したと発表した。鴻海は「Foxconn」ブランドで知られ、iPhoneの製造なども手がけるEMS世界最大手。鴻海グループはシャープに出資し、合計で増資後発行済み株式の約9.9%を保有するシャープの筆頭株主になる。鴻海はシャープの堺工場を共同で運営、同工場で生産する液晶パネルを引き取り、特に60インチ以上の大型テレビ生産に生かす。
シャープは液晶事業の不振から今期は過去最悪となる2900億円の連結最終赤字に陥る見通し。4月1日に社長に就任する奥田隆司常務執行役員は、会見で「シャープが設計から販売まで全てを手がけるのではなく、協業を含めた取り組みを行うことが重要」と自前主義を脱却し、生産技術に強い鴻海と組むことで「グローバルレベルの垂直統合モデルを一緒に作り、各国のニーズに合った商品をタイムリーに投入できる」と強調した。
シャープは来年3月27日までの払い込みで総額669億円の第三者割当増資を実施。鴻海グループの4社が引き受け、増資後は鴻海グループの合計で発行済み株式の9.9%を保有し、事実上の筆頭株主となる。またシャープの堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクトの株式約46.5%分を、鴻海の郭台銘董事長に660億円で譲渡。シャープは合計約1330億円を調達し、新技術開発などに投じる。
鴻海はシャープの堺工場の運営に参加し、早ければ2012年度から同工場製パネル・モジュールの引き取りを始め、最終的には同工場製パネルの50%を鴻海が入手する計画だ。鴻海向けのパネル生産が上積みされることで同工場は高稼働率を維持できるメリットがあり、減損リスクもなくなるとしている。
またシャープの商品開発力と鴻海の生産技術を融合し、スケールメリットを生かしたコスト競争力の高い商品をグローバル市場にタイムリーに市場投入していく。現在、具体的な協業について検討を進めているという。
鴻海はFoxconnブランドで知られ、世界のメーカーから電子機器の生産を請け負っている。主に中国本土に工場を構え、従業員は世界で約100万人に達する巨大企業だ。シャープは液晶テレビや携帯電話の製造委託などで従来から取り引きがあった。
次期社長の奥田常務は、シャープについて「開発力はあるが、円高や法人税率など“六重苦”とも呼ばれる経営環境にあって対応力とスピードが足りず、強みを発揮できなかった」とみる。
さらに「液晶ではこれまでパネルからテレビ販売まですべて自前で進めてきた。しかし競争環境が厳しいグローバル市場では、各国のニーズに対応した製品をタイムリーに提供し続けることが必要であり、単独の垂直統合では限界があった」とし、従来の姿勢を転換して「オンリーワンデバイスなどを持つシャープの商品開発力と、鴻海の生産技術力、加工技術力、スケールメリットによるコスト競争力を融合」、新しい世界レベルでの垂直統合モデルを作り上げていくと意気込む。
鴻海は引き取った堺工場製パネルをODM生産に活用し、他社ブランド製品を含むテレビに組み込んで販売することになる。シャープ製品との競合の懸念については、同工場の主力が60インチ以上の大型であることから、「両社で60インチ以上のラインアップと市場を広げていくことでパイの奪い合いは回避できる」との考えを示した。今後、50インチ以下のパネルでの協業も検討していく。
鴻海の郭会長は、ビデオメッセージで「日本は電子機器やコンシューマーエレクトロニクスの製造者としての役割を脱却、高度なテクノロジーの開発を引き受けていく役割を世界に示していくことになるだろう」と提携を歓迎。液晶事業などでシャープが陥っている苦境を「アンフェアな狂騒」と同情し、「提携による相乗効果は両社と世界にとってWin-Winの関係をもたらすだろう」と期待した。
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