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パソコン界のテスラ!? 一度使ったらやめられない「ファンレスPC」の設計テクニックとは?“中の人”が明かすパソコン裏話(3/3 ページ)

» 2016年10月26日 06時00分 公開
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 答えは「左」です。さらに、前後の配置を考えたとき、手前ではなく奥側になります。右側にはマウスを置く人が多いので、不快な熱を吐き出す排気口は左側に配置したいと考えるわけです。そしてこの場合、右側にはUSBポートやHDMIポートを集中的に配置することになりますが、よくばって右側手前までポートを配置すると今度はマウス操作の邪魔になってしまいます。

photo ※イメージ図(本文の解説用に図版を加筆しています。この写真の製品の機能性能とは異なります)

 また、手前側にポートを配置しようとしても多くのノートPCは本体の手前側が薄く、奥が厚くなっている通称「くさび型」といわれるデザインを採用しているので手前側面にはスペースが少なく、ポートや排気口などを配置することができません。代わりにディスプレイを開いた時のバランスを考えると、重量のあるバッテリーなどをなるべく手前側に配置した方が安定感を得られます。

photo くさび形のノートPCの例。本体向かって手前側(写真右側)が薄くなっている

 こういった理由から、ノートPCは部品を配置する場所が非常に限られていることがお分かりいただけるかと思います。製品によっては、ディスプレイのヒンジ形状やの開閉角度を調整することでうまく背面に排気口を配置している製品もありますが、大きく開かないなどの制約が生まれる場合もあります。

 ファンを配置しないことでデザインの自由度が高まり、結果的にユーザーが使いやすい配置が実現する理由がお分かり頂けたでしょうか。

photo Core Mプロセッサを搭載する、ファンレスPCの例。ファンレス構造のため非常に薄型にでき、背面の制約もないためディスプレイパネルを180度開くことができる。

 ファンを搭載している場合は、吸気口も底面か側面、背面のいずれかに配置しなくてはなりません。ホコリを吸って詰まったり、ふさがったりしないように気を付ける必要があるのですが、こういった煩わしさからも解放されます。加えて回転する部品がなくなりますので、バッテリーの駆動時間も延長でき、本体の故障率も下がることでしょう。

ファンレスPCを例えるなら……

 ファンレスPCは、最新の半導体技術を採用することで省電力かつ高性能、ファンがなく動作音も静か、冷却機構があったスペースにより大きなバッテリーを搭載。その結果、駆動時間も長いという、まさに夢のような作りになっています。

 ちょうどファンレスPCを自動車で例えるなら、テスラだと思います。「テスラ モデルS」は、大容量のバッテリーと高性能なモーターにより、これまで「航続距離が短い」「エコだけど遅い」といった電気自動車のイメージをガラリと変えました。さらに、エンジンの代わりに効率のよいモーターを動力源にすることで、冷却用ラジエーターやファンも不要となりました。今までの自動車では、エンジンがあった場所は「トランク」になっています。

photo 「テスラ モデルS」のボンネットの中にはエンジンがなく、トランクになっている

 モバイルPCを極めるなら、ファンレスPCがオススメです。ぜひ、理想的な夢の使い心地を体験してみてください!

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HPPC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。


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