──中の人である歌手・風雅なおとさんが最初のKAITOを録音したというのは2006年ですか?
佐々木 もっともっと前です。これはもう時効だと思うんで話しますが、そもそも最初にヤマハさんで、VOCALOIDエンジンを作りながらVOCALOIDデータベースを作っていた中で、拝郷メイコさんのMEIKOであり、風雅さんのKAITOであり、ほかにも比山貴咏史さんのボカロ先生とか数個あって、お蔵入りしている女声もあったかと思います。
最初の男声に関しても当初は比山さんのデータベースになるのか、風雅さんのデータベースになるのかというのが決まっていなかったところもあるんですね。本当にそこが決着してバタバタバと決まり、風雅さんも名前を出すか出さないかを悩まれた上で、結局、名前を出すという流れがありました。
──それがTARO。
佐々木 元々の名前は太郎ですね。ジャストシステムさんとかぶりまくりですね(笑)
──2001年あたりですか。
佐々木 2001年から2003年くらいにそういった試験的なデータベースが動いていたと聞いています。自分の友人がクリプトンでMEIKOとかその辺を担当してましたから。
──それから10年近くたって、その当時の声を再現できるってすごいですよね。
佐々木 風雅さん自身、声のトレーニングをガッチリされているような方ですし、15歳の声と25歳の声の違いでもないですし、ベテランの方であればある程度大丈夫だと思います。
──当時の声を出してくださいって言って出してもらったんですか?
佐々木 KAITOは自然な男声に近いと思うんですけど。VOCALOID 1の録り方はVOCALOID 2以降の呪文とは違うんです。それを思い出してもらってディレクションして元のものに似せるというよりは、いろんなふうに声を出してもらって、こちら側で近いと思うものをはめていくという作業に近かったですね。録り方がVOCALOID 1のときと違っているというのがとても大きいので。
──VOCALOIDを収録するときに使う一区切りの文字列ですね。その呪文は変えたりしたんですか?
佐々木 最初にKAITO AppendとしてリリースしたデモソングはVOCALOID 2だったので、2の呪文を補強するための文字列を使いました。一から新しい人でやるのであれば、ヤマハさんの新しい呪文を試して効果的なら使うんですが、特に(初音ミクの)藤田咲さんとかは、あのあべこべな呪文に慣れてしまっているんです(笑)「ああ、また、これですね」とかそんな感じです(笑)
慣れた人にとっては昔の呪文も悪くないというか。昔の呪文は口を大きく開ける動作と、ターゲットとなると音とみたいに交互に繰り返されることが多くて、そういうふうに録ることで声が明るく目になる効果があるので、明るく録るときにはそういう録り方をしますし、スムーズに録るときにはもうちょっと流暢に流れるような呪文を使います。
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