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テロをけん制する「銃声検知」も――銃国家アメリカでみた「安全を守るIoT」DELL EMC World 2016

» 2016年10月31日 18時15分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 「IoT」(モノのインターネット)というワードがITの話題の中心となってから数年、人々はさまざまな機器から得られる情報を組み合わせることで新しい価値を生み出そうと熱心だ。無数のデータが飛び交う情報化社会にパラダイムシフトが起きようとしている今、米テキサス州オースティンで開催された「DELL EMC World 2016」の一角で、IoTを活用した最新事例を見た。

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工事現場の危険リスクを数値化

 超大型クレーンなどの重機械が稼働する製造業の現場では、従業員がけがしないように高度な安全確保が求められる。このような課題解決に有効な手法として展示されていたのが、センサーデバイスを活用した「事故リスクのリアルタイム分析」だ。

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 重機械の各所にセンサーを配置し、クレーンの方向、アームの伸縮具合、つり上げている荷物の重さ、ロープの伸縮具合――といったデータをWeb上に送って数値化。別のクレーンとの位置関係や、風速、加速度といったリアルタイムな情報を組み合わせて分析し、危険度をパーセントで表示できるという。

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 これらの情報によって、人の目では分からない潜在的な危険をさまざまな角度から察知できる。さらにクレーンの自動衝突防止システムと組み合わせれば、安全性をいっそう高められるという。出展社によれば、労働者の稼働を1日当たり30%省力化できるというデータもあり、生産性向上にもつながるとしている。

労働者は危険な場所へ身を投じること無く、作業をARでサポート

 製造現場の作業員をサポートする技術はIoTでさらに加速している。例えば大規模なプラントでは、工場の至るところにセンサーを取り付け、全てのデータをリアルタイムに遠隔管理する。危険な場所に労働者が足を運ぶ機会を最低限にし、リスク低減や安全性の向上につながるという。

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 危険な場所に近づかないようにする仕組みがある一方で、人手が欠かせない機器メンテナンスを効率化する取り組みもある。プラント内の設備に設置されたマーカーをタブレットで読み取ると、センサーから得た数値や状態がAR(拡張現実)で画面上に表示される。メンテナンス方法やパーツの動かし方も、実際の場所に重ねた3Dデータとして表示し、専門知識が必要とされる作業を視覚的にサポートできるという。正確なメンテナンスを行えば、機器の長持ちにもつながるだろう。

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太陽光発電で動く銃声検知システム、公共の場から死角をなくす取り組み

 太陽光発電によって動作するセンサーを組み合わせた「銃声検知システム」という米国ならではのソリューションも登場している。

 音響センサーとカメラを組み合わせたこのシステムは、95%の精度で銃声が発生した場所を検知できるという。これまでに存在していた集音マイクのみを活用する銃声検知システムに比べて高精度を実現しており、公共施設などで警備員が常駐していないような場所にこの仕組みを取り入れれば、セキュリティの死角を減らせると期待できる。

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 無数のセンサーがネットにつながることで、今まで目に見えなかった情報が数値化され、手に取るように分かるようになった。AIや機械学習、ディープラーニングなど、データを活用する周辺領域の技術発展も目を見張るものがあるが、IoTはそれら先端技術をビジネス活用するための土台として、重要な役割を担っている。

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