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「成功する自信あり」――ソフトバンクのSprint買収、孫社長の勝算とは(2/2 ページ)

» 2012年10月15日 23時24分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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「タイムマシン経営をもう一度」

 孫社長は米国のカリフォルニア大学バークレー校出身。「16歳の時、単身アメリカに行き、帰ってきて起業した。三十数年ぶりにアメリカに大きく再進出するという発表ができ、心からうれしく思う」と感慨深げに語る。

 「アメリカへの挑戦は決して簡単なものではなく、大きなリスクを伴うが、挑戦をしないということは別の意味でもっと大きなリスクになる。日本は少子化で、さまざまなリスクを背負った“最も危険な国”になりつつあるかもしれない。日本とアメリカで両方で大きなベースができることが、われわれを安全なところに置くのかもしれない」

 スマートフォンの台頭により、米国がモバイルインターネットの端末やサービスで最先端を走っている。「もう一度タイムマシン戦略がとれる。アメリカで自らプレイヤーとなって世界最先端のモバイルサービスを実現させ、日本やアジアに展開できる。タイムマシン戦略の2サイクル目が始まる、スタートの時期にあると思う」

一問一答

 取材陣との一問一答は以下のとおり。

――米携帯電話5位のMetroPCS Wirelessの買収や、Sprintが出資するClearwireの買収の可能性は

孫社長: 可能性は常に何でもある。われわれがNTTを買収することだってありえると願っている。どの会社をいつどうするかはわからない。コメントすべき内容ではない。

ヘッセCEO: SprintはClearwireの投資家として、非常に良い関係を保っている。ソフトバンクとのパートナーシップに関連することは、何も考えていない。

――外資規制にかかる可能性は

孫社長: アメリカは世界でもっとも開かれた市場。アメリカの市場にも世界中から新規参入、投資を促している。ドイツテレコムがT-Mobileに出資している事例もある。われわれだけが阻害されると考えていない。

――なぜ全額出資ではなく、70%にとどめたのか

 Sprintが米国で上場企業のポジションを維持するため、30%は一般投資家が継続して持てるようにした。上場会社としてSprintが存続するほうが、投資家やユーザーから見ても透明性があるので、ベターであるという判断だ。

――いつ、どんなきっかけで買収が決まったのか

 Sprintに照準を合わせたのは数カ月前だが、ボーダフォンを買収すると決めた6年前から、いずれは世界展開を果たし、NTTドコモやKDDIを抜いて世界レベルの規模の会社になるという思いはあった。その時期がついに来た。

――買収は日本のユーザーにメリットをもたらすか

 世界最大規模に近いネットワーク機器の購入量を得られるボリュームシナジーが出る。交渉力、調達力ははるかに増える。世界規模の会社になって経営基盤が強くなれば、設備投資の資金も十分に入ってくる。

――イー・アクセスとの経営統合の時と比べても、シナジー効果が見えにくい

 イー・アクセスとの経営統合はシナジーが計算しやすかったが、日米をまたぐシナジーは、1日ですぐに何かが浮く、というレベルのものではない。

――回復途上にあるSprintで、ソフトバンクによるガバナンスを発揮できるのか

 ダンさんとは07年にSprintのCEOになる前、AT&Tを辞め、ベンチャー企業のCEOだった時から知り合いだ。そのベンチャーにソフトバンクが投資していた。当時から信頼関係があり、取締役の過半数はソフトバンクが任命する。ガバナンスを発揮できる。

――経営のスピード感は維持できるか

 わたしは日米を飛行機でたびたび行き来しているし、ネットやビデオ会議で通信できる。わたしは大阪に行くよりはアメリカに行く回数がはるかに多い。大阪よりアメリカのほうが近いという感覚でやる。

――孫社長は何を目指しているのか

 世界3位の売上規模になったが、男子として生まれたからにはいずれは世界一になるぞというぐらいの高い志はある。

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