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中国の“憤青”がサイバー万里の長城を越えて襲来する その背景と、心構え(2/2 ページ)

» 2016年03月28日 11時32分 公開
[山谷剛史ITmedia]
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祭りがネットの壁を超える動機に

 結果としては、ヴァージンアトランティックも、リチャード・ブランソン会長も、FacebookやTwitterに謝罪を掲載している。これにより「勝利認定」となったのか、抗議活動は峠を越えた。

 帝baの住人からすれば、連勝かもしれない。抗議の祭りのためにネットの壁を超えた人々は、自由な言論に触れて、新しい世界の新しい価値観を知ることはない。彼らが考えを変えるなんてことは、西側が抱くお花畑なストーリーでしかない。台湾総統選と、ヴァージンアトランティックへの大抗議運動から見えるのは、一部の中国人にとっては、中国人としての正義を集団で訴えることが、ネットの壁を超える動機と目的になっているということだ。

 帝baは、(中国から見た)独立勢力のFacebookページに無数のメッセージを投下し、その後外国企業のFacebookページに無数のメッセージを投下した。今後も外国で何か中国人にとって自尊心を傷つける案件が起きれば、中国のネット民に火が付き、抗議の祭りが発生し、ある日突然、企業などのFacebookページが「中国を見下すな」と書き込まれたメッセージで埋め尽くされてもおかしくない。

中国企業も戦々恐々

 もともと中国では、外国企業が中国と外国とを公平に扱わないと不満を抱く傾向がある。例えば企業の中国向けWebサイトが、本国のサイトと比べて明らかに手抜きだったり、商品価格が輸入にかかわる増値税などの税金を差し引いても他国と比べ割高だったり、リコール問題が出て外国には手厚い保証をしたのに中国には同様のことをしなかったりすると、「中国を大事にしていない」と怒る論調はかつて何度も見かけたし、ときにはメディアがニュースとして扱い、ことを大きくした。

 中国企業とて、中国のネットで高まる消費者権利の声に戦々恐々としている。悪い評価がネットで広まった場合に収束させる方法を解説したネット世論対策本も何冊も出版されている。そうした本では、「微博や微信や掲示板など、どこで悪いうわさが流れているかを確認し、それを理解し、微博・微信の公式アカウントや公式サイトで、うそ偽りのない説明や謝罪のプレスリリースを素早く出して収束を図ること」──という対策を多数の具体例とその結果とともに紹介している。

 中国に進出している企業であれば、微博や微信のオフィシャルアカウントで素早くメッセージを出す。そうでない企業も、ヴァージンアトランティックのようにTwitterやFacebookのアカウントでメッセージを出し、それが抗議する中国人にとって納得するようなものであれば収束していくことだろう。

観光客増加の日本も人ごとではない

 中国に進出している企業や、広報がしっかりした企業なら、そんなことは承知で心配は不要かもしれない。だが日本を訪れる中国人観光客が増える中で、ホテルやショップやレストランで中国人が怒る案件が起きたらどうだろう。

 広報の体制が整っていない企業で、無数の抗議のメッセージが起きたとき、すぐに日本の企業が対応できるか心配だ。まずは、ヴァージンアトランティックの事件を考えるに、こうした事件を起こさないためには、スタッフも、その場にいる人も、まずは「中国人蔑視」の態度を出さないこと、これが一番大事だ(国籍問わず、騒いでいる人を注意するくらいなら問題はない)。中国人限定で見下す発言やそぶりをするのがダメだ。最悪、ネットの壁を越えて無数の抗議が投下されよう。

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