この錯視は、2000年に錯視研究で有名なピンナ氏とブレルスタッフ氏が共著の論文で発表したものです。上の図はそれを基にコンピュータで作画しました。
さて、オオウチ錯視やピンナ錯視のような、従来の“動いて見える錯視画像”は、デザイナーさんや研究者が特定のシンプルなパターンを発見し、それらを配列したものがほとんどでした。これに対し、さまざまなデザインや写真を動いて見える錯視画像にしてしまうのが浮遊錯視生成技術です。
その威力をご覧いただくため、少し季節外れですが次の画像を紹介します。中央の小さな丸を見ながら、画像に顔を近づけたり遠ざけたりしてみてください。クリスマスリースが円上を動いて見えます。
浮遊錯視生成技術によって、メッセージ性を持たせた複雑なデザインの錯視画像を作れます。この技術は将来、錯視アートを制作する新しいツールとして期待できます。
次回は、浮遊錯視生成技術をもう少し詳しく説明しながら、面白い実験をしてみたいと思います。
【1】「錯視入門」北岡明佳(朝倉書店、2010)
著者:新井仁之(あらい ひとし)
東京大学大学院数理科学研究科・教授、理学博士。
横浜市生まれ。早稲田大学、東北大学を経て現職。
視覚と錯視の数学的新理論の研究により、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞、また1997年に複素解析と調和解析の研究で日本数学会賞春季賞を受賞。
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