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利益優先でリスク軽視 医療記事の監修「コスト見合わない」と見送り……DeNAキュレーションサイト問題の背景(1/4 ページ)

» 2017年03月13日 17時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 「WELQ」などディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していた一連のキュレーションサイトに不適切な内容の記事が含まれており、DeNAが全サイトを非公開にした問題で、同社は3月13日、第三者委員会の調査報告書を発表した。

 報告書では問題の背景について、「ゲーム事業の成長が鈍化する中、次の事業の柱を見つけなくてはという焦燥感があった」と指摘。サイトのDAU(1日あたりの来訪者)や収益ばかりを追い求める「数字至上主義」に陥り、事業のリスクを精査せずに拡大させたことが問題につながったと分析している。

ゲーム成長鈍化に焦り 「記事の量」で勝負するキュレーション事業へ

 「2011年当時、モバイルゲーム事業の成長の鈍化に対する強い危機感が経営陣にあり、次の柱を見つけようとする思いが強くなっていた」――DeNAが次の成長の柱としての期待をかけたのがキュレーション事業だ。

画像 DeNAが非公開化した10サイト

 同社は2014年、住まい情報の「iemo」と女性向けファッション情報の「MERY」を買収してキュレーション事業に参入。その後、旅行情報の「Find Travel」も買収したほか、医療メディア「WELQ」を立ち上げるなど、10のキュレーションサイトを運営してきた。

 守安功CEOは「18年度末にはキュレーション事業で時価総額2500億円相当を目指す」と設定。SEO(検索エンジン最適化)施策により、MERY単独で400万DAU、ほかの9サイトで合計で1000万DAUの達成を目指していたという。

 キュレーション企画統括部では当初、「記事の質がある程度低くても量産することを重視する方針と、多くなくても質の良い記事を作成する方針いずれを採るべきか」の議論もあったが、方針は量産に傾いていった。

 やがて、記事構成の作成や内容の確認などをクラウドソーシングサービスなどを使って外部に委託するサイトも出てきた。外注化の度合いはサイトによって異なっていたが、最も徹底的に進めていたのが、医療メディアの「WELQ」だったという。

 報告書は、問題の背景に「人的リソース不足」があると指摘。作成記事数に比べサイト編集担当者の数が少なく、DeNAは編集者を増員しなかったため、記事作成を外部に委託したり、不十分なチェック体制を構築することになったとしている。

 「クラウドソーシングの記事単価が不当に安かった」という指摘について報告書は、「ユーザーが自らの意思で業務を選んで受注していたことからすれば、不当に安かったとは考えられない」との見解だ。「報酬の水準が記事内容の不適切さにつながった」という指摘に対しては、「確定的な見解を述べることは容易ではないが、不適切な記事を生む背景になったことは否定できない」としている。

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