「人工知能に負けることを恥ずかしくは思わない」――プロ棋士とコンピュータソフトが対局する「第2回囲碁電王戦」の最終局が11月23日に行われ、趙治勲名誉名人が日本最強の囲碁ソフト「DeepZenGO」に勝利。通算2勝1敗で、“人間側”の趙名誉名人が勝ち越した。終局後、趙さんと「DeepZenGO」開発者の加藤英樹さんが、それぞれの勝因、敗因を語った。
電王戦は、ハンディキャップなしの互先(たがいせん)の三番勝負。19日の第1局は趙さん、20日の第2局はDeepZenGO、23日の最終局は趙さんが勝利した。
三番勝負を終え、趙さんは「日本に来て55年間、今まで僕は何を学んできたのかと疑問に思うほど、Zenは序盤の感覚が違う」と振り返る。「僕が優勢と思ってはいても、自信がなかった。もし負けたら、何のために勉強していたのか……と、そんな感覚を受けた。人工知能よりも人間が強いとか、おごった気持ちを持つのは間違いだと思う」(趙さん)。
趙さんは「人工知能は人間味がある」とも話す。展開が読みにくい序盤の「布石」の能力は強いが、人間の“ポカ”のような、ちょっとしたミスが目立ったという。「強いところは僕よりも全然強いし、弱いところはそんなに難しくなく克服していくと思う」(趙さん)。
「人工知能に負けることは恥ずかしくない。めちゃくちゃ強くなってくれたら、僕らはソフトで勉強して、もっと強くなればよい。これだけ強くなってくれたことに感謝の気持ちしかない」(趙さん)。
一方、DeepZenGO開発チームの加藤英樹さんは「完敗だった」と話す。第1局で負けた時点で「相手を間違えた」(加藤さん)と、チームメンバーと全敗を覚悟していたという。「第2局は運よく勝ったものの、強いところと弱いところが混在しているうちは勝てない。どこを直せばよいか、得るものが多い電王戦だった」(加藤さん)。
DeepZenGOは、今年9月にディープラーニングの手法を導入し、不得意だった序盤の立ち回りを改善した。だが、加藤さんは対局を通じて「序盤の強さよりも“柔軟性”に課題を感じた」と話す。「慎重な局面では時間を有効に使ったり、不利な状況を打破しようと逆転の手を探したり――といった、人間だと大脳が担う役割が足りない」(加藤さん)。
「開発協力した立場として負けたことは悔しい。だが、主催の立場では人間が勝利したことをうれしく思っている」――ドワンゴの川上量生会長は、三番勝負の結果をそう振り返る。
川上会長は、第2回電王戦を企画した理由を「(米Googleが開発した)AlphaGoが1回勝っただけで、人間とコンピュータの戦いが終わったと見なされるのはもったいないから」と説明。「コンピュータ囲碁は今後も短期間で大きく成長していく。その過程で、人間も強くなるはず。両者が互いを強くする“相互作用”が見られるのではないか」と期待を寄せる。「近いうちに第3回電王戦を企画したい」(川上会長)。
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