これまでUPQが発売したディスプレイはいずれも50インチ。中澤社長は当初、65インチは大きすぎて店頭から持ち帰れず、部屋のサイズにも合わないという理由で不要と考えていたという。しかし、ユーザーから「既に(他社製品の)フルHDの55インチモデルを持っている。4Kモデルが欲しいが、ダウンサイズは嫌だ」という声をいくつも受け取ったという。
中澤社長は「そこまでまとまったニーズがあるなら、提供するのもいいのでは」という発想に至ったという。ただし、大量に販売して利益をあげたいというわけではなく、限定販売で売り切りとしてもいいので、欲しいと思ってもらえるユーザーの手元にしっかり届けたいとしている。
「TVチューナー内蔵テレビだと30〜40万円になってしまうので、半分の価格で提供できるのは大きい。ただし、価格で選んでもらうのではなく『こういう製品がほしかったんだよね』という人に手にとってほしい」(中澤社長)。
中澤社長がそのような発想に至るには、大手メーカーにいたころの経験が影響している。「毎シーズン、家電の新製品が大量に発売されるが、消費者が選ぶ基準は結局のところスペック、価格、デザインのバランスで構成されている。バランスを考えた上で型落ちモデルを買う人も多い」(中澤社長)。
新製品が発売すると、メーカーのスペック競争が始まり、ある程度までユーザーのニーズを満たす機能がそろうと価格競争になる。そして、ギリギリまで切り詰めたところで付加価値戦略が行われ──こういった厳しい製品開発サイクルをメーカーは抜け出せていないと中澤社長は指摘する。
そこで、UPQが提案するのが「型落ちさせない」戦略だ。同社はこれまでに、製品群を同一の色で統一する「シーズンカラー」を取り入れてきた。色を固定することで敬遠してしまうユーザーもいるが、ベンチャーならではのチャレンジングな要素であり、「次は一体何が出てくるんだろう」というワクワク感をユーザーに与えるブランディングを重視することで、「モノが幸せに作られて、幸せに消費される」というものをもう一度呼び起こしたいと中澤社長は胸を張る。
「既存の概念にとらわれない製品群で、ユーザーと販売店両方に驚きを与えたい。メーカーに就職したいと思う人が減ってきた時代に、モノづくりはまだまだ楽しいということを伝えられるように」(中澤社長)。
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