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V3になったKAITO兄さん その新しいイメージと声について聞いてきた(1/7 ページ)

» 2013年01月09日 16時00分 公開
[松尾公也ITmedia]
photo シルエットで予告されていたKAITO V3

 KAITO V3がすごい。初音ミク誕生のの前年である2006年にクリプトン・フューチャー・メディアから発売された男声VOCALOID「KAITO」。エンジンが初代VOCALOID 1であるが、いまだにクリプトン唯一の男声ボカロである(女性が演じた男声である鏡音レンは含まず)。そのKAITOがVOCALOID3となって帰ってくる。価格は1万6800円。

 そのお得感が実にすごいのだ。初音ミクAppend、鏡音リン・レンAppendで提供したような複数の声色データベースと、さらに英語データベースを含む合計4音色。

 それだけではない。フルの音楽制作環境まで付いて来る。最近、音楽関係者で「これ試した?」と話題になっている新進気鋭のDAW「Studio One」のカスタムバージョンが付属。多数のバーチャル楽器、さらに、クリプトンが自ら開発したボーカルエディタ「Piapro Studio」(ピアプロスタジオ)まで。そんなKAITO V3の、まずはKAITOの新しいイメージと新しくなった「声」について、クリプトンにおけるVOCALOIDのディレクションでお馴染みの佐々木渉さんに聞いてきた。制作環境についてはインタビュー後編でお届けする。

新しいKAITOのイメージを模索

photo 佐々木さん

──まずは新しいKAITOのイメージについて。お伺いしたいと思います。

佐々木 自分が開発に携わったのは、初音ミクからルカまでのCV(キャラクター・ボーカル)シリーズと、そのAppendと、すべて女性シンガーだったんです。だから今回のKAITOが男性シンガーとしては初めてでした。DTMをやっている人たちは男性が多いので、1990年台後半に流行した小林武史さんとか小室哲哉さんのように女性シンガーをプロデュースするというイメージとVOCALOIDのイメージを重ねて演出みたいなものを考えてきたんですけど、KAITOは通常のDTMソフトのファンじゃない方々に買っていただいているのではないかと考えています。

──かなり婉曲的に言ってますが、KAITOには女性ファンが多いということですよね。

佐々木 はい。KAITOがきっかけでDTMを始めたような新規女性ユーザー層が存在していると思われます。これはDTM製品のマーケティング的には前例がないもので業界的にも重要です。また、KAITOを支えている支持層も女性中心でして、彼女たちのニーズにあった楽曲やイラスト、物語性の人気が、KAITO需要の屋台骨になっていると感じてます。

photo KAITO V3のパッケージ

 最初から出来上がっていたバーチャルアイドル的な初音ミクのイメージと違って、KAITOの元イメージは大喜利の元ネタのような「このお兄さんが歌うんだよなー」くらいのモチーフでしかなかったと思われます。現在のイラストのトレンドと程遠いような、デフォルメされたキャラクター性が強かったKAITOが、彼女達の創作によって、多彩な「愛されるべきKAITO像」が産まれていった。ファンがKAITOのイメージを変えていったと思っています。

 そんなバックグラウンドもあり、KAITOのファンアートは、ファンによるファンのためのものとして確立しています。それに対して公式が「新しいKAITOの声はこんなんですよ」「一皮むけたKAITOのイメージはこうなんですよ」といったメッセージを出すのはとても難易度が高いと感じました。これがKAITO V3を作る上での最大の悩みでしたね。

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