「東芝は何の会社になるのか」――東芝の綱川智社長は2月14日、記者からのそんな質問に「骨格は大きく変えないが、社会インフラへの比重を高める」と答えた(関連記事)。半導体事業の分社化については、マジョリティ(過半数)譲渡を含む外部資本導入を検討すると発表。「半導体事業を100%売却する可能性もある。柔軟に選択肢を検討する」(綱川社長)という。
東芝は2015年末、米子会社Westinghouse Electricの原発工事の遅れを取り戻すため、米原発建設会社CB&I Stone&Websterを買収。だが買収後の査定で、資産価値が当初予定を大幅に下回ることが判明したほか、工事にかかる人件費などもかさみ、7125億円の減損を計上した(同社が2月14日に発表した参考値による)。
これを受け、16年4〜12月期の連結業績見通しでは、最終損益が4999億円の赤字に。損失の穴埋めとして半導体事業を分社化し、一部株式を売却することで、17年3月末時点での債務超過を回避する狙いだ。半導体事業以外でグループ会社を売却する方針は今のところないという(関連記事)。
「(出資企業は)複数社からオファーをいただいている。マジョリティをキープすることにはこだわらず、会社にとって最良の選択肢を考えていく」(綱川社長)
渦中の原発事業については、収益性の高い「燃料・サービス」部門でビジネスを継続する一方、リスク負担の大きい土木建築からは手を引き、機器供給やエンジニアリングなどに特化する考え。原発事業のリスク管理は、新たに社長直轄の監視強化委員会を設置し対応する。「再稼働、メンテナンス、廃炉など社会的責任を果たしていく」(綱川社長)。
主力である半導体事業の分社化が決まったいま、東芝は何の会社になるのか。綱川社長は「これまで通り、社会インフラ、エネルギー、電子デバイスの“3本柱”の骨格は変えない」としつつ、「どちらかというと社会インフラ事業への比重を高める」と説明する。「社会インフラは16年度だとROS(売上高利益率)が4.6%と課題がある事業ではあるが、しっかりとパートナー企業と技術と組み合わせて、量も質も増やしていきたい」(綱川社長)。
「出来れば間に合わせようとした結果、ぎりぎりになった」――東芝は2月14日正午に予定していた16年4月〜12月期決算発表を最大1カ月延期する申請を出し、承認された。理由はCB&I Stone&Websterの買収をめぐり、Westinghouseの経営者が「不適切なプレッシャー」をかけた可能性が浮上したためという(関連記事)。
同日午後5時すぎに「同社の責任」という形で業績見通しの参考値を発表したが、記者会見では「なぜギリギリの発表になったのか」との質問が相次いだ。同社監査委員会の佐藤良二委員長は「14日の決算発表までに調査報告も間に合わせようとしたが、昨晩さらなる事実が必要との判断に至った」と経緯を説明。追加調査に30日程度は必要としている。
だが「不適切なプレッシャーとは何か」「経営者とは誰を指しているのか」という問いに対しては、調査中として具体的な明言は避けた。
「決算発表をできなかったことは特に重く受け止めている。進退は指名報酬委員会に委ねている。まずは残されている諸問題の対応にあたりたい」(綱川社長)
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