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映画公開記念! ダース・ベイダー VS. シャア 魅力的な“悪”の条件部屋とディスプレイとわたし(2/4 ページ)

» 2015年12月22日 17時49分 公開
[堀田純司ITmedia]

 ダース・ベイダーの場合は、1999年から公開された新3部作によって、サーガ全体が、あふれるほどの才能を持って生まれ、すべてを手に入れるはずだった彼の、転落と帰還の物語であったことが明らかになりました。

 一方のシャア・アズナブルも、続編「機動戦士Zガンダム」(1987)にさらに名前を変えて登場し、映画「逆襲のシャア」(1989)ではついに総帥として地球圏に対して反乱を起こす。

 初作、続編などガンダムの各エピソードの主人公たちは、それぞれに仲間を守るため、戦争を終結させるために戦いましたが、宇宙に暮らす人のために連邦という巨大な体制に挑み続けたのは、実は彼だけでした(シャアは「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイのことを、体制維持の道具になっていると批判したことがあります。逆に「機動戦士Zガンダム」の主人公カミーユ・ビダンは、シャアのことを「ひとりで組織に対抗しようとして敗れた馬鹿な人です」と評していました)。

「あまりに人間的な」共通点

photo ベイダーはスター・ウォーズシリーズで最も人気があるキャラクターだ=写真はバンダイ アパレル事業部が発売したTシャツ (C)&TM Lucasfilm Ltd.

 そしてもうひとつ、彼らには大きな共通点がありました。それは人間的な側面。銀河の秩序の護持者、ジェダイの中でも最強に至る力を秘めた若者として輝かしい未来を見ていたアナキン・スカイウォーカーが、フォースの暗黒面に飲まれ、シスの暗黒卿、ダース・ベイダーへと転落したのは禁断の恋のためでした。

 中世の騎士団を思わせる禁欲的なジェダイの間では「執着を生む」として、現代の某アイドル集団なみに恋愛は禁止。しかし、ナブーの王女パドメ・アミダラを慕う彼は、ほぼ抑制ゼロでした。それどころかアナキンは「無償の愛はジェダイの基本精神。つまり恋愛は奨励されているんだ」と独自理論を展開していたものです。

 ま、年上のパドメのほうも、政争のまっただ中で彼を湖へと連れていき、背中が丸出しの衣装で現れたりしていたので、アナキンが年上美女の魅力に抗えなかったのも「若さゆえの過ち」と言えるかもしれませんが、この秘密の恋が結局は彼の命取りとなり、運命は文字通り暗転します。

 そしてシャアですが、彼も私的な問題を、いわば、こじらせています。一年戦争の当時、彼は、宇宙環境に適応した人類「ニュータイプ」として高い素質を持つ少女、ララァ・スンを見い出す。それは彼女を戦場に送ることにもなったのですが、ララァは自らの意志で「大佐(昇進していた)を守っていきたい」と感じていました。シャアもその思いに応え、出撃を待つ軍艦の中で、ふたりはキスを交わしています。

 後に続編「機動戦士Zガンダム」のグリプス戦役の時代になると軍事勢力も国軍よりも非国家組織が主導権を握るようになり「好きな異性に会いたい」と思えば私的にモビルスーツを運用して飛んでいくこともわりあい普通になりましたが、この時代はまだそこまでオープンではない。シャアとララァの関係は、部下たちも気を使ったことでしょう。

 しかしシャアは結局、戦場でララァを失い、後に「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」という、有名なセリフを吐くことになります。聞かされたアムロもよほど驚いたらしく「お母さん? ララァが…!? うわっ!」と正直に反応していました。

 両者とも、人間的な、あまりにも人間的な面があった。これが彼らをして「ラスボス」にはさせなかった重大な特質です。

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