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工学博士からギター演奏まで――国内ベンチャー14社が熱戦 シリコンバレー行きは誰の手に

» 2012年12月10日 10時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 表彰式の様子

 「グローバル展開は夢ではない」――そんな掛け声とともに、国内ベンチャーの世界展開を支援するイベント「Innovation Weekend Grand Finale 2012」が12月4日、東京・銀座で開かれた。“シリコンバレー行き”をかけてビジネスアイデアを5分以内で発表し合うピッチでは、参加した14社が独自のサービスや製品を披露。ピッチ終了後には来場者による投票も行われ、会場は大いに盛り上がっていた。

 同イベントは、米salesforce.comやマクロミルなどの上場を支援したことでも知られるベンチャーキャピタル、サンブリッジ(現サンブリッジ グローバルベンチャーズ)とベンチャーナウらが2011年5月にスタート。以後不定期で開催しており、1年を締めくくる「Grand Finale」は今回で2回目となる。

 ピッチに出場したのは、今年のInnovation Weekend(Spring/Summer/Autumn/jannovation west)で入賞したベンチャーに加え、一般公募で選ばれた創業3年以内の若手ベンチャーなど合計14社。米シリコンバレーで行われるピッチコンテストへの出場権をかけて、各社が壇上で熱戦をくり広げていた。

工学博士からギター演奏まで――14社がプレゼン

 ピッチでは、全14社の代表者が自社製品やサービスのユニークな点を観客にプレゼンした。各プレゼンの概要は次の通りだ。

社名 製品/サービス名 内容
イマジオム 「HarmonyCalc」 複数のWindowsマシンを組み合わせてクラスタ型の“スーパーコンピュータ”を作れるというミドルウェア。
ゼニスイメージ 「リアルコーチ」 iPadを使ってスポーツなどの“遠隔指導”を行えるというサービス。コーチと生徒向けにそれぞれiPadアプリとiPhoneアプリを提供する。
F.F.B. 「Stylink.」 画像投稿SNS型のショッピングサービス。自分とセンスの近い他ユーザーがピックアップした画像を見ながら商品を購入できるとしている。
earth and one 「U+」 手持ちのジャケットやコートをネット上でカスタマイズし、実際に服をリメイクしてくれるWebサービス。
テクノマスター 「EyeMaster」 近視や老眼の症状である「目のボケ像」を改善するトレーニングを1人で簡単に行えるというスマートフォンアプリ
ONTROX Business Development Executive 「ONTROX Insight Digger Technology」 話題のキーワードのTwitter上での広がり方など、さまざまなデータの関連性を分析して可視化するというフレームワーク。
ignote 「melocy」 演奏や歌をiPhoneで録音し、ユーザー同士で多重録音し合うことで音楽を作れるアプリ。
ザオリア 「LaunchApp」 iPhoneアプリなどのユーザーテストを安価に行えるというクラウドソーシングサービス。アンケート項目を作成し、1人当たり1000円で回答してもらえる。
RealFace 「RealFace」 「本当に親しい友人とだけつながる」をコンセプトとしたSNS。投稿画面で公開範囲を細かく設定でき、FacebookやTwitterには投稿できないような恥ずかしいことも書き込めるという。
「ゴチソー」 食事を“ご馳走”する代わりに自社サービスや製品のユーザーテストやヒアリングなどを行えるというプラットフォーム。
Green romp 「bemool」 女の子が服を買ってきてくれるというWebサービス。服の値段+5000円で、読者モデルなどの“おしゃれ女子”が実際に服を買って配送してくれるという。
バイフルーエント 「BiFluent」 Web上で英語を学べるオンライン学習サービス。3人合わせて英語教師歴20年という外国人英語教師たちが立ち上げたサービス。他ユーザーの学習状況も確認でき、モチベーション向上にも役立つという。
Grumee 「Grumee」 グルメ情報を友人同士で共有できるiPhoneアプリ。スマートフォンの電話帳を同期する機能を備え、自分が信頼する人がおすすめするグルメ情報だけを見ることができるという。
IntheStreet 「street academy」 誰でも個人教室を開設してネット上で生徒を募れるというマッチングサービス。開設した講座はサイト上に掲載され、クレジットカードかPayPal決済で申し込めば受講できる。

 IntheStreet(street academy)の藤本崇 代表取締役が全編英語でプレゼンをしたり、ignote(melocy)の中西孝之 代表取締役はエレキギターを使って音楽アプリのデモを行ったりと、5分間のピッチの中で各社の個性を発揮していた。

photo ignoteの中西さんはギターを使った音楽アプリのデモを披露

 比較的若年層の参加が目立つ中、、異彩を放っていたのはイマジオム(HarmonyCalc)とテクノマスター(EyeMaster)の2社。イマジオムは工学博士の高木太郎さん、テクノマスターは医学博士の堀江秀典さんがそれぞれ代表取締役を務める“壮年ベンチャー”だ。

photophoto イマジオムの高木さんはWindows PCをつなぎ合わせて“自作スパコン”を作る技術を披露
photophoto テクノマスターの堀江さんは1人で視力矯正ができるiPhoneアプリの仕組みを説明

 イマジオムの高木さんは、最低でも2000万円程度するスーパーコンピュータをもっと安く、誰もが手軽に使えるような存在にしたいと話す。一方、テクノマスターの堀江さんは医学研究者としての知識や特許を生かし、近視の子どもの視力改善や老眼の改善に役立つアプリを広めたいという。会場に集まった多くの観客は、年齢や出身地を問わずアイデアを形にしようとする全14社のプレゼンを関心深く見つめていた。

優勝:ネットで服をカスタマイズする「U+」

 優勝に輝いたのは、earth and oneの河野秀和 代表取締役がプレゼンした「U+」。ユーザーが手持ちのジャケットやコートなどを基にネット上でデザインをカスタマイズし、発送すると実際にリメイクしたものを送り返してくれるというWebサービスだ。

photo U+
photo 河野さん

 低価格を売りにする「ファストファッション」が街にあふれる中、あまり着られることなくタンスの中にしまわれている服も多いと河野さんは話す。そうした服をユーザー好みにカスタマイズすることで、自分だけのデザインの服を楽しんでもらいたいという。

 服のリメイクは、同社が提携する“メイスター”(縫製職人)が行う。同サービスの展開を通じ、服飾業界の雇用促進にもつなげたいと河野さんは話す。

 同社は熊本発のベンチャーで、「そもそもベンチャーというキーワード自体がないところでやっている」(河野さん)。今回、優勝の特典としてシリコンバレーで開催される「Plug and Play EXPO」の出場権を獲得。「今後はよりスピーディーに、よりクレバーに、そして時にはダイナミックに、全力で世界に出て頑張っていきたい」と河野さんは意気込んでいた。

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